連載:アクセス解析結果を活かす術(2)
目標達成のための訪問回数とページビューの計算方法とは
安西敬介(dIG iT)
2008/7/22
サイトの悪い部分を洗い出す
サイトの改善を行っていくうえでは、指標の良いものを表示してもあまり意味がありません。指標が良くなっているものは、好調であり、手を入れる必要がないためです。サイトの悪い部分で、かつ、効果的なものから対応をしていくのがいいでしょう。
直帰率の改善への活用
指標の1つとして直帰率は非常に重要なものとなります。さまざまな施策によってせっかくサイトへの流入を作り出せたとしても、最初のページだけで帰られてしまったのでは、ゴールに誘導するどころか声すら掛けられていない状態のようなものです。
直帰率はセクションごとに低い方がいい、高い方がいいという指標ではありません。この指標は高い方が直帰してしまった方の割合が多いということになります。ただし、安易に直帰率を高い順(直帰した方の割合が多い順)に並べてしまうと、1人が流入して1人が直帰したページなども100%となってしまうため、決して効率的なものではないともいえます。
ここで参考として下記の計算方法をご紹介します。これは私が考えたもので、直すべきページを洗い出すための1つの手段として考えていただければ幸いです。
直帰率改善指標= (ページ直帰率−サイト全体直帰率)×ページ入り口数 |
これをページごとに計算すると、サイトで直帰率が比較的高く、かつ、入り口数も多いページが上位に表されることになります。サイトの直帰率に直接ページの入り口数を掛けることでもいいと思いますが、サイト全体の直帰率を引いておくことで、TOPページなどの直帰率は低いもののページビュー数が多いページなども上位に上がってきてしまうことを考慮できます。
これを計算することで、改善すれば全体への大きいページを上位に表示することができるようになります。ただし、実際にはさらにページを表示しながら対応を行っていくページを選定していくといいでしょう。ページの目的によっては、直帰率が高くても目的が達成できているため不要のページの場合もあります。
離脱率の改善への活用
離脱率もサイト全体をスコープとして見ても、改善点の見えにくい指標となっています。離脱率はコンバージョンプロセスにおいて非常に重要な指標となります。
コンバージョンプロセスに入ってきている訪問者は、ある程度コンバージョンの達成意識が高まっています。それこそ、入ってきた方の100%がコンバージョンを達成してもいいぐらいでしょう。
しかし、実際にはコンバージョンプロセスでも離脱が起きてしまいます。これをできるだけ100%に近づけるために離脱率をきっかけに問題点を特定していき、改善に結び付けることもしやすくなるでしょう。
実際には、コンバージョンプロセスのページごとに離脱率を見ていきます。そこから離脱率の高いページを見つけ出し、深掘りをしていくといいでしょう。
例えば、そこがお客さま情報の入力をする画面であれば、その後エラーの種類などを特定していくことで、改善ポイントを特定していくことができるでしょう。
何をKPIとして設定するか
最近のWebアクセス解析ツールは、その機能がよくなりさまざまな指標が取れるようになってきています。その半面、何の指標が何を表しているかが分からなくなり混乱してしまうことも多々あるでしょう。
最初からすべての指標を見ようとするのではなく、ある程度絞り込んでみるようにすることが、より分かりやすいWebアクセス解析ツールの利用方法となるでしょう。その1つの方法としてKPI(Key Performance Indicator)を決めて見ていく方法があります。
このKPIを決めるためには、サイトごとにある目的をきちんと認識し、その上でKGI(Key Goal Indicator)を決めていくことで意味のあるKPIを設定することができるでしょう。やみくもに「これだろう」とKPIを決定してしまうと、それが上がったことで何が良くなるのかが分からなくなり、KPI自体を見なくなってしまいます。
コマースサイトのKGIとKPI
コマースサイトでのKGIは非常に簡単で、売上額や売上個数などの直接売り上げに結び付くようなものとなるでしょう。通常は、月ごとに売上目標を持っていると思いますので、それをそのまま利用できると思います。
図2 目標売上のための訪問回数は? |
売上額が取得できるツールの場合は、そのまま月の売上額がKGIになります。売上額が取得できないツールの場合は、月の売上の平均単価で、目標売上額を割った件数を利用するのもいいでしょう。
この件数を知ることができるページがコンバージョンポイントとなります。購入完了ページなどがそれに当たるでしょう。月別の件数がありますので、それを日数で割ったものが最も簡単な日ごとのKPIになってきます。
月の売上目標額が3000万円で、平均単価が5000円のサイトの場合、6000件が月の目標件数となります。これを30日で割った200件が日々のコンバージョンの目標件数となるわけです。
必要なコンバージョン件数 = 目標金額 ÷ 平均単価 |
日々のコンバージョンの件数とともに、流入部分も押さえておくと良いでしょう。この辺りはサイトの構造にもよってきますが、一番簡単なところでは訪問回数に対してのコンバージョン率を考えておくといいでしょう。
まずは現状のサイトの値を参考にするといいでしょう。サイト1日のコンバージョン件数を訪問回数で割ることでコンバージョン率を計算します。上で挙げたサイトで訪問回数に対しての平均コンバージョン率が2%だったとします。1日の目標200件から逆算すると訪問回数は1万件となります。
必要な訪問回数 = 目標コンバージョン件数 ÷ 平均コンバージョン率 |
これで日々サイトを運営していくに当たり、訪問回数1万件、コンバージョン件数200件という値が日々のKPIとなるわけです。
情報サイトのKGI
情報を提供するサイトの場合は、コンバージョンが明確に設定できる場合と、難しい場合とがあります。資料請求などがある場合は明確なコンバージョンを設定でき、KGIについても「月に何件」と非常に分かりやすくなります。こういった場合はコマースサイトと同じように組み立てるのがいいでしょう。
そうではないサイトの場合、明確なコンバージョンを設定しにくい場合があるかもしれません。ただし、サイトの運営に当たっての収入などを考慮するといいかもしれません。
広告収入をメインとしているサイトの場合について考えてみたいと思います。例えば1クリック1円の収入になる広告バナーの場合で月50万円の広告収入が目標の場合、単純に50万クリックが必要となります。
広告バナーのクリック率(CTR)の平均が2%の場合、対ページビュー数は2500万PV必要ということになります。これが1カ月に必要なページビュー数となりますので、30日で割った約8万3000PV/日が必要なPV数ということになります。
必要なPV数 = 必要なクリック数 ÷ CTRの平均 |
この例の場合では1カ月の広告収入がKGIとなり、KPIを日々のページビュー数やCTRとすることで、KGIの達成率を日々とらえていくことができるようになります。
今回はサイトの悪い部分を洗い出すコツと、KGI/KPIの組み立てについて触れていきました。指標をそのまま利用するだけではなく、計算を行っていくことでさまざまな利用ができるようになります。ぜひ、工夫をしながらサイトに合った指標を見つけていってください。
著者プロフィール |
安西 敬介(dIG iT) 大手Eコマースサイトにおいて、システムエンジニア、コンテンツディレクターを経て、マーケティング戦略の支援や、Webサイトの分析を行う。 |
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Page1 指標は場合によって見方が変わる |
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