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WCR Watch [8]

バーティカルサーチは
GoogleBaseにどう対抗していくのか?


富嶋典子
2005/12/17


Web2.0企業がひしめくシリコンバレーでWeb2.0的なビジネス手法を武器に急成長する、Simplyhired社のCEOのGautam Godhwani氏とWeb2.0カンファレンスにスピーカーとして参加しているDave mcclure氏に話を聞いた。Simplyhiredは、設立後1年のバーティカル就職サーチ事業者であり、彼らは1998年にNetscapeに買収されたAtWebというWebパフォーマンス改善ツール企業を経営していた経歴の持ち主だ。彼らの生の声をお届けしたい。


──Web2.0エンジニアになるために必要なスキルは?

 Web2.0という概念はWebビジネスをいかに有効に機能させるかというロジックですので、エンジニアという概念とは若干ずれがあると思います。例えば、弊社のウェブ開発者に必要なスキルという観点で考えれば、Ajaxの知識が最も大事になりますので、Ajaxエンジニアに必要なスキルという観点でお答えします。

 AjaxをプログラムするのであればJavaScriptについての豊富な知識が必須。Ajaxのエンジニアにとってラッキーだったのは、個人や企業が提供するAjaxのライブラリが登場したことです。Ajaxのライブラリ、ツールセット、XSLT、CSS2.0、XML、クロスブラウザ開発、バックグラウンドのTCP/IPの動きなどに関する知識が重要となります。

Web2.0カンファレンスなど外向けのイベントでスピーカーを務めるDave mcclure氏。
SimplyBlog
の著者でもある

 エンジニアがAjaxで開発する際にできるだけ多くのブラウザのチェックをするようにしていますが、なかでも重要なのはMicrosoft Internet Exproler6.0、FireFox1.5、Safari2.0、Opera8.5で正常な動作をするかのオブジェクトチェックは必要です。

 また、Ajaxエンジニアがいま一番関心を寄せているのは、来年発表になるMicrosoft Internet Exproler7.0の仕様です。この仕様によって、Ajaxの仕様も変動する可能性がありますから(笑)。

 BackbaseというAjaxの開発環境(IDE)も開発されています。Ajaxを使ってWebサイトを構築するのを助けるツールやライブラリ、開発環境の開発はこれからさらに加速するでしょう。エンジニアにとっては、ますます楽になってくるはずです。

 また、検索エンジンやデータ収集(=クローリング)エンジンの自動化の技術も重要です。私たちは全文検索エンジンはフリーソフトのLucene、クローリングはRobomakerというクールなソフトをベースに自社で開発しています。

──Simplyhiredのような、目的別絞り込みを生業とするバーティカルサーチ事業者は、GoogleBaseにどう対抗していくのか?

平均450万の求職がサーチできるSimplyhired

 GoogleBaseは、グーグルが用意した特定のカテゴリに紐付けて、Webサイト運営者が自由にデータを入力し、ユーザーから検索しやすくするための試みです。たしかにグーグルのユーザー数とデータの収集対象の広さを考えると、われわれのような目的別絞り込みを生業とするバーティカルサーチ事業者にとっては脅威と映るでしょう。

 ただ、グーグルにはその対象が広過ぎるゆえのバーティカルサーチとしての弱点もあります。条件を絞り込むには、ユーザーに合った結果に導くためのアプリケーションと、よりよいデータのクローリングが必要だと考えています。

 アプリケーションに関してSimplyhiredでいえば、ユーザーアカウントベースのCookieの活用をしたり、入力した検索条件をRSSとして保存できたり、絞り込まれた最新情報をユーザーのRSSリーダーに表示させたりすることも可能です。

 クローリングは自社で開発した“バーティカルジョブサーチエンジン”を使い、われわれはより良質なデータを求めて、Monster.comYahoo! Hotjobsなどの大手求人サイトだけでなく、企業の求人ページのデータをクローリングしてきています。この取材時で、455万以上の求人案件を、検索対象データとして保有しているわけです。

