コラムAthlonのロードマップデジタルアドバンテージ1999/12/20 |
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インテルは、Celeron、Pentium III、Pentium III Xeonなど、バリューPC(コストパフォーマンスを重視したPC)からサーバ、ノートパソコンまでを同じP6アーキテクチャで統一したラインアップを形成している。これに対しAMDは、バリューPCとノートパソコンがAMD-K6-2を、パフォーマンスPC(性能を重視した主流となるPC)用としてはAMD-K6-IIIとAthlonというように、Socket7とAthlonが混在したラインアップとなっている。さらに、現状ではサーバ向けのプロセッサがラインアップされておらず、インテルに完全に対抗するまでには至っていない。
これらのマイナス要素は、AMDも把握しており、1999年11月11日に開催したアナリスト向けの会議で、AMDの将来戦略を示す2000年以降のロードマップを発表した。
まず、2000年早々にK6-2にベースにプロセッサコアと同クロックでアクセス可能な2次キャッシュを同梱し、0.18ミクロンプロセスで製造する「K6-2+」と、K6-IIIを0.18ミクロンプロセスで製造する「K6-III+」をSocket7互換プロセッサとして出荷する。
次に、Athlonをすべて0.18ミクロンプロセスでの製造に移行する予定だ。また、2000年前半には、2次キャッシュをプロセッサに同梱した「Thunderbird(開発コード名:サンダーバード)」、バリューPC向けの「Spitfire(開発コード名:スピットファイア)」の出荷を予定している。Thunderbirdには、Slot Aのほか、Socket Aと呼ぶソケットに対応したバージョンがラインアップされる。SpitfireはSocket Aのみとなる。
さらに、2000年後半には「Mustang(開発コード名:ムスタング)」が出荷される。Mustangには、モバイル対応を行ったものと、さらに2次キャッシュの容量を2Mbytesまで引き上げ、コアの拡張などを行ったものの2種類がラインアップされる。
AMDのロードマップ |
これらの投入により2000年後半には、バリューPCをK6-2+とK6-III+でカバーし、パフォーマンスPCからサーバをAthlonでカバーすることになる。ノートパソコン向けは、K6-2+とAthlon(Mustang)でカバーする。以前は、AthlonにPentium IIに対するCeleronのような廉価版を投入し、2000年後半にはインテルと同様、すべてをAthlonでカバーする計画もあったが、11月に発表されたロードマップでは、この点が変更されていた。これは、性能的にはCeleronに対してはK6-2+とK6-III+で十分に対抗できること、Socket 7向けのチップセットが豊富で、マザーボードが非常に安価なことなどを考慮した結果と思われる。逆に言えば、バリューPCに提供するには、Athlonのマザーボードはまだまだ高価であるともいえるだろう。
市場が急速にCeleornとPentium IIIに移行している中、K6-2+とK6-III+でCeleronに対抗できるかどうかは疑問である。すでに1999年初頭にコンシューマ向け市場で50%以上あったAMDのシェアは、Celeronの低価格化に伴い、急速に低迷してきている。Pentium IIIに対するCeleronのような、低価格なAthlonをやはり用意し、Celeronに名実共に対抗すべきなのではないだろうか。
Athlonシステムを購入する
日本国内で販売されているAthlon搭載PCは、日本AMDのホームページ から参照できる。これを見るとわかるように、日本の大手PCメーカーでAthlon搭載PCをラインアップしているところはまだない。米国では、IBMがAptivaシリーズに、Compaq ComputerがPRESARIOシリーズにそれぞれ最上位モデルとしてAthlon搭載PCをラインアップしている。しかし、日本国内向けモデルでは、日本IBM、コンパック コンピュータともに発売は未定となっている。
現在、Athlon用チップセットとしては、AMDのAMD-750とVIA TechnologyのKX-133の2種類が出荷されている。このうちKX-133は、11月に出荷されたばかりであり、現在のところこのチップセットを採用したマザーボードは販売されていない。現在購入可能なAthlon用のマザーボードは以下のとおり。
ベンダ名 | 製品名 | 形状 | チップセット | BIOS ベンダ | Athlonの対応動作クロック |
Biostar | M7MKA | ATX | AMD-750 | Award | 500MHz/ 550MHz/ 600MHz/ 650MHz/ 700MHz |
FIC | SD11 | ATX | AMD-751/VIA686 | AMI | 500MHz/ 550MHz/600MHz/ 650MHz |
Gigabyte | GA-71X | ATX | AMD-750 | Award | 500MHz/ 550MHz/ 600MHz/ 650MHz/ 700MHz |
Microstar | MS-6167 | ATX | AMD-750 | Award | 500MHz/ 550MHz/ 600MHz/ 650MHz |
Freeway | FW-K7VM | ATX | AMD-751/VIA686 | AMI | 500MHz/ 550MHz/ 600MHz/ 650MHz |
ASUSTeK | K7M-RM/WA | microATX | AMD-751/VIA686 | AMI | 500MHz/ 550MHz/ 600MHz/ 650MHz/ 700MHz |
現在販売されているAthlon用マザーボード一覧 |
この表を見てもわかるように、現時点で販売されているマザーボードはいずれもパフォーマンスPC用である。また、どのマザーボードも、PCIスロット数などの構成にはほとんど違いはなく、選択肢は少ない。これは、AMDが開発時に提供したリファレンスマザーボードに沿ったものしか販売されていないからだ。今後、Athlonの出荷が増えることで、サーバ向けなどの多様なマザーボードが増えてくるだろうが、それにはまだしばらく時間がかかりそうだ
プロセッサ単体としては数々の優れた面を持つAthlonだが、このようにPCシステム全体としてみるとまだまだ課題が多い。前述のように大手PCベンダからはAthlon搭載PCがほとんど販売されておらず、入手性が悪い。そのうえ、自作するにしてもマザーボード製品の選択肢の幅が狭いのも問題だ。また、Athlonの電源仕様が動作クロックごとに微妙に異なり、一部のマザーボードではAthlon-700MHzで起動できないといったトラブルも報告されている。
Windows 2000のプラットホームとしてみた場合でも、コンパチビリティ準拠の ロゴが取得されていないうえ、互換性を保証するメーカーも今のところない。編集部でテストした限りでは、問題なく動作したが、Ultra DMA/66ドライバなどの検証は行っていない。
現在Athlonは、一部のパワーユーザーに支持されているが、この支持を一般ユーザーにまで広げるためには、こうしたいくつものハードルをクリアしなければならないだろう。
INDEX | ||
検証:Athlon搭載マシンにWindows 2000をインストールする(1/2) | ||
コラム:Athlonのアーキテクチャ | ||
コラム:Athlonのロードマップ | ||
検証 |
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