Insider's Eye

システム管理製品に組み込まれるSQLテクノロジの狙い

―― サーバとの統合型ソリューションを推進 ――

Paul DeGroot
2004/04/07
Copyright(C) 2004, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.


本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌『Directions on Microsoft日本語版』 2004年4月15日号 p.19の「システム管理製品に組み込まれるSQLテクノロジの狙い」を、許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。

 Microsoftのシステム管理アプリケーションにSQL Serverをバンドルした新しいライセンス・パッケージは、システム管理アプリケーションを活用する顧客の総コストを低減する。このバンドル・パッケージはSQL Serverアプリケーションを使用していない小規模組織にアピールするとともに、大規模組織のサーバ・アプリケーション運用の信頼性向上を促進する。また、こうしたバンドル・パッケージは今後、Microsoftアプリケーションの提供形態の1つとして定着する可能性もある。

 Microsoftのほぼすべてのサーバ・アプリケーションはデータベースを必要とする。比較的シンプルなニーズを持つアプリケーション(保存するデータが設定データやテンプレート、あるいは少量の認証データなどに限られるもの)は無料のMSDE(Microsoft SQL Desktop Engine)をデータベースとして使用する。MSDEはSQL Server 2000のコアをベースとしているが、汎用的なデータベースで提供される管理ツールの大部分を備えていない。また、データベース容量が最大2Gbytesまでに制限されている。

 より大量のデータを保存する必要があるアプリケーションや、データベースのプログラミング機能と管理が重要となる複雑なデータ環境を構成するアプリケーションは、一般にSQL Server 2000を必要とする。このことはアプリケーションのトータル・コストに大きく影響する。例えば、SQL Server 2000のプロセッサ・ライセンスは約4750ドル(米国での推定ボリューム・ライセンス価格)からとなっており、サーバ・アプリケーションの多くよりもはるかに高価だ。

データベースとサーバ・アプリケーションをセット化

 Microsoftの一部の製品グループはMSDEの制限を緩和することで、このコストのハードルを克服しようとしてきた。例えば、SharePoint Portal Serverは、2Gbytesを超えるデータを保存できるように制限を緩めた特別なバージョンのMSDEとともに提供されている。しかし、2つの製品グループがフル機能を持ったSQL Serverの低コスト・バージョンと各グループの製品を組み合わせ、より魅力的な選択肢を提供している。

●Microsoft Operations Manager(MOM)
 組織内に分散したサーバとアプリケーションの状態レポート、および管理コンソールを提供するMOM 2000は、SQL Serverのフル・バージョンを含むバンドル・パッケージが提供されている。

●Systems Management Server(SMS)
 SMSはソフトウェアやパッチの自動配布などに使われる。SMS 2.0では、特別なライセンス条項により、組織は管理対象の各クライアントのデータを保存するのにSQL Serverが使用でき、各クライアント用のSQL Server CAL(クライアント・アクセス・ライセンス)や非常に高価なSQL Serverのプロセッサ・ライセンスの購入は不要だった。最新バージョンのSMS 2003では、SMS 2.0からライセンス条件が変更され、SMS 2003とSQL Serverをセットにして割引価格で提供する新しいバンドル・パッケージが用意されている。SQL Server CALはやはり不要だ。

 MOMとSMSの新しいバンドル・パッケージに含まれるSQL Serverは、これらのアプリケーションを支援する目的でのみ利用できる(MOMにバンドルされているSQL ServerはSMSと併用でき、その逆も可能)。MOMの管理サーバだけがデータベースを使用するため、管理されるクライアント用のSQL Server CALを必要としない。しかし、SQL ServerがバンドルされていないSMS 2003の購入者は、各クライアント・デバイス用のCALか、あるいはSQL Serverのプロセッサ・ライセンスの購入が必要になる。

大きなコスト・メリット

 新しいバンドル・パッケージ(ボリューム・ライセンス契約を通じて購入しなければならない)は、MOMやSMSの購入者にとって価格メリットが大きい。例えば、MOMは基本管理パックの価格が278ドルで、SQL Serverのプロセッサ・ライセンスは4750ドルだ。しかし、バンドル・パッケージの価格は758ドルにすぎない。

 同様に、SMSプライマリ・サイト・サーバ・ライセンスとSQL Serverを個別に購入すると5000ドル以上かかるが、バンドル・パッケージを購入すれば1280ドルで済む。

 ソフトウェア・アシュアランス(SA)によるSMS 2.0のアップグレード権を持っている顧客は、SMS 2003とSQL Serverのバンドル・パッケージ(SMS 2003 with SQL Server 2000 Technologyと呼ばれる)に追加費用なしでアップグレードできる。こうした顧客はSMS 2003単体にもアップグレードできるが、その場合は、SQL Serverライセンスが別途必要になる。

 なお、新しいバンドル・パッケージ(SA購入者の)のアップグレード権は、SQL ServerではなくSMSやMOMのアップグレード・パスに左右される。このため、SQL Serverの新バージョンがリリースされた場合、こうした顧客は、MicrosoftのSMSチームやMOMチームがバンドル・パッケージの新バージョンをリリースするのを待たなければならない。その結果として、最新のデータベースへのアップグレードに若干の遅れが生じるかもしれないが、SQL ServerとMOMまたはSMSの依存関係のテストを経て、これらの組み合わせが安全に運用できるようになることは確実だ。

バンドル・パッケージが今後も続々登場?

