Insider's Eye導入担当者のための
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マイクロソフトは、2004年1月15日、Windows 98/98 Second Edition(以下98SE)およびWindows Millennium Edition(Me)のサポート期間の延長に関する発表を行った。
本来ならば、2004年1月16日に有償サポートである「延長サポート」フェーズが終了するはずであったが、現在稼働中のWindows 98/98SE/Meに対するサポート需要が高いため、サポート・プランを変更し、延長サポート期間の終了を約2年半延期して、2006年6月30日にした。さらにWebを使ったオンライン情報提供(オンライン・セルフヘルプ・サポート期間)も延長サポート期間の終了後1年とし、2007年6月30日に延長することになった。
Windows 98/98SE/Me OSの新しいサポート・フェーズ |
サポートのフェーズには、「メインストリーム・サポート」「延長サポート」「オンライン・セルフ・サポート」があるが、無償でサポートを受けることができる「メインストリーム・サポート」は、Windows 98/98SE/Me OSに関してはすでに終了している。今回発表されたのは、延長サポート・フェーズの終了が当初予定の2004年1月16日ではなく、2006年6月30日になった。さらにオンライン・セルフ・サポート・フェーズの終了も2007年6月30日となった。 |
企業のクライアント導入担当者にとって、マイクロソフトのサポート戦略は導入計画に大きな影響を及ぼす要因である。万一の障害発生時、OSの開発元であるマイクロソフトのサポート・サービスを頼りにできるかどうかは大きな違いになる。またネットワークを経由した攻撃の危険性を常にはらむ昨今では、脆弱性(セキュリティ・ホール)を解消するための修正プログラムがタイムリーに提供されるかどうかによって、システム全体のセキュリティ・リスクが大きく左右されることになるからだ。
しかし困ったことに、マイクロソフトが公表しているサポート・ポリシーの説明は複雑で分かりにくい。そこで本稿では、今回発表されたWindows 9x系OSのサポート期間延長のニュースだけでなく、マイクロソフトによるデスクトップ製品サポート・ポリシーの基礎を併せて解説する。
延長されたWindows 9x系OSのサポート期間
製品の販売開始から、サポート体制の内容や時期などの各段階(フェーズ)を「プロダクト・ライフサイクル」という。当初は各製品ごとの事情やサポート体制などを考慮し、さまざまなライフサイクル・ポリシーが使われていたが、現在では2002年10月17日に発表された「マイクロソフト サポート ライフサイクル ポリシー」が採用されている。
- 「マイクロソフト サポート ライフサイクル ポリシー」を発表(2002年10月17日のニュース・リリース)
これはサポートのライフサイクルの概略を決めるためのガイドライン(原則)であり、実際の製品ごとのライフサイクルは個別に設定される。ただしこの新しいポリシーの適用対象となる製品はWindows 2000 Professional以降であり、Windows 9xやMeなどについては、それ以前から使われていた古いサポート・ポリシーが適用されると説明されていた。具体的には、次のようになっていた(各フェーズの詳細については後述する)。
製品名 | 製品発売日 | メインストリーム終了 | 延長サポート終了 |
Windows 98/98SE | 1999年6月30日 | 2002年6月30日 | 2004年1月16日*1 |
Windows Me | 2000年12月31日 | 2003年12月31日 | 2004年12月31日 |
当初発表のWindows 98/98SE/Meのライフサイクル・ポリシー(旧版) | |||
デスクトック・カテゴリに属するWindows 98/98SE/Me OSのライフサイクル・ポリシー(2002年10月17日発表のニュース・リリースの添付資料からの抜粋)。 | |||
*1 ニュース・リリース中では2003年6月30日となっているが、Windows 98/98SEユーザーがまだ多かったことを考慮してその後延長され、2004年1月16日となっていた(プレミア・サポート契約の場合は2004年6月30日まで)。 |
これが今回の発表では、延長サポートの終了日が2004年1月16日から2006年6月30日までに延期され、次のようになった。
製品名 | 製品発売日 | メインストリーム終了 | 延長サポート終了 |
Windows 98/98SE | 1999年6月30日 | 2002年6月30日 | 2006年6月30日 |
Windows Me | 2000年12月31日 | 2003年12月31日 | 2006年6月30日 |