 無断でサイトのコンテンツの二次利用を禁止する大手新聞社がアメリカにはありますが、求人業界ではありませんからいまのところ、クローリングで問題は発生していません。

 最もユーザーにとって重要なアプリケーションは、“MashUp”だと考えています。関連WebサイトのデータやAPIと連携(MashUp)することで、ユーザーにより条件を絞り込みやすくさせることです。

 グーグルは全方面において、ユーザビリティを向上するためのアプリケーションを準備していくという方向には進まないと考えます。また、それはアプリケーションの開発を必要としますから、不可能ではないでしょうか。われわれのような専門サーチ事業者だからこそ成せる技です。

 さらにグーグルを分析してみましょう。グーグルのユーザーのためのアプリケーションが成功しているのは、Gmail、Blogger、Froogleです。Adsense、Adwords、そして検索自体はユーザーアプリケーションではありません。また、グーグルのサーチエンジンでは、深いディレクトリの下にある重要な情報は集めることができないでしょう。

──ユーザーアプリケーションとしての要素、MashUpとは?

 Web2.0で重要な条件には、「より多くのユーザーがよりよい情報を創出する」ためのユーザーによるタギング(=関連キーワードで分類)、レーティング(=ページの格付け)などもありますが、私はMashUpこそが、Web2.0の最も重要な条件だと捉えています。

 MashUpとは、ユーザーの検索をサポートするために自社のサービスに関連サービスのデータ、サービスを連携さることです。Simplyhiredでは、ソーシャルネットワーキングサービス(LinkedIn)、マップ(google Local)、労働条件(PayScale)など各サービス提供者とパートナーシップを取っていて、クローリングロボットで情報を引っ張り、サイト内でパートナーの集めたデータをRSSで表示しています。このおかげで、ユーザーが多方面から選択できるようになるのです。

 LinkedInというソーシャルネットワーキングサービスはビジネス向けで、80%以上が実名で参加しています。企業の経営者レベルでの参加はまだ少ないですが、このSNSは転職を考える企業の知り合いを見付けやすく、相談がしやすくなります。PayScaleは、働きたい条件や就任したい肩書きを入力すると、予想収入や業界の賃金比較などもできて便利です。

 MashUpをうまく活用している企業には、不動産ではTruliaだったり、地域情報では、KijijiCraigslistがあります。

 ユーザーインターフェイス(UI)を開発するときに、使いやすく分かりやすいユーザーインターフェイスデザインをパートナーに提供してもらうことだってできます。コンテンツをユーザーにより分かりやすく見せるために長年研究してきたオライリーは、自社のコンテンツサイトのUIをパートナー企業に提供することをビジネスとして展開する予定で、SimplyHiredも導入を予定しています。同じように、私たちもビジネスとして、SimplyhiredのAPIとデータをパートナーに販売して収益を得ています。これは実際、現在のわれわれの大きな収入源になっています。

──Web2.0時代のウェブの価値はどのように計測していくのでしょうか? これまではページビューやユニークユーザーが重要でしたが、指標が変化していくと考えていますか?

 Ajaxが多く用いられるWebサイトでは、クリックベースでの解析が無効になることも考えられます。JavaScriptのTCPセッションを間違えて新たなクリックとしてカウントしてしまうこともあるからです。そうなると、Web2.0が浸透してくるであろう、2、3年後にユーザーのロイヤリティを計れる数字は「滞在時間」の長さになるでしょう。

 ユーザーがどれだけそのWebページを深く閲覧し、サービスを利用しているかが、Webサイトの滞在時間に現れてくるのですから。そうなると、Web広告の世界にもドラスティックな変化が起きるかもしれませんね(笑)。

左がSimplyhired社CEOのGautam Godhwani氏で右がDirector of MarketingのDave mcclure氏。2人はAtwebの時代から共に事業に取り組んできたという

企業プロフィール
Simplyhiredの前進は、AtWeb(1996-1998年)というWebサイトのパフォーマンスを向上させるためのオンラインツール企業だった。設立後2年という速さでNetscapeに買収された。Simplyhiredは設立後1年で従業員50人を抱える。来年にはどうなっているのかは誰も予測できない。









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