特集 Windows Server 2003完全ガイド

Windows SharePoint Servicesがもたらす次世代チーム・コラボレーション

―― 追加ソフトで可能になるOfficeコラボレーションの実用性――

Chris Alliegro
2003/07/03
Copyright(C) 2003, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.

 
本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌「Directions on Microsoft日本語版」 2003年6月15日号 p.9の同名の記事を許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。

 SharePoint Team Services(STS)の後継で、Windows Server 2003の無料アドオンであるWindows SharePoint Services(WSS)は、チーム・サイトの構築とカスタマイズを簡略化する。チーム・サイトとは、チームとプロジェクト情報専用のイントラネット・サイトである。WSSはOffice 2003との連携により、ドキュメント・コラボレーションや会議の円滑化といった一般的なチーム単位の活動をサポートする。コラボレーションの改善とチーム・サイトの開発および導入の簡略化により、顧客はWindows Server 2003およびOffice 2003へのアップグレードを促されるかもしれない。しかし、サーバとサイトの拡散は、ITプランナーにとって管理上の面倒を招く可能性もある。

チーム・コラボレーションの簡略化とOffice 2003の位置付け

 WSSとOffice 2003の連携は、Officeをチーム・コラボレーションのツールとして位置付けるためのMicrosoftの最新の試みだ。これ以前の試みは、Office 2000と同時に発表されたOffice Server Extensionsにさかのぼることになる。

 WSSベースのコラボレーションの中心となるのはチーム・サイト、つまりチーム情報の中央リポジトリとなるイントラネットWebサイトである。チーム・サイトはInternet Explorer(IE)などのWebクライアントでナビゲートしたりブラウズしたりできるが、チーム・メンバーはOfficeアプリケーションで作業しながら他の便利な方法でチーム・サイトとやり取りできる。例えば、ユーザーはチーム・サイトに掲示された重要イベントをOutlookを使って自分のカレンダに追加したり、ドキュメントをWordで編集しながらそのドキュメントの関連情報(例えばディスカッション・スレッド)を参照したりできる。

 WSSチーム・サイトはサイト管理(サイトの作成やユーザーの追加・削除)用の一連のASP.NETページと、ユーザーが実際のチーム・データを参照・操作できる一連のチーム・ページで構成される。チーム・ページはWebパーツでできている。WebパーツはASP.NETベースのモジュール方式のWebコンポーネントで、情報(連絡先など)を表示し、ユーザーによるアクション(連絡先の追加など)を可能にすることで、サイトの作成とカスタマイズを大幅に簡略化する。WSSは、単純な画像表示コンポーネントからドキュメント・ライブラリ管理用のより複雑なコンポーネントまで、それらを網羅する一連のWebパーツが付属して出荷される。

 今日では、インフォメーション・ワーカーは、ファイル・サーバ上でドキュメントを共有してコラボレーションを行うことが一般的になってきている。MicrosoftはWSSチーム・サイトをファイル共有に代わるチーム・コラボレーションの基本の手段にすることを目指している。WSSを無料提供し、チーム・サイトをチーム活動の中心として重視し、これらのサイトの作成とカスタマイズ、管理を大幅に簡略化することで、Microsoftは同製品の採用に対する抵抗を減らそうと考えている。

 また、ユーザーはOffice 2003がなければWSSのメリットをフルに生かしきれない。例えば、Office 2000やOffice XPでチーム・サイトのドキュメントを開くことは可能だが、そのドキュメントに関連するコンテキスト情報(例えば前述のディスカッション・スレッド)を見ることはできない。Microsoftは、WSSの普及と、スタンドアロンのドキュメント・オーサリング・ツールに代わってOffice 2003(とWSSの組み合わせ)がチーム・ワーカーの生産性向上の重要な要素となることで、顧客がOffice 2003にアップグレードすると考えている(WSSとOffice 2003の連携方法については別掲の「WSSとOffice 2003の効果的な統合」を参照)。

コラボレーション機能の大幅改良

 STSはチーム・コラボレーションのサポートを目的とする機能を備えていたが、この製品は小グループ向けの静的な情報ポータルの構築を目指す組織に主に人気があった。WSSはコラボレーションのシナリオをさらに重視し、ユーザーの一般的なチーム活動(例えばドキュメントのグループ編集や会議の準備と企画など)の遂行を助ける改良された新機能を提供する。

■より実用的なドキュメント管理

 WSSユーザーはドキュメント・ライブラリ・コンポーネント(WSSでファイル共有に相当するもの)経由でドキュメントを管理する。

 STSはバージョン管理ができず、ドキュメントに読み出し専用のマークを付けてドキュメントのチェックイン/チェックアウトを模倣していたが、WSSドキュメント・ライブラリはこれとは対照的に、バージョン管理もチェックイン/チェックアウトをサポートする。ユーザーがバージョン管理を指定すれば、WSSはファイルが保存されるたびにバックアップ・コピーを自動作成する。ファイルのチェックイン/チェックアウト機能により、ユーザーはファイルを編集中にロックして他のユーザーによる上書きを防止できる。

 さらに、STSが非階層的なドキュメント・ストレージしかサポートしなかったのに対し、WSSではドキュメント・ライブラリでサブフォルダを使用できる。このためユーザーはWindowsファイル・システムのサブフォルダと同様の方法でライブラリの構造と構成を管理できる。

 WSSはドキュメントの変更をユーザーに通知する方法も改善している。STSでは、ユーザーはドキュメント・ライブラリに変更が加えられたときにアラート(警告)を送るように設定できたが、個々のファイルにアラートを指定することはできなかった。WSSではユーザーは個々のドキュメント単位で通知を設定できる。

