PDFによるJ2EEリッチクライアント計画(1) Page 3/3
J2EEのMVCモデルを変革する
インテリジェントドキュメント“PDF”の正体とは?
アドビ システムズ小島 英揮
2005/9/22
■業務におけるドキュメントの重要性
人間が介在する業務では、情報のやりとりはフォームやドキュメントといった単位で行われるのがほとんどである。フォームに関しては構造化された情報なので、システムとの親和性も高いが、文書はアドホックで非構造的であることが多く、システム化になじまないまま取り残されてきた領域である。また情報のやりとりは、必ずしも同じ組織やインフラ内で行われるわけではない。システム環境が異なる組織や業務では、ドキュメントべースの情報交換が難しく、紙での情報交換や人手による再入力プロセスというもので支えられているのが現状である。
しかしPDFを使うことで、フォーム系の処理だけでなく、ドキュメントベースの情報交換も同じPDFプラットフォームで電子化、自動化することが可能となる。そのために利用者側に必要な環境は、Webブラウザと同様にユビキタスな環境であるPDFの無償ビューア「Adobe Reader」さえあればよい。現在、多くのドキュメントが(交換用としてではなく)配信用にPDF化されている。これらのPDFを読めないというPCの利用者はまずいないだろう。ほとんどのPCにはAdobe Reader(または製品版のAdobe Acrobat)がインストールされており、実質的にだれでもPDFを見て、印刷できる環境にある。
PDFにフォーム機能や情報交換のためのインテリジェントなドキュメントの機能を持たせることで、従来のAdobe Readerを情報入力や情報交換のための“リッチクライアント”として利用することができる。このように発想を転換すれば、PDFはデータキャプチャのためのUI環境であり、情報交換用のデータパッケージであり、保管、アーカイブ用のドキュメントフォーマットであることが分かる。こうした一連の情報の流れをシンプルに効率化できるプラットフォームとして、PDFとAdobe Readerを使うことで、従来のJava/Web系システムのフロントエンドの仕組みを超えた業務の電子化・自動化が図れるのである。
■動的なセキュリティへの対応
情報の流れをシンプルに効率化できるプラットフォームとして、PDFとAdobe Readerについて触れてきたが、もう1つ大事な機能としてセキュリティが挙げられる。
よく話題になるセキュリティ技術としては、電子署名や暗号化、タイムスタンプなど、情報の完全性(一貫性)を担保する技術がある。PDFもこうしたセキュリティに対応しているが、これらは情報流通よりも保管や検証を意識した「固定的」なセキュリティである。もちろんこれも必要であるが、これまで述べてきたように多くの人、組織が情報流通経路にいることを考えると、時間や条件、ドキュメントのライフサイクルによって「動的」に変更できるセキュリティというものが求められる。
例えば、近年注目を浴びている情報漏えい対策。その多くは、外部からのハッキングではなく、内部の正規ユーザーが情報を正規に取得し、漏えいさせるパターンで起こっている。このような状況に対して、従業員が退職したら、機密情報にはアクセスできないようにしたいわけだが、一度システムの外に配布してしまった情報に対するコントロールというのは、従来のJava/Web系システムでは考慮しえない。あくまでもシステムの中にある情報のコントロールがメインである。
しかし、PDFでは動的なセキュリティの仕組みをシステムではなく、ドキュメントとして簡単に展開することが可能である。PDFにパスワードや電子署名などの固定的な情報を埋め込むのではなく、情報コントロールのための「セキュリティポリシー」だけを埋め込み、ポリシーの内容をサーバ側で変更するだけで、情報にアクセスできる人、期間、範囲を動的にコントロールできるのである。これにより従来難しかった、配信後の情報コントロールが可能となる。この夢のような仕組みを実現するのがLiveCycleシリーズの1つである「Adobe LiveCycle Polciy Server」である。こちらの詳しい紹介も次号以降で行っていこう。(次回に続く)
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INDEX |
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PDFによるJ2EEリッチクライアント計画(1) Java/Web系のMVCモデルを変革する“PDF”の正体とは? |
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Page1 進化するPDFフォーマット PDFの持つマルチレイヤ |
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Page2 MVCモデルと比べ開発・実装は容易になる ダイナミックフォームやオフライン運用、Webサービスとの統合を実現 |
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