連載:アクセス解析結果を活かす術(4)
あなたのWebサイトが売れない理由は
「なぜ?」
安西敬介(dIG iT)
2008/10/3
非常に重要な、“テスト”をしているか
「仮説」を作り出すことができれば、サイトに修正をしてテストを行っていきます。テストを行うことは非常に重要なポイントです。特にWebの場合は、ほかの製品などと違い、「非常に簡単に修正が行えるメディア」といえるでしょう。
「仮説」はあくまで「仮説」であるため間違っている可能性も十分にあります。しかし、Webの特性である修正の容易さと、ツールでの結果の取得を行うことで、「仮説」が正しかったかどうかを簡単に知ることができるようになるわけです。
Webでのテストには大きく2種類あります。“A/Bテスト”と“多変量解析テスト(Multi-Variate Testing)”です。
□ A/Bテスト
無作為抽出によるテストを行う場合に、実施も検証も簡単なのがA/Bテストです。これは来訪者に対して、ランダムで2つの違うテスト対象を見せることで、その結果の違いを評価する方法となります。
実施するA/Bテストは、ランダムに振り分けることで比較も簡単です。統計処理などは行わずに、コンバージョン率や直帰率などの反応の差を見るだけで結果の比較を判断できます。
ただし、A/Bテストは実施が簡単な半面、さまざまなパターンをテストするには時間がかかるという欠点があります。これは1回のテストにおいて、テストの対象とする個所を1つにしかできないためで、3カ所を3パターン検証したい場合は27パターン必要になってきてしまいます。
□ 多変量解析テスト
このパターン数が多くならないような対応策として、多変量解析を利用したテストの方法があります。多変量解析テストの場合、大量のパターン数に統計処理を行うことにより、最適なパターン数と最も良い組み合わせを求められるようになります。これにより、ページ内でテストを行う場合には、ぐっと手間を減らすことが可能になります。
ただし、すべてにおいて多変量解析テストが良いわけではありません。ページのデザインやレイアウトなど全体にかかわるテストの場合はA/Bテストを行う必要があります。テストを行う場合は、「何を比較するのか?」をきちんと認識しておく必要があります。
□ Googleのツールがある
これら、A/Bテスト、多変量解析テストは「ウェブサイト オプティマイザー」としてグーグルから無料で利用できるツールも提供されています。もし、テスティングツールを導入するのに踏みとどまっているのであれば、こういったツールを試しに利用することで、“テスト”の世界をのぞいてみてはいかがでしょうか。
ウェブサイト オプティマイザー via kwout
“シナリオ”を活用した検証と最適化をしているか
サイトを最適化していくに当たって、1つの方法として“シナリオ”を立てて検証していく方法があります。
これは、サイト来訪者をいくつかの“セグメント”に分解し、それぞれのセグメントに合わせたストーリーを考え、そのストーリーに合わせた動線(シナリオ)を設計し、実際に検証していく方法です。この方法は、より嗜好(しこう)性の強い訪問者を誘導するのに非常に有効です。
シナリオを設計して考えることは、そのセグメントに対し、「こうだったらより良い結果になるのでは?」と「仮説」を設定していることになります。この「仮説」を設定して考えることで、そこに検証をするための「軸」ができ、検証がしやすくなります。
シナリオを利用したサイトの最適化は5つのステップを踏んで行っていくとよいでしょう。
- サイトを検証し、訪問者の行動を分析する
- 対象セグメントを設定し、目標を設定する
- 目標までのシナリオを設定しサイト構造を作る
- シナリオをアクセス解析ツールで検証する
- シナリオにフィードバックする
□ 【ステップ1】サイトを検証し、訪問者の行動を分析する
ステップ1では、サイトを分析してセグメントを作成していきます。分析するポイントはいくつかありますが、基本的にはサイトの入り口になる部分を起点とします。流入元(提携サイトやサーチエンジンなど)、サーチワードなどを起点に考えていくと分かりやすいかもしれません。
特にサーチワードについては、訪問者のサイト訪問時の意思が強く出る傾向があるので、セグメントを作るうえで非常に役に立つでしょう。
しかし、現状分析の中ですべての答えが出るわけではありません。ここであきらめてしまうのではなく、仮説を設定し先に進むとよいでしょう。仮説が間違っていれば、それを検証時に修正すればよいのです。
□ 【ステップ2】対象セグメントを設定し、目標を設定する
ステップ2では、もう少し具体的なセグメントを設定していきます。最初はセグメントを作り過ぎないように気を付けましょう。セグメントを作り過ぎることで、分析しきれなくなってしまうからです。ある程度、慣れてきたところで、セグメントを増やしていっても問題はありません。
また、セグメントを作成した際に、それぞれのセグメントの“目標”をきちんと設定します。例えば、商品の購入完了やキャンペーンの登録完了、メールマガジンの登録完了、会員登録などさまざまなものが考えられると思います。この目標地点が複数できてしまうのであれば、そのセグメントは分割も検討した方がよいかもしれません。
□ 【ステップ3】目標までのシナリオを設定しサイト構造を作る
ステップ3では、実際のシナリオを設定していきます。これはWebだからという部分はありません。むしろ、扱っている業態や商材によってまったく違ってくるといってよいでしょう。いかにそのセグメントを目標に誘導するかが重要なポイントになるわけです。
このときのポイントは、下記の3点です。
- ページに複数の主題を持たせない
- ハブページにならないようにする
- 別フローからの流入がなるべくないようにする
□ 【ステップ4】シナリオをアクセス解析ツールで検証する
ステップ4では、実際に運用をし始めた後の運用についての検証です。このようなシナリオベースの解析を行う場合は、“パス(サイトフロー)分析”を利用していきます。
パス分析を行いながら、想定したパスと大幅に違う部分になってしまっているところを見つけていきます。まずは離脱率が高く、違うページへの遷移が多くなってしまっているところを見つけるとよいでしょう。
そこでページを特定できたら、実際のページを確認しながら、さらに深掘り分析を行っていきます。
□ 【ステップ5】シナリオにフィードバックする
ステップ5では、ステップ4で検証を行った修正ポイントをフィードバックしていきます。このステップ5は非常に重要なフェイズで、これを行っていくことでPDCAサイクルを回せるようになってきます。
ある程度シナリオが最適化されたら、別のセグメントのシナリオを行っていくとよいでしょう。そうすると、少しずつでもWebサイトの最適化を行っていけるようになります。
“売れる”Webサイト構築に役立てば幸い
今回は、分析を行ううえでのポイント、テスティングの方法、そして、シナリオを利用してサイトを最適化していくことをお伝えしました。本連載「アクセス解析結果を活かす術」では、Web解析をうまく利用して指標の意味を理解し、1つ1つの要素を分析しながら、Webサイトの運営戦略に役立てる方法を伝授してきましたが、いかがでしたでしょうか。本連載が読者の“売れる”Webサイト構築に役立てば幸いです。
今回で、この連載はいったん終了となります。最後まで読んでいただきありがとうございました。
著者プロフィール |
安西 敬介(dIG iT) 大手Eコマースサイトにおいて、システムエンジニア、コンテンツディレクターを経て、マーケティング戦略の支援や、Webサイトの分析を行う。 |
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