■リストの作成と管理

 WSSはSTSのリスト作成および管理機能を改良している。これはチーム・メンバーにとって重要な構造化情報リスト、例えば発表や連絡先、仕事(To-doリストのアイテム)、特別なイベントなどを簡単に構築して掲示できる手段をチーム・メンバーと管理者に提供するユーティリティである。

 WSSは一連の定義済みのリスト・タイプとそれに対応するデータ・フィールドを用意して出荷される。例えば仕事リストには、プライオリティ、ステータス、オーナー、説明用のフィールドが含まれている。注目すべき追加項目の1つはIssue(問題点)リストだ。これは特定の問題(例えば顧客の苦情に関連する未解決の質問など)の追跡と履歴保持に使用できる。またチーム・メンバーは独自のカスタム・リスト・タイプを作成し、それらのタイプのフィールドを定義することもできる。

 リスト管理も改善された。例えばユーザーはリストにアクセス許可を設定して無断変更を防止できるようになった。また管理者は既存リストからリスト・テンプレートを作成して、複数のチーム・サイトに共通の外観の採用を促すことができる。

■検索機能の改善

 WSSでは検索機能が劇的に強化され、ユーザーは割り当てられた仕事やチームの連絡先、チームの発表といった、重要かもしれない情報に迅速にアクセスできるようになった。

 STSでは、検索はInternet Information Services(IIS)カタログをベースとしており、ファイル・システム上のドキュメントの検索に限られていた。仕事リストや連絡先など、データベースに格納されたコンテンツは検索しなかった。WSSでは、検索はSQL Serverのフルテキスト検索をベースとしている。本バージョンでは、すべてのサイト情報(ドキュメントを含む)がデータベースに格納されているため、WSSはドキュメントとリストの両方の内容を検索できる。

■ワークスペースの導入

 WSSはワークスペースの概念を導入する。これは特定の活動の関連情報の中央集積所となるように設計された定義済みのテンプレートをベースとするチーム・サイトである。

 WSSはドキュメント・ワークスペースと会議ワークスペースという2種類の既成ワークスペースを用意している。これはドキュメント・オーサリングのコラボレーションと会議の準備という、最も一般的な2つのビジネス活動向けのものである。

■ドキュメント・ワークスペース

 ドキュメント・ワークスペースは、1つのドキュメントまたは一連のドキュメント上でチーム・コラボレーションを簡略化するためのものだ。チーム・メンバーや管理者がドキュメント・ワークスペースを作成すると、WSSは新しいドキュメント・ライブラリとデフォルトのWebパーツ・コンポーネント一式を含む新サイトを生成する(図「新しいドキュメント・ワークスペース」を参照)。これらのコンポーネントは、ドキュメントのコラボレーション・プロジェクトの関連情報(例えばリサーチ・ノート)を格納し、タスク指向の活動(例えば章や節の編集)の割り当てと追跡を行う中心となる。

新しいドキュメント・ワークスペース
ドキュメント・ワークスペースは1つのドキュメント、または一連のドキュメント上でのチーム・コラボレーションを簡略化する。あるチーム・メンバーまたは管理者がドキュメント・ワークスペースを作成すると、WSSは新しいドキュメント・ライブラリ(画面のShared Documents)と、デフォルト・コンポーネントを含むサイトを生成する。デフォルト・コンポーネントには、ワークスペースの作成者が他のチーム・メンバーをワークスペース・ユーザーとして追加するために使うメンバー・リスト、作業アイテムをメンバーに割り当てるためのTasks(仕事)リスト、ワークスペース・メンバーがほかの便利な情報を参照するために使うLinks(リンク)リスト、Announcements(アナウンス)リストがある。

■会議ワークスペース

 会議ワークスペースは、会議の企画と準備、および会議のフォローアップ用情報の発表と追跡に利用できる。WSSは異なる種類の会議用に数種類のテンプレートを用意している。例えば基本的な会議ワークスペースは、目的と参加者の連絡先情報用のリスト・コンポーネントを備えている。一方、意思決定を要する重要な会議のワークスペースは、ドキュメント・ライブラリと、仕事および意思決定用のリストを加えている(図「新しい会議ワークスペース」を参照)。これらのワークスペースは、会議の事前資料の収集と共有、および会議後に決定や結果の発表を行うための便利な方法を提供する。

 ほかのWSSサイトの場合と同様に、ユーザーはドキュメント・ワークスペースや会議ワークスペースのページにほかのWebパーツを追加してカスタマイズできる。

新しい会議ワークスペース
会議ワークスペースは、会議の企画と準備、フォローアップ情報の発表と追跡に用いる機能を用意している。この例では、重要会議用の会議ワークスペースをOutlookで作成し、議題アイテムと新規ドキュメント、会議目的のリストをWSSで追加してカスタマイズした。Tasks(仕事)リストとDecisions(決定事項)リストは、会議で割り当てた作業アイテムの割り当てと追跡、会議の決定事項の連絡に使用できる。
 
  関連リンク
  @IT FYI SharePoint Portal Serverで実現する新しいワークスタイルの形
     
 

 INDEX
  [特集]Windows .NET Server 2003完全ガイド
  Windows SharePoint Servicesがもたらす次世代チーム・コラボレーション
   1.チーム・コラボレーションの簡略化とOffice 2003の位置付け
      コラム:SharePointテクノロジの構造
     2.管理機能の改善
      コラム:WSSとOffice 2003の効果的な統合
     3.WSSの制約と検討事項
 
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