特集 Windows Server 2003完全ガイド
可用性を向上させるボリューム・シャドウ・コピー・サービス

2.ハードウェア転送スナップショットの概要

一色政彦
2003/07/17

 VSSは、前述のソフトウェア・スナップショットだけでなく、より高性能なハードウェア・スナップショットにも対応している。これにより、SANなどのネットワーク・ストレージに対しても、VSSを利用したバックアップ処理が可能になる。ハードウェア転送のスナップショットの場合も、VSSの基本的な概念はソフトウェア・スナップショットの場合と同じだ。ただし、ソフトウェア・スナップショットの場合はVSSのソフトウェア機能でスナップショットを作成するが、ハードウェア転送スナップショットの場合はストレージ・ハードウェアの機能を使ってスナップショットを作成するという違いがある。ハードウェア転送スナップショットの概要を図示したのが次の図である(スナップショット作成の詳細な仕組みは後述する)。

ハードウェア転送スナップショットのしくみ
VSSによるストレージ・スナップショット作成の流れ。VSSを介してサーバ・アプリケーションがバックアップ・ソフトウェアの要求を受け、安全なスナップショット作成の準備を行う。
  バックアップ・ソフトウェア(リクエスタ)がスナップショット作成をVSSに要求する。
  VSSはサーバ・アプリケーション(ライター)にキャッシュのフラッシュを指示する。
  その時点でサーバ・アプリケーション側にキャッシュされているデータなどがストレージ・ハードウェアまたはストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)にフラッシュされる(未処理のトランザクションはすべて完了される)。
  VSSはストレージ・ハードウェアにハードウェア・スナップショットの作成を指示する。

 ハードウェア転送のスナップショットを導入することで、バックアップがどのように改善されるかをもう少し詳しく解説しよう。

VSS提供以前のバックアップの問題点

 VSSが利用できなかったこれまでのWindows 2000 Serverのストレージ管理では、異なるサーバ・アプリケーションが混在している場合、バックアップ・ソフトウェアが提供する「エージェント・ソフトウェア」を異なるサーバ・アプリケーションごとに導入する必要があった。これまでに述べてきたとおり、稼働中のサーバ・アプリケーションのデータを安全・確実にバックアップするには、アプリケーション側の対応(トランザクションの完了とキャッシュのフラッシュなど)が不可欠である。エージェント・ソフトウェアはこの機能を提供するものである。

 また、複数メーカーのストレージ・ハードウェアが存在している場合には、メーカーごとにそのストレージ用のバックアップ・ソフトウェアを導入しなければならなかった(ハードウェア転送スナップショットはストレージ・メーカーが提供するバックアップ・ツールから利用できるため)。また前述したとおり、バックアップ・ソフトウェアを導入したときには、さらにサーバ・アプリケーションごとに「エージェント・ソフト」の導入が必要である。

 このため複数のストレージ・システムとサーバ・アプリケーションを利用する環境では、バックアップ・ソフトウェアとエージェント・ソフトウェアを順列組み合わせ的に取り揃え、それらを使ってバックアップ・システムの構成と管理を行う必要があった。現実には、このために特別なトレーニングや教育などの準備が必要だ。さらにバックアップ・ソフトウェアやストレージ・ハードウェアの組み合わせが増えると、その組み合わせに従って、さらに多くのトレーニングが必要になる。管理者にかかる負担は極めて大きく、このことは、新たなサーバ・アプリケーションやストレージ・ハードウェアの導入を妨げる一因となっていた。

共通インフラを提供するVSS

 これに対しVSSは、バックアップ・ソフトウェア、サーバ・アプリケーション、ストレージ・ハードウェアに共通のバックアップ・インフラストラクチャを提供する。これにより、ハードウェアおよびソフトウェアの自由な組み合わせを可能にしながら、統合的なバックアップ環境が実現可能になる。前挙のとおりこれまではバックアップ環境がネックになって複雑なストレージ・システムの導入が敬遠される場合があったが、VSSによってこの問題が解消し、より柔軟なSANの構成などが選択可能になるだろう。

 これまで述べてきたとおり、ソフトウェア・スナップショットやハードウェア転送スナップショットを利用するには、バックアップ・ソフトウェア、サーバ・アプリケーション、ストレージ・ハードウェアのそれぞれがVSSに対応している必要がある。しかしバックアップ・ソフトウェア、サーバ・アプリケーション、ストレージ・ハードウェアとも、VSS対応製品が続々と登場してきている。