2004年1月15日発表のWindows 98/98SE/Meのライフサイクル・ポリシー(最新版) | |||
Windows 9x/Me OS系の延長サポートの終了が2006年6月30日まで延期された。 |
さらに詳しいWindows 98/98SE/Me OSのライフサイクルの説明は、以下のページにまとめられている。
Windows OSのプロダクト・サポート・ライフサイクルを理解する
マイクロソフトは、Windowsデスクトップ製品のサポート・フェーズを「メインストリーム」と「延長」の2つの段階に分けている。簡単にいえば、製品が発売され、その製品が主力製品である一定期間において、有償/無償すべてのサポート・サービスを提供するのが「メインストリーム」フェーズ、その後ソフトウェアの新バージョンが発売され、主力製品ではなくなったものの、バージョンアップせずに旧版のソフトウェアを使い続けているユーザー向けに一部限定的なサポート・サービスを提供するのが「延長」フェーズである(これらの詳細はすぐ次で述べる)。また「延長」サポート終了後も、ユーザーの希望などに応じて有償サポート・サービスを個別に提供する「カスタム・サポート」も用意されている。なお、これらのフェーズとは別に、Webでの情報提供やWindows Updateによる修正プログラムの提供など、インターネットを利用したユーザー向けのセルフ・サポートは「オンライン・セルフヘルプ・サポート」と呼ばれ、前挙の各フェーズのサポートとは別に、製品発売時点から一定期間(最短でも8年)サービスが提供される。
プロダクト・ライフサイクルの各フェーズに関する解説は以下のページなどにまとめられている。
デスクトップ製品のサポート・ライフサイクルの概略 |
メインストリーム・サポートと延長サポートが2つの主な有償/無償サポート・フェーズであり、同時にオンラインのセルフ・サポートも提供される。 |
サポート・ライフサイクルは、製品のカテゴリ別にそれぞれ異なるポリシーや期間が決められている。Windows 98/98SE/MeといったOSの場合は、OSそのものに関するライフサイクル・ポリシーと、OS上にインストールされているInternet ExplorerやWindows Media PlayerといったOSコンポーネントに関するライフサイクル・ポリシーの両方がそれぞれ決められている。
以下では簡単に、各フェーズの内容についてまとめておこう。
「メインストリーム・サポート」フェーズ
製品発売の当初から行われる、有償・無償のサポートが提供される段階のこと。ソフトウェアの購入者が、例えば電話などで問い合わせることができるほか、オンラインWebページなどを経由して情報の提供を受けたり、修正プログラムやセキュリティ・パッチなどを含む各種の修正プログラムなどを入手できたりする段階である。
メインストリーム・サポート・フェーズは製品のカテゴリごとに異なるが、Windows 2000以降のWindows OS(Windows 2000 Professional、Windows XP Professional)は、製品の販売開始後、最低でも5年間となっている。そのため、現在でもメインストリーム・フェーズの段階にある。だがWindows 98/98SE/Meについては、最初に決められたライフサイクル・ポリシーに基づき、発売開始後3年となっている。そのため現在ではこれらのOSに対してはすでにメインストリーム・フェーズは終了している。
このフェーズの終了は、製品の販売終了や購入時、後継製品の販売開始から数えるのではなく、最初に製品の販売が開始されてから3年もしくは5年となっているので、後で購入したユーザーほど無償サポート期間が短くなってしまう。一方で、製品発売後、ある程度時間が経った製品は、Service Packの提供などにより、多くの問題点が発見され、解消された「枯れた」存在であり、安心につながる側面もある。導入担当者は、これらの両面をよく検討し、WindowsクライアントOSの導入計画を練る必要があるだろう。
「延長サポート」フェーズ
メインストリーム・フェーズが終了し、製品のサポートが限定的になる段階のこと。製品購入者に対する無償の電話サポートなどはすべて終了しており、電話サポートが必要ならば有償でサポート契約を結ぶ必要がある。だがオンラインのサポートWebページなどを経由したサポート情報などは引き続き閲覧することはできるし、すでに公開されていた修正プログラムやセキュリティ・パッチなども引き続きダウンロードできる。けれども新しい修正プログラムは提供されず(有償サポート契約では入手可能。サポート技術情報では「マイクロソフトへ連絡して入手してください」などと記述されていることがある)、セキュリティ・パッチに関しても、非常に重要なもの(脆弱性の緊急度が高いもの)以外は提供されないので、ユーザーはそろそろ後継OSへの移行を考え始める必要がある。
