Microsoft Exchange 2000
Webアプリケーション開発技法(上)/(下)

Mindy Martin著
(株)パセイジ訳
上巻:ISBN4-89100-207-7/456ページ/3800円
下巻:ISBN4-89100-218-2/424ページ/3800円

日経BPソフトプレス 発行

出版社の解説ページ


 インターネット・メールは、デスク・ワークに携わる人々にとって、もはや不可欠な存在と言えるまでに普及した。メールを使えば、情報を正確に、素早く、低コストで相手に伝えることができる。

 このように便利なインターネット・メールではあるが、バイナリ・ファイルの添付が簡単にできるようになったこと、サブジェクト(題名)に日本語が使えるようになったことを除けば(いずれもMIMEの功績が大きい)、その成り立ちはインターネットの黎明期だった15年前と大して代り映えしない。大多数のメール・ユーザーは、テキストだけのメッセージをやり取りしているし、メールはメールだけで独立しており、スケジュール管理やワーク・フロー管理、ナレッジ・マネージメントなどとは連動していない。会議の連絡をメールで受け取ったら、そのメッセージを見ながら、スケジュール帳(最近はコンピュータ上で管理されるケースが増えてきた)に手作業で転記するといった具合だ。

 メールの普及によって、IT化のステップを1段あがったことは事実だが、逆に言えば、まだ1段目をあがっただけにすぎない。今後は、各企業が自社の知的労働を分析して、それらを本当に効率化し、付加価値を向上させるためのステップを登らなければならないだろう。

 本書は、マイクロソフトが提供しているメッセージング・システムのExchange 2000 Serverを使用し、これをベースとして独自のメッセージング・アプリケーションを開発する方法について解説したものだ。Exchange 2000 Server(以下Exchange 2000と略)は、(遅ればせながら、という感は否めないながらも)Active Directoryとの連動が可能になり、メッセージ・システムをディレクトリ・サービスの一環として統合可能になるなど、前バージョンのExchange Server 5.5からは大幅に機能が向上されている。本書では、このExchange 2000の基本的な構成からアプリケーション開発の基礎概念、Exchange 2000が提供するさまざまな機能の具体的な応用法などを、豊富なサンプル・コードを交えながら解説している。開発言語としては、Visual Basicを採用している。理由は単純に、VBプログラマが多いからだとしているが、妥当な選択であろう。

 本書が最も力を入れて解説しているのは、Exchange 2000で新たに追加されたWeb Storage Systemである。従来のExchange 5.5でも、ユーザー同士がメッセージやその他のファイルなどを交換する場所として、インフォメーション・ストア(パブリック・ストアとメール・ボックス・ストア)が提供されていたが、残念ながらこれは機能制限も大きく、環境によってニーズが大きく変わるメッセージング・アプリケーション用の土台としてはいささか力不足であった。これに対しExchange 2000のWeb Storage Systemでは、複数データベースの設置(従来は2つに限定)、ストリーミング・データの取り扱い、セキュリティ機能の強化、OLE DB/ADO 2.5を利用したデータ・アクセスなど、機能が大幅に強化され、柔軟なシステム構築を可能にしている。本書では、Exchange 2000で追加されたこれら新機能について、プログラムからアクセスする方法をサンプル・コードを紹介しながら具体的に解説している。現場の開発者は、必要な部分の解説とサンプル・コードを拾い読みするだけでも、Exchangeアプリケーション開発のヒントが得られるだろう。

 なお本書には上・下巻ともに付録CD-ROMが添付されており、本書内で紹介されているサンプル・コードや、いくつかのツールなどが収録されている。

 Exchange 2000を基盤とするメッセージ・システムを構築し、伝統的なインターネット・メールを越えてこれを戦略的に活用しようとするIT管理者、プログラマには、本書が役に立つだろう。

 

「Book Review」

 



Windows Server Insider フォーラム 新着記事
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

注目のテーマ

Windows Server Insider 記事ランキング

本日 月間