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Eye 最新Microsoft Operations Managerの実力(後編) ―― MOM2005でシステム監視を徹底強化 ―― 3.管理インフラを構築する管理パックの機能Peter Pawlak2004/08/03 Copyright (C) 2004, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc. |
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本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌『Directions on Microsoft日本語版』 2004年8月15日号 p.14の「最新Microsoft Operations Managerの実力」を、許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。 |
前回は、Microsoft Operations Manager(MOM) 2005の全体的な概要を述べた。後編である今回は、各ミドルウェアやOSをMOMから効率よく、かつきめ細かに制御可能にする「管理パック」の詳細、MOM 2005に残された課題などについて解説する。
新しい管理パックの狙い
MOMサーバおよびMOMエージェントがコア監視インフラを提供するのに対し、MOM管理パック(以下「MP」と表記)はMOMシステムを便利にする上で必要なアプリケーションとOSの知識を提供する。ルールやスクリプトをゼロから作成することは可能だが、製品に関する深い理解と相当な作業量が必要となる。
商用アプリケーションとOSコンポーネントの場合、顧客は最低限の追加設定ですぐに使え、誤報や疑陽性のアラートの発生が少ない既製のMPを求めている。Microsoftは自社の戦略的DSI構想のもと、自社製およびサードパーティ製アプリケーションの個々のオーナーが、自社製品用のMPに責任を持って「知識」を投入することをかなり重視している。このことは、アプリケーション・オーナーの考え方を変え、オペレーションを理解したアプリケーションの作成を促すだけでなく、DSI構想の一部が実現したときに、製品に統合する大規模な知識ベースが構築されることにもなる。MOM 2000 MPの方向性は競合製品に比べても効果的だと考えられるが、MOM 2000を有効活用するにはまだかなりの調整や性能強化が必要だった。
Microsoftの設計目標は、MOMが生成するすべてのアラートを「アクション可能」なもの、つまりオペレータが何らかの行動(トラブル・チケットや変更注文の発行など)を行うべきか、MOM自体が何らかの自動応答(サービスのリスタートなど)をすべきものにすることである。MOM 2005 MPはよりインテリジェントに再設計され、アクション不可能なアラートの発生ははるかに少なくなっているため、運用コストは削減され、オペレータは生成されるアラートに注意を払うようになる。
しかし、MOM 2005 MPの「SN比※」は、前身のMOM 2000より改良されてはいるものの、MOM 2005のベータ2版はまだかなりのアクション不可能なアラートを生成する。リリース製品ではその数は減るだろうが、一部は設計上の制約に起因する。MOMは、個々のソフトウェアおよびハードウェア・コンポーネントの具体的なニーズや相互依存性、オペレーション上の役割について、十分に探索して、情報を完全に把握した上で判断できるわけではない。必要なサービスの稼働情報が損なわれる可能性があるときは、それを放置してアラートを発しないよりは、アクション不可能なアラートを発せざるを得ない。この問題は、前述の条件を定義する「System Definition Model(SDM)」と呼ばれる将来のDSIテクノロジが監視対象ソフトウェアとハードウェアに組み込まれるまでは真に解決されない。
訳注※ 信号対ノイズ比率。ここでは有効なアラートと、あまり意味がないアラートの比率のことを意味している |
幸いMOM 2005は、サーバ・グループ全体または役割のルール・パラメータに影響を与えずに特定サーバに例外を設定するオーバーライド機能を備えている。
MOM 2005にはWindows OSサービスと、SQL ServerやExchangeなどいくつかのMicrosoftサーバ・アプリケーション用のMPが標準で付属し、MOM 2005の出荷後はさらに多くのMPがMicrosoftからダウンロード可能になる(MPの予定については、表「Microsoftから提供されるMOM 2005管理パック」を参照)。自社のアプリケーションやハードウェア向けにMOM 2005 MPを開発したい開発者は、MOM 2005の出荷後に無料のSDKをダウンロードできる。
Microsoftから提供されるMOM 2005管理パック Microsoft Operations Manager(MOM)2005の出荷時には、Microsoftとサードパーティから多くの種類の管理パック(MP)が入手可能になるだろう。既存のMOM 2000 MPはMOM 2005で稼働するからである。下表は、Microsoftの自社製MPのMOM 2005向けアップデート計画を示す。これはStateビューや新レポーティング・システムといったMOM 2005の機能のサポートに必要とされる。 MOM 2005にはWindows Base管理パックの新バージョンが付属する。同パックは、.NET Framework、Active Directory、COM+(コンポーネント・サービス)、DHCP(動的ホスト構成プロトコル)、グループ・ポリシー、IIS(インターネット・インフォメーション・サービス)、Windows SharePoint Servicesなどの大多数のOSサービスをカバーする。 Microsoftは2004年5月のTech・Edカンファレンスで発表したCommon Engineering Criteria 2005の一環として、各ビジネス・サーバ製品の発売時にMPを出荷するとしている。Tech・Edに出席していたすべてのサーバ製品グループがこのコミットメントを完全に理解してはいなかったようであるが、Microsoftは将来の発売時にはすべてにMPの必要条件について精通させる意向だ。
