Windows 2000 Insider 編集後記 2000年7月

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情報とお金

 早いもので、このサイトを始めて丸2カ月以上が経った。いろいろな問題はまだ山積みになっているが、「Web上での記事作り」も何となく手に馴染んできたところである。

 この2カ月の間、独立以前に勤めていた出版社の友人や、独立してから知り合った編集者、筆者の人たちに会うたびに、「Web雑誌のようものを始めました」と説明してきた。これを聞いた相手の反応は、不思議なほど一致していた。

「それで、ビジネス モデルは?」

 この言葉の行間を補足すると、「今は投資家のお金があるから何とかなっているけど、タダの情報サービスなんていつまでも続くもんじゃない。広告といったってたかが知れているし、未だにこれという少額課金のしくみもない。いったい将来はどうするつもりなんだい?」ということのようだ。これに対する筆者の返答は次のとおり。なお、これはあくまで@ITの中で一部のコンテンツを提供している筆者のビジョンであって、@IT全体のビジョンではないことをお断りしておく。

「現時点ではスポンサー収入と広告バナー、将来は未知数」

 すると相手は例外なく「ははん、やっぱりね」という顔をする。きちんとした見通しもなしに賭けに出ているということらしい。けれども、本当に先行きは見通せないのだからしかたがない。コンピュータとインターネットがもたらす新しい情報社会は、まだその一端が見えてきたばかりである。言葉は悪いが「一寸先は闇」なのだ。しかし「今まで綿々と続いてきた伝統的なビジネス モデル」にとっても、一寸先は闇であることを申し上げておく。

 もう少し真面目な編集者の意見としてあるのは、次のようなものだ。

「読者から直接お金をもらわないと、結局は読者の側に立った記事作りができない」

 確かに、編集者や著者も経済活動の一環として記事を作っているわけで、自分たちの仕事にお金を払ってくれる人(会社)を軽視することはできない。しかしだからといって、「読者第一」の姿勢を維持できないかといえば、ことインターネット時代においては考慮の余地があると思う。周知のとおり、ITの発達により、従来は不可避だった中間業者(卸業者など)は排除され、流通の途中にかかっていたマージンを省略できるようになるという。つまりITによって、メーカーとユーザーは直接コミュニケートできるようになるということだ。途中の経路が複雑で、1ユーザーの声を簡単に他のユーザーに伝えることが困難だった従来は、メーカーが騙し、ユーザーが騙されるという図式は厳然として存在したし、かぎりなく広告に近いコンテンツによってその片棒を担いでいるようなメディアも存在していた。

 しかし東芝クレーマー事件の例を見ても分かるとおり、インターネットは、1ユーザーの声を瞬く間に世界中に広める力を持っている。ユーザーとメーカーが直接対話を求められ、メーカー側の何らかの不手際に対して、ユーザーが広く発言できる場を持つような環境において、従来の「騙し・騙される」という構図は維持できるかどうか大いに疑問だ。

 インターネットが常識化する未来のマーケティングでは、「広く浅く」ではなく、「狭くも深く」ブランドを浸透させることが重要だとされる。「今日の売上1万円」に目を奪われるのではなく、「向こう10年の売上10万円」の獲得を目指すというものだ。仮にこの見識が正しいとして、今述べたようなインターネット時代にあって、メーカーはユーザーを向こう10年間も騙し続けることができるだろうか? 読者は、1度でも「騙された」と感じるような記事を掲載した雑誌を将来も読み続けるだろうか? これらの答えが「否」なら、メーカーとユーザーは「騙し・騙される」関係から、「お互いに発展しあう関係」に脱皮する必要があるだろうし、メディアは、それを円滑化させる役割を担う必要があるだろう。

 私たちは、読者の皆さんから直接お金を受け取ってはいない。しかし今やお金よりも貴重で、さらにその価値は高まる一方である「時間」を投資していただいている。貴重な資源の投資に対して、相応の見返りがないと分かれば、読者は投資先を変えてしまうだろう。そして読者に対する影響力を失えば、早晩スポンサーは手を引くことになるだろう。この「魔のサイクル」が回り始めないようにするには、何より読者の信頼を失わないことである。メーカーとユーザー、メディアの三者が、目先のお金に目をくらませることなく、長期的な利益を考えるようになれば、読者優先の姿勢を貫きながら、しかし読者からは直接お金を受け取らない情報提供モデルもありうるのではないかと思うのだが、甘いだろうか。

(Windows 2000 Insiderガイド 小川誉久

 

 編集後記

■ベンチを使った腹筋、背筋、ダンベルを使ったウェイト トレーニングは毎朝の日課だ。1つのセッションはすべて30回。概ね10回ほどで苦痛を感じ、15回で辛くなり、20回が辛さのピーク、25回を超えると残りわずかと元気が出てくる。最初は数字をデジタルに数えながらトレーニングしていたが、やがて頭にプログレス バーが現れるようになり、「10回でインジケータは1/3、15回で半分、20回で2/3……」といった具合に、回数を重ねるごとに頭の中でバーが延びていくようになった。Windowsとつき合い始めてから、かれこれ10年超。10年経って、Windowsのインターフェイスが直感レベルに融合したということか? 小川 ■実は私、この夏に大学院入試を控えた受験生でして、しばらく休ませていただき、 受験勉強に専念しようと思います。学部生の間にまじめに勉学に励んだものには、筆記試験なしで、大学院に入れる内部推薦という制度があるのですが、まじめにページ更新に取り組んだものへの配慮はないようで、筆記試験を受けることになりました。しかし、大学入試以来まじめに勉強などしていなかったのでなかなか身が入らず苦しんでます。あぁ早く終わらせたい。8月末には復帰する予定です。 (井口
■ノートPCを買った。松下のCF-M2Cだ。携帯/PHSインターフェイスもモデムもLANも付いているし、拡張バッテリを付けると5時間以上は持つので、涼しい山(or ファミレス)へ移動して(逃げて?)原稿書きもこなせそうだ(電波が届けばの話ですが)。が、Windows 2000を入れようとしても、携帯/PHSインターフェイスやモデムのドライバがない。お願いですから早く何とかしてください、松下さん。表に貼ってある「Designed for Microsoft Windows 2000 Professional/Windows 98」シールは伊達ですか? (打越 ■私の友達に、みんなから「ねーちゃん」と呼ばれている友達がいる(いた)。 男性からも女性からもいろんな面で頼りにされ、皆で大騒ぎをするときは彼女が先頭を切って騒いでいた。つい先日、その彼女の一周忌に参列した。 彼女は去年の夏に結婚式をあげて、2週間後に事故で亡くなってしまったのである。あっけなかった。あっけなさ過ぎて、今でも信じられない。 ただ、彼女のお葬式のとき、ある意見でみんな一致した。ねーちゃんらしいと。 なぜなら、皆が覚えている彼女の最後の姿は、ウェディング ドレスを着て 満面の笑みを浮かべて新郎の横に立っている姿なのである。一番最高の姿が 最後の姿なのである。 (銭高)
 

 Windows 2000 Insider STAFF

   
 
ガイド(編集人・編集長) 小川 誉久
タイトル
デザイン
谷原 正則
ガイド(副編集長) 打越 浩幸
制作
河本 茂美
構成エディタ 塩田 紳二
編集 井口 圭一
銭高 順
編集・著作 Digital Advantage
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