 新しいバンドル・パッケージの主眼はMOMとSMSの魅力を高めることにあるが、ほかのサーバ・アプリケーションの多くも、一般的な利用シナリオをサポートするのにSQL Serverを必要とする。

 Microsoftが複数のサーバ・アプリケーションとデータベースを含む統合型ソリューションに力を入れつつある中、ライセンス方法は複雑化している。だが、複数のアプリケーションについて一括してライセンスを設定して提供すれば、Microsoftはサプライチェーン管理や小売業務の支援など、一般的なソリューションのライセンス方法を簡素化できる。例えば、特定の製品グループがライセンス条件や製品使用権に変更を加えても、統合型ソリューションが無効になることがないように、個別製品のライセンス上の制限を、製品が統合パッケージの要素である場合には適用しないという措置を取ることができる。

 また、バンドル・パッケージは、SMSとMOMのより堅牢な運用を促進する。このことはSQL Serverのほかのインスタンスをすでに使用している大規模組織にも当てはまる。バンドル・パッケージのおかげでこうした組織にとっても、MOMやSMSをMSDEと併用したり、SQL Serverインスタンスをほかのアプリケーションと共用したりする代わりに、MOMやSMSの支援に特化したSQL Serverの別のインスタンスを専用のコンピュータで運用する場合に、コスト負担が軽くなる。こうした運用により、パフォーマンスが最大化されるうえ、MOMやSMSシステムをほかのシステム(監視対象システムなど)と分離することができる。

 ほかの製品の担当グループもSQL Serverと自グループのアプリケーションを組み合わせてライセンス提供することを検討中のようだが、そうしたバンドルを正式発表したグループはまだない。End of Article

  Microsoft SQL Desktop Engine(MSDE) SQL Server
Application Center デフォルトでインストールする  
BizTalk Server BizTalk Server 2000 Partner EditionはMSDEを使用できる BizTalk Server 2002はSQL Serverを必要とする
Commerce Server(CS) MSDEが使用可 CS 2002はSQL Serverを必要とする
Content Management Server(CMS)   CMS 2002はSQL Serverを必要とする
Host Integration Server(HIS) HIS 2000はMSDEをデフォルトでインストール  
Microsoft Business Solutions部門のERPアプリケーション(Axapta、Great Plains、Navision、Solomon)   Great PlainsおよびSolomon製品の大半はSQL Serverを必要とする。Navisionには独自のデータベースが含まれる
Microsoft Customer Relationship Management(MSCRM)   SQL Serverが必要
Microsoft Identity Integration Server(MIIS)   無料のIdentity Integration Feature Pack for Microsoft Windows Server Active Directoryは、バックエンド・データ・ストアとしてSQL Server 2000 Standard EditionまたはEnterprise Editionを必要とする。MIIS 2003 Enterprise EditionはSQL Server 2000 Enterprise Editionを必要とする
Live Communications Server 設定データの保存にMSDEを使用できる IM(インスタント・メッセージ)アーカイブ・サービスの使用にはSQL Server 2000 Standard EditionまたはEnterprise Editionが必要
Microsoft Operations Manager(MOM) イベント・データの短期の保存にMSDEを使用できる イベント・データの長期の保存(データを集計して分析する場合など)にはSQL Serverが必要
Project Server   エンタープライズ・プロジェクト管理には必要
SharePoint Portal Server(SPS) SPS 2003はMSDEの特別なバージョンとともに出荷されている SPS 2003をWindows Server 2003 Web Edition上で運用する場合は、SQL Server 2000が別のコンピュータにインストールされている必要がある。また、SPS 2003の大規模な運用にはSQL Server 2000が推奨されている
Small Business Server(SBS)   SBS Premium Editionには含まれている
Systems Management Server   SQL Serverを必要とする
Windows Server 2003のサービス (これらのサービスはWindows Server 2003用に自由にダウンロードでき、追加サーバ・ライセンスを購入する必要はないが、WMRSを使用するには各デバイス用のCALを購入する必要がある)
Windows Rights Management Services(WMRS) 1台のコンピュータ上で、部門レベルで運用する場合は使用可 マルチサーバ運用にはSQL Server 2000が必要
Windows SharePoint Team Services MSDEが付属する 全文検索にはSQL Serverが必要
SQL Serverテクノロジを使用するサーバ製品
 
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