Insider's Eye

Windows Server 2003次期版「R2」とは(2)

Peter Pawlak
2005/09/01
Copyright (C) 2005, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.

管理コンソールMMC 2.1の改善

 DFSの改良に加え、Microsoft管理コンソール(MMC)の変更もまた、本社オフィスからブランチ・オフィスのサーバ管理を容易にしている。

 MMCは、ハードウェアやソフトウェア、Windows OSのネットワーク・コンポーネントを管理するためのツールやスナップインを作成したり、セーブあるいはオープンしたりするためのツールだ。

 Windows Server 2003 R2に組み込まれる新バージョンのMMC 2.1は、次のような機能強化が施されている。

●アクション・ペイン
 MMCコンソールの右側に置かれる新しいペインには、選択したアイテムで実行できるアクション・リストが表示される。これまで管理者は、MMCに表示されるさまざまなアイテムでどのようなタスクが実行できるか、確認に手間がかかっていた。

●スナップイン・ダイアログ・ボックス
 MMCスナップイン・ダイアログ・ボックスの改良によって、コンソールからスナップインを追加、編成、削除することが容易になった。

●エラー処理の改善
 スナップインのエラーメッセージが分かりやすくなり、エラーを処理するためのオプションが増えた。

●新しいスナップイン
 MMC自体は管理機能を実行せず、管理機能を実行するツールやスナップインをホストする。

 新しいスナップインの1つがプリント管理コンソール(PMC)だ。組織内のすべてのプリント・サーバに接続するプリンタを、単一のインターフェイスで管理できる。PMCを利用すれば、プリント・サーバに個別に接続する必要はなくなり、1対多のリモート管理が可能になる。IT部門はプリント・サーバとして設定したブランチ・オフィスのサーバを管理しやすくなる。

 管理者はPMCを利用して、プリンタ・エラーをモニタしたり、クライアントのプリンタ接続を設定でき、ローカル・ブランチで自動的にプリンタを見つけてインストールしたり、コンフィギュレーション・スクリプトを実行することも可能だ。PMCは、キュー・ステータスやプリンタ名、ジョブの数、ドライバ名、サーバ名など、最新の詳細情報を提供する。管理者はPMCのフィルタリング機能で表示方法をカスタマイズできる。例えば、特定のエラー状態にあるプリンタだけを表示させたり、指定したブランチ・オフィスのプリンタでキューに1つ以上ジョブが含まれるものだけを表示させたり、といったことが可能だ。プリンタが内部に管理用Webページを持っていれば、PMCはジャムの正確な発生場所やトナーのレベルなど、トラブルシューティングの詳細を表示することができる。

包括的なブランチ・オフィス支援戦略

 Windows Server 2003 R2では、ブランチ・オフィスをサポートするための機能がいくつか強化されているが、ブランチ・オフィスでITインフラや業務アプリケーションの導入を成功させるためには、慎重なプランニングも不可欠だ。

 ブランチ・オフィスのITリソースの導入を管理して、ハードウェアやソフトウェア、管理リソースの利用を効率化し、標準化すると同時に、災害時のデータ復旧を迅速化するために、Microsoftは規範的構造ガイダンスを開発するとともに、Branch Office Infrastructure Solution(BOIS)と呼ぶ一連のツールを用意した。BOISは無償でダウンロードできる。

 BOISはブランチ・オフィスの合理的なインフラの定義と導入を支援するための概念情報を提示する一方、自動導入ツールを利用してブランチ・オフィスに完ぺきなシングル・サーバ・ソリューションを実装するための規範的ガイダンス、ベスト・プラクティスを提供している。

 Microsoftは、Windows Server 2003 R2およびリリース・ガイダンスでブランチ・オフィスのサポート強化を前面に打ち出したことに加え、Systems Management Server(SMS)やMicrosoft Operations Manager(MOM)といったほかのWindows Server System製品でも、ブランチ・オフィス・サポートの強化に乗り出した。例えば、同社は2005年6月のTechEdで、ブランチ・オフィスへソフトウェア・アップデートを転送するため、将来的にInternet Security and Acceleration(ISA)サーバでバックグラウンド・インテリジェント転送サービス(BITS)をサポートすることを明らかにした。こうした動きの背景には、ブランチ・オフィスへWindowsやほかの製品の最新バージョンの導入促進を図るMicrosoftの戦略がある。