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新データ・ウェアハウスおよびレポーティング・システム
MOM 2005には、SQL Server Reporting Servicesを基にした新しいレポーティング・システムが用意されている。MOMはレポートを用いて稼働状況およびパフォーマンスの履歴情報を管理者やアプリケーション開発者、マネージャに提示する。この新レポーティング・システムはMOM 2000のMicrosoft Accessベースのレポートに取って代るもので、以下に示すさまざまなメリットがある。
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レポートはHTML形式でフォーマットされており、Webブラウザで閲覧できる(MOMはExcel形式で書き出すことも可能)。
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レポートはパラメータ化されており、ユーザーは参照したい内容を選択し、掘り下げて詳細を調べることができる。
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レポートにチャートやグラフを含めることができる。
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ユーザーはレポートを電子メールで自動的に受け取れる。
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レポートはVisual Studioでのカスタマイズが容易になり、MOM以外のデータ・ソースのデータを盛り込むことができる。
MOMのライブ・プロダクション・データベースからレポートを作成していたMOM 2000とは異なり、MOM 2005のレポーティング・エンジンはパフォーマンス履歴データの格納専用に設計された、総合的だが独立したデータ・リポジトリをベースにしている。MOM 2005はデータ・ウェアハウジングのコンセプトを用いて、収集データのサブセットをウェアハウスに自動的に移動し、設定可能な判断基準に基づいてそれを整える。これによりMOMは、重要データの長期的トレンドを追跡するのに十分な期間保持し、MOMのメイン・データベースが古いデータで満杯になるのを防止できる。
MPにはプレビルドのレポートがバンドルされ、MOM 2005には標準で100以上のカスタマイズ可能なレポートが付属する。しかし、MicrosoftはMOM 2000 AccessベースのすべてのレポートをMOM 2005 MP向けに再実装したが、旧来のMOM 2000 MPにバンドルされていたレポートはMOM 2005では動かない(ただし旧来のMPはそのほかの面では引き続き正常に動く)。
エージェントレスの監視
MOMの監視能力をフルに生かすには、各監視対象サーバにエージェントをインストールする必要がある。しかし、MOMエージェントはWindows 2000 Server以上を要求する。幸い、MOMはこの条件を満たさないWindowsサーバ(Windows NT Server 4.0など)やエージェントのインストールが望ましくない場合(アプリケーション・ベンダがエージェントを自社の仕様どおりに設定しない限りインストールをサポートしない場合など)、他部門が中央のIT部門のエージェントを自分たちのサーバで稼働させることを許可しない場合などの監視手段を用意している。
MOM 2005はMOMサーバから問題の監視対象サーバへの定期的なDCOM RPCコールを用いた「エージェントレス」監視をサポートする。しかし、エージェントレス監視には次のような限界がある。
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基本的な稼働状況の指標しか監視できない。
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Windowsイベント・ログではなくテキスト・ログに書き込むアプリケーションを監視できない。
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ファイアウォールの外側にあるシステムを安全に監視できない。
これらの理由から、MOMサーバとネットワークに対し、より大きな負荷がかかる。
Microsoftは現在、この方式を用いた場合のMOMサーバの監視対象サーバの推奨台数を最大60台としている。
INDEX | ||
Insider's Eye | ||
最新Microsoft Operations Managerの実力(前編) | ||
1.MOM2005の概要 | ||
2.MOM2005の新機能 | ||
コラム:システム監視の必要性 | ||
最新Microsoft Operations Managerの実力(後編) New! | ||
3.管理インフラを構築する管理パックの機能 New! | ||
コラム:なぜシステム監視は難しいのか? New! | ||
4.サードパーティ製品との統合性を改善 New! | ||
「Insider's Eye」 |
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