[運用]
Windowsスクリプティング環境比較:PowerShell vs WSH

2.アプリケーションとしての比較

Microsoft MVP
Visual Developer - Scripting
牟田口 大介
2007/04/12

WSHとPowerShellの比較:アプリケーションとして

 それでは、以下、WSHとPowerShellについて比較してみよう。まずはアプリケーションとして概観した場合の差異を見ていく。

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比較ポイント「OS標準機能かどうか?」

WSH OS標準機能である
PowerShell × 現時点でリリースされているOSでは追加インストールが必要

 WSHはWindows XP以降のOS(Windows XP/Windows Server2003/Windows Vista)に標準搭載であるのに対し、PowerShellは現時点でWindows XP/Windows Server2003、Windows Vista版が存在するもののOS標準機能ではなく、別途インストールが必要となる。また、Windows XP/Windows Server 2003では.NET Framework 2.0以上があらかじめインストールされている必要がある。これらがインストールされていない他人のPCでその場でスクリプトを書いて実行するなどという場合はWSHに軍配が上がるだろう。

―――― ◆ ――――

比較ポイント「シェルとしての機能を持つかどうか?」

WSH × シェル機能はない
PowerShell シェルである

 WSHはあくまでスクリプト実行環境なので、ユーザーのコマンド入力を実行するということは基本的にできない。すなわち、(インタラクティブな)シェル機能は存在しない。PowerShellはコマンド・プロンプトの強化版のようなシェル機能を持つ。スクリプトを実行するだけならどちらも使用可能だが、インタラクティブな操作が要求される場合はPowerShellを使うことになるだろう。

―――― ◆ ――――

比較ポイント「コンソールを出さずにスクリプトを実行可能か?」

WSH コンソール画面を出さずに処理が可能
PowerShell × 現時点では不可能

 WSHには実行結果をコンソール画面に出力するcscript.exeというアプリケーションのほかに、コンソールを表示せず実行するwscript.exeというアプリケーションが存在する。それに対し、PowerShellはVer.1.0においてはpowershell.exeというコンソールを表示するシェルのアプリケーションしか存在しないため、コンソールを出さずにスクリプトを実行することができない。デスクトップで作業をしながら、バックグラウンドでスクリプトを実行させたいときはWSHのwscript.exeを使うとよいだろう。

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比較ポイント「セキュリティ対策は?」

WSH セキュリティが緩い → 危険・実行が容易
PowerShell セキュリティが厳しい → 安全・実行が困難

 スクリプト言語は簡易的な言語ではあるが、かなり複雑なことも実行可能だ。そのため、通常の実行ファイル同様、システムに害を与えるようなスクリプトを実行しないようにする、セキュリティ対策が必要である。

 WSHはデフォルトで.vbs、.jsファイルなどのスクリプト・ファイルがスクリプト・ホストに関連付けされているため、エクスプローラ上でダブル・クリックするだけで実行が可能だ。ただしスクリプトに署名を施し、署名があるものだけを実行可能にするなどの運用は可能である(参考:「セキュリティとWindows Script Host―スクリプトに署名する」(MSDNサイト))。

 一方PowerShellは、デフォルトではスクリプト・ファイルである.ps1(末尾は数字の「1」)ファイルに関連付けがされておらず、また、デフォルトではシェルから呼び出すこともできない。Set-ExecutionPolicyコマンドレットを使って、スクリプト実行ポリシーをRemoteSignedなどに設定する必要がある。詳しくは後述のスクリプトの実行例を参照していただきたい。

 セキュリティが緩いWSHは危険性がある半面、スクリプト実行が容易でお手軽であるのに対し、PowerShellはセキュリティが厳しく安全性が高いがスクリプトを実行するにはやや煩雑な手順を要するといえる。

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比較ポイント「使用するスクリプト言語は?」

WSH 複数の言語を使用可能
PowerShell 言語は1つである

 WSHにはデフォルトでVBScript(.vbsファイルに記述する)、JScript(.jsファイルに記述する)が存在し、それぞれ目的や用途に応じて使い分けることができる。また、.wsfファイルというXMLフォーマットのファイルを使用すれば、1つのスクリプトで両方の言語を同時に使うことも可能である。一方、PowerShellの言語は1つである。WSHは複数の言語を覚える場面も出てくるが、それぞれの言語の得意な部分を使うことができるのに対し、PowerShellは単独の言語であるため覚えることが少なくて済む。

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比較ポイント「ヘルプ・ファイルは?」

WSH HTMLヘルプが存在
PowerShell Wordのドキュメントとトピックごとのテキスト・ヘルプ

 WSHには言語やオブジェクトの使い方を示したHTMLヘルプが存在し、ダウンロードすることができる(「Windows Script」(MSDNサイト))。

 PowerShellにはWord(.rtf)ファイルによるユーザー・ガイドが「%windir%\system32\windowspowershell\v1.0\ja(Vistaの場合は%windir%\system32\windowspowershell\v1.0\Documents\ja-JP)」に存在する(ドキュメントへのショートカットは[すべてのプログラム]−[Windows PowerShell 1.0]メニュー内に用意されている)。また、コマンドレットのヘルプ、トピックごとのテキスト・ヘルプが付属しており、Get-Helpコマンドレットを用いて表示させることができる。

ヘルプの使用例
Get-Helpコマンドレットを使うと、各コマンドレットなどに関する詳しい使い方を表示できる。
Get-Helpに続けて、引数を指定すると。その項目に関するヘルプが表示される。
 

 INDEX
  [運用]Windowsスクリプティング環境比較:PowerShell vs WSH
    1.PowerShellのインストールと動作確認
  2.アプリケーションとしての比較
    3.スクリプト機能の比較(1)
    4.スクリプト機能の比較(2)
 
 運用


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