Windows 98/98SE/Meについては、当初の予定では2004年1月16日で延長サポート・フェーズも終了することになっていたが、今回の発表により、2006年6月末まで延長されることになった(メインストリーム・フェーズは延長されない)。だが上で述べたように、これは企業などで有償サポート契約を結んでいる場合にのみ恩恵を受ける措置であり、そうでない個人ユーザーや、企業ユーザーであっても個人ユーザー・ライセンスでWindows OSを利用している場合はあまり関係がないかもしれない。
サポート情報や修正プログラムを提供する「オンライン・セルフ・サポート」
「オンライン・セルフ・サポート」は、Webを使ったサポート情報の提供サービスである。これは製品発売日から一定期間(最短でも8年間)ずっと提供されるサポート・サービスである。以前提供された修正プログラムやセキュリティ・パッチ、サポート技術情報などは、Web経由で引き続き入手できる可能性が高いが、ユーザーは自分自身でそれらの情報へアクセスし、問題の解決を図る必要がある。
オンライン・セルフ・サポートは通常は製品の発売開始から最低でも8年は提供されることになっているが、Windows 98/98SE/Meの場合は、2007年6月30日までとなっている(延長サポート・フェーズの1年後まで)。これを過ぎるとオンラインからも情報が削除され、アクセスすることができなくなる可能性がある。実際にパッチなどがすべて削除されるかどうかは不明だが、過去のOSの場合では順次ダウンロードできなくなったり、サポート技術情報が改訂され、ダウンロード・プログラムへのリンクが削除されたりしている場合がある。
現行Windows OSのサポート・ライフサイクル
現時点でメインストリーム・フェーズにあるWindowsデスクトップOS(Windows 2000 Professional、Windows XP)のサポート・ライフサイクルは次のようになっている。
Windows OS | メインストリーム終了 | 延長サポート終了 | オンライン・セルフヘルプ・サポート終了 |
Windows 2000 Professional | 2005年3月31 日 | 2007年3月31日 | 2008年3月31日 |
Windows XP Professional | 2006年12月31日 | 2008年12月31日 | 2009年12月31 日 |
Windows XP Home Edition | 2006年12月31 日 | 2006年12月31日 | 2007年12月31日 |
現行デスクトップOSのサポート・ライフサイクル | |||
現在メインストリーム・フェーズにあるデスクトップWindows OSであるWindows Server 2000 ProfessionalおよびWindows XPのサポート・ライフサイクル。 |
Windows 98/98SE/Meサポート延長の意義
今回のサポート期間の延長の理由などについては、以下のページにまとめられている。
これによると、一部の地域(国)では、Windows OSのメインストリーム・サポートの終了が周知徹底されておらず、こうしたポリシーを通達するにはもう少し時間が必要であるとしている。またサポート終了に対する抗議から、延長を決定したものでもないとしている。だがわざわざこのような釈明(?)をするまでもなく、実際にはまだまだ多くのWindows 98/98SE/Meマシンが稼働している現状をかんがみれば、早々にWindows 9x系OSのサポートを打ち切ることはできないと判断したのだろう(クライアントOSの稼働状況などについては、別稿の「読者調査―クライアントのHotFix管理状況はどうなっている?―」を参照)。
延長サポート・フェーズが終了すると、有償サポート契約を結んで修正プログラムやセキュリティ・パッチなどを入手することもできなくなる。さらに延長サポート・フェーズが終了して1年が経過すると、オンライン・サポート情報も入手できなくなってしまう(可能性がある)。パッチが入手できなくなるのも深刻だが、日々のネットワーク運用には欠かせないサポート技術情報が失われてしまう痛手は管理者にとっては大きい。このような事態を現状に則して少しでも改善するために延長サポート期間が変更されたのであろう。
だがこの延長措置によって、Windows 98/98SE/Me OSの安全性が高まるわけではないことは常に認識しておく必要がある。時間的な猶予が多少増えただけで、Windows XPなどの後継OSへのリプレースや、代替ソリューションの導入は不可避である。今回の2年半の延長サポート期間(およびさらに1年のオンライン・サポート期間)があるうちに、クライアントOSのリプレースを準備しなければならない。
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