コラム
R2はマイナー・リリース?
― インターリム・リリースの新たな位置付け ―

 新機能の投入と顧客の求める予測可能なスケジュールとのバランスを取るため、Windows Server担当上級副社長Bob Muglia氏は、Windows Serverについてメジャー・リリースとインターリム・リリースを交互に行う方法を提案した。カーネルの変更など、OSのコア機能やアーキテクチャの更新を含むメジャー・リリースは、3年ないし4年の周期で行う。一方、インターリムすなわち“R2”リリースは、例えばWindows Movie Makerなど、コアOSのサービスに依存するOS周辺機能の再設計を含み、メジャー・アップデートの中間、およそ18カ月から2年の周期で行う。

 Windowsクライアント・チームは、明らかに同様のスケジュールを採用する構えだ。Windowsクライアントの次期リリース、すなわち2006年後半に投入予定のLonghornは、コア機能の変更を含むメジャー・リリースとなる。それに続くLonghorn R2では、コア機能を拡張する機能がいくつか追加されることになるだろう。

 こうしたスケジュールをキープすることは、技術的には困難ではないが、管理面では厳格な規律が要求される。新機能の設計、あるいは既存機能の変更を行うとき、製品チームはそれらの変更を次のメジャー・アップデートに組み入れるか、それともインターリム・リリースに回すか判断を迫られる。その後は、決定したリリースに向けて全力で取り組み、規格外のフィーチャー・パックやService Packをリリースしないようにしなければならない。こうした厳格な規律がなければ、個別のチームがその場の要求に応じて断片的なアップデートのリリースを繰り返すことになるだろう。しかし、もしスケジュールの確立に成功すれば、リリースと顧客の導入の間に横たわるギャップは狭まり、ほかの製品チームも予測可能なリリース・サイクルが有益であると判断するに違いない。それによって、Windows Server Systemを構成するほかのサーバ製品、Microsoft SQL ServerやExchangeなども同様のメジャー/マイナー・リリース・サイクルを導入するようになるだろう。

R2の出荷予定

 Windows Server 2003 R2は現在、テクノロジ・レビューが行われており、年内に出荷が見込まれる。

 Windows Server 2003 R2のインストールには、Windows Server 2003 SP1が必要だ。

 DFSを利用する場合、Active Directory(AD)スキームをadprep.exe(ADプレパレーション・プログラム)でアップデートし、DFSオブジェクトを追加する必要がある。また、DFSに関与するサーバは、Windows Server 2003 R2を実行しなければならない。DFSはすべてのサーバにインストールする必要があり、レプリケーション・グループのすべてのサーバは同じADフォレストに存在しなければならない。

 アンチウイルス・ソフトウェアも、DFSと互換性を持つ製品にアップグレードした方がよい。

 PMCをインストールする場合、サーバはプリント・サーバとして設定しなければならない。End of Article

Side Story
サーバの自動更新をブロックするツールを配布
(アナリスト:Michael Cherry)

 Windows Server 2003 SP1はWindows XP SP2に比べて、アプリケーションの互換性に関する問題は少ないが、MicrosoftはSP1用に自動更新(Auto Update)機能を無効にするブロッキング・ツールキットを提供している。

 自動更新機能は、Windows ServerよりWindows XPで一般的に利用されている。しかし、この機能を用いてWindowsクライアントとサーバの両方にセキュリティ機能の更新やほか機能の更新を自動的にダウンロード、もしくはインストールしている企業もある。Windows Server 2003 SP1には新しい機能や既存機能の更新が含まれているため、重要なアプリケーションに影響を及ぼす可能性がある。そのため、企業によっては2005年7月26日時点で、Microsoft UpdateまたはWindows Updateサービスから入手できるSP1のインストール準備が整っていないところもある。

 ブロッキング・ツールキットにはコマンドライン実行可能ツール、スクリプト、グループ・ポリシー・テンプレートなどが含まれる。自動更新によるサーバへのSP1自動インストールを無効にするには、サーバ上で実行可能ファイルを実行し、スクリプトによって複数のサーバに対するインストールをブロックするか、もしくはグループ・ポリシーのテンプレートを使う。ブロック機能はレジストリ・キーに設定され、それを削除するにはツールを実行するかスクリプトの変更、またはグループ・ポリシーの削除が必要となる。ブロック機能はSP1リリースの1周年に当たる2006年3月30日以降、自動的に失効する。

Windows Server Insider編集部注:Windows Server 2003 SP1のブロッキング・ツールキットの導入方法については、Windows TIPS「SP1ブロッキング・ツールキット」も参照していただきたい。

参考資料

Directions on Microsoft日本語版
本記事は、(株)メディアセレクトが発行するマイクロソフト技術戦略情報誌「Directions on Microsoft日本語版」から、同社の許可を得て内容を転載したものです。『Directions on Microsoft 日本語版』は、同社のWebサイトより定期購読の申し込みができます。
 
 

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