種別 対応製品、対応メーカー
バックアップ・ソフトウェア Backup Exec(ベリタス)、ARCserve(コンピュータ・アソシエイツ)
サーバ・アプリケーション SQL Server、Exchange Server(いずれもマイクロソフト)
ストレージ・ハードウェア デル、EMC、HP、日立製ストレージ製品など
主要なVSS対応製品
 
VERITAS Backup ExecのVSS設定画面
主要バックアップ・ソフトウェアの1つ、VERITAS Backup ExecのVSS設定画面。
  これを選択すると、VSSを利用したバックアップが行われる。

ボリューム・シャドウ・コピー・サービスのしくみ

 VSSは、バックアップ・ソフトウェア、サーバー・アプリケーション、ストレージ・ハードウェアなどのバックアップ関連ハードウェア/ソフトウェアに対し、スナップショット作成のための共通のインフラストラクチャを提供するサービスである。VSSでは、バックアップ・ソフトウェアは「リクエスタ」、サーバ・アプリケーションは「ライター」、ストレージ・ハードウェアおよびストレージ・エリア・ネットワークは「プロバイダ」と呼ばれる。ソフトウェア・スナップショットではストレージ・ハードウェアがないが、この場合はVSS自身のソフトウェア機能が「プロバイダ」として機能することになる。

コンポーネント 機能
リクエスタ スナップショットの作成を要求するバックアップ・アプリケーション[例]Windows Server 2003標準バックアップ・ユーティリティ(ntbackup.exe)、Backup Exec(ベリタス)ARCserve(コンピュータ・アソシエイツ)など
ライター キャッシュをフラッシュして、バックアップ・データを同期させるサーバ・アプリケーション。使用中のファイルをバックアップするエージェント・ソフトウェア
[例]データベース・サーバ(SQL Server、Oracle)、電子メールサーバ(Exchange Server)など
プロバイダ スナップショットを作成するストレージ・ハードウェア[例]デル、EMC、HP、日立製ストレージ機器など
VSSを構成するコンポーネント
ソフトウェア・スナップショットの場合は、VSS自体がスナップショットを作成するソフトウェア機能を提供している。

 この3者の中心で「コーディネータ」として働くのがVSSである。

VSSによるスナップショット作成の流れ
VSSがコーディネータとなり、スナップショットの作成を支援する。
  バックアップ・ソフトウェアは、VSSのリクエスタAPIを使用して、VSSにスナップショットを作成するように要求する。
  VSSは、ライターAPIを通じて、サーバ・アプリケーションにバックアップ対象データを同期するように指示する。
  指示を受けたサーバ・アプリケーションはキャッシュをフラッシュする。
  その後VSSは、ストレージ・ハードウェア・メーカーが提供するハードウェア・プロバイダを介してストレージ・ハードウェアにスナップショットの作成を指示する。ソフトウェア・スナップショットの場合は、プロバイダを介してVSSのソフトウェア機能にスナップショット作成を指示する。
  指示を受けたストレージ・ハードウェアはボリュームのスナップショットを作成する。ソフトウェア・スナップショットの場合は、指示を受けたVSSのソフトウェア機能がボリューム・データのスナップショットを作成する。
  スナップショットの作成が完了すると、VSSはサーバー・アプリケーションにディスクへの書き込みが可能になったことを通知する。

バックアップにかかる負担を大幅に軽減

 VSSにより、サーバ・ソフトウェアを停止することなく、安全にバックアップをとることが可能になる。またハードウェア・スナップショットもサポートすることで、SANなどのより大規模なストレージ・システムにおける統合的なバックアップ環境も実現できるようになった。VSSは、Windowsをベースとするミッション・クリティカル・システムにおいて、バックアップ環境およびストレージ管理の画期的なソリューションとなるだろう。End of Article

 

 INDEX
  [特集]Windows .NET Server 2003完全ガイド
  可用性を向上させるボリューム・シャドウ・コピー・サービス
     1.可用性を向上しTCOを削減するVSS
   2.ハードウェア転送スナップショットの概要
 
目次ページへ  Windows Server 2003完全ガイド


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