[運用]
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サーバ向けディスクをデフラグするときに考えるべきこと
高速なファイル・アクセス性能が求められるファイル・サーバは、各種サーバの中でもデフラグの必要性が高い用途といえる。しかし、単にデフラグメンタをインストールして実行すればよいというものでもなく、サーバ特有の使われ方や機能に起因する点を事前に考慮しなければならない。
まずデフラグを行うタイミングが問題になる。オンライン・デフラグを行う場合、サーバを稼働させたままでデフラグを行えるので、ユーザーにとっては普段と変わらずファイル・サーバが利用できる。その代わり、デフラグメンタが稼働している間は、再配置を行うためにディスクの読み書きが頻繁に発生するので、ファイルを読み書きする速度は低下することになる。また、タイミングによっては、ユーザーが読み書きしている最中のファイルが再配置の対象になる可能性も考えられる。もちろん、デフラグメンタはこうした場面も想定した設計になっているが、性能低下は避けられない。こうした事情を考慮すると、スケジュール機能を利用して夜間などのファイル・サーバの稼働率が低い状態でデフラグを実行するか、システム・アイドル時に少しずつデフラグを行っておくことで断片化の発生を抑えられる機能を備えた製品を利用するのが望ましい。
一方、前述のオフライン・デフラグを利用すれば、通常はロックがかかっていてデフラグできないシステム・ファイルの最適化が可能になる。しかし、デフラグ作業中はファイル・サーバがまったく利用できなくなるため、業務時間帯にはデフラグを行えないことになる。
このようにオンライン・デフラグとオフライン・デフラグのどちらか一方だけでは、断片化の解消は難しく、平日の夜間にオンライン・デフラグを行うことで断片化をある程度解消しておき、週末にオフライン・デフラグを実行してシステム・ファイルを最適な状態にする、といった運用が必要になってくる。このような運用を行うためには、デフラグメンタ自身が充実したスケジュール化機能を持たなければならない。
なおサーバ特有の機能に起因する注意点としては、シャドウ・コピー機能やRAIDとの関連が挙げられる。Windows Server 2003から加わったボリューム・シャドウ・コピー機能(VSS:Volume Shadow Copy)では、ハードディスク上のファイルについてスナップショットを作成しておき、必要に応じて過去のバージョン(書き換える前など)に戻すことができる。このスナップショットのファイルをデフラグメンタが通常のファイルと同じように断片化解消の対象にした場合、動作に支障を生じないのか、という点が気になる。
マイクロソフトのサポート技術情報によれば、Windows Server 2003では、デフラグを実行すると古いシャドウ・コピーのデータから削除される可能性があるという。これは、シャドウ・コピーが16Kbytesを1ブロックとしてコピー・オン・ライト機構(書き換えが発生した際に、それを検出して、その時点で空き領域を探して割り当てコピーを実行する機構)を実行することに起因する「仕様」と説明されている。この16Kbytesというブロック・サイズは、ファイル・システムのクラスタ・サイズとは異なるため、クラスタ・サイズが16Kbytes未満の場合、デフラグと一般的な書き込みの区別が困難になり、書き換え処理が実行されてしまう。これにより、シャドウ・コピーの対象となるファイルが増えてしまい、結果としてシャドウ・コピーに割り当てたディスク領域の制限サイズに達した場合に、最も古いシャドウ・コピーから順に削除されてしまうことになるということだ。
つまり、この「仕様」によって、クラスタ・サイズが16Kbytes未満に設定されているディスクに対してデフラグを実行すると、シャドウ・コピーで保存されたデータが失われてしまう可能性があるわけだ。このような仕様によるデータ消失を回避するため、サードパーティ製のデフラグメンタには、対象のボリュームにシャドウ・コピーが存在するとデフラグを中止するようなオプションを備えているものもある。
サーバの場合、ハードディスクがRAID構成になっていることも多く、物理ドライブと論理ドライブが一致しないことに起因する障害発生を懸念する声も聞く。ただ、この点は「OSのAPIやファイル・システムを通じて操作している限り、物理的なディスク構成の違いは吸収されているため、デフラグの実行によってディスクに障害が発生する問題はない」(ネットジャパン)ということだ。
またRAID 5ではパリティ・データがディスク上に存在することになるので、デフラグを行う度にディスクの内容が変わったと認識してパリティの再構築が必要となり、結果としてディスクの負荷が高くなる点には注意が必要だ(RAIDでは、例えば64Kbytesごとのブロック単位でパリティを計算したり、アクセスをまとめたりするので、デフラグで1クラスタだけを書き込んだとしても、実際にはブロック全体を読み書きしなければならず、ディスクへの物理的なアクセス数が大幅に増えてしまう可能性がある)。1台のディスクで運用しているファイル・サーバに比べると、RAID 5で構築したファイル・サーバの方がデフラグによる性能低下の影響をより受ける可能性がある。なおパリティの生成などは、通常のファイルの移動などと同様、RAIDコントローラ/RAIDソフトウェアが自動的に行うので、デフラグによってパリティが失われてしまうということはない。
利用可能なサードパーティ製デフラグ製品
サーバにおけるデフラグメンタの利用に際しては、クライアントPC以上に考慮しなければならない点が多い。こうした需要に応えるのが、Windows標準のデフラグメンタにない機能を備えた、サーバ向けの高機能なデフラグメンタ製品である。主な製品を下表に示す。クライアントPC向けの製品もいろいろ存在するが、本稿ではサーバ向けの製品に限定している。
製品名 | 開発元 | 発売元 | 発売日 | 価格 | |
PerfectDisk 2008 Server | Raxco SoftWare | ネットジャパン | 2008年Q3予定 | 1万9740円(予価) | |
Diskeeper 2008 Server Editon | Diskeeper | 相栄電器 | 2007年11月 | 5万6700円 | |
O&O Defrag 10 Server Edition | O&O Software | O&O Software | 2007年5月 | 3万4380円 | |
主なサーバ向けデフラグメンタ | |||||
これらサードパーティ製のデフラグメンタは、指定したタイミングでデフラグを行うだけでなく、常駐して適宜デフラグを行い断片化の進展を抑える機能や、使用頻度が高いファイルを読み出しが速い場所に再配置する機能などを備えている。もちろん、柔軟なスケジュール機能も備える。 |
INDEX | ||
[運用]ファイル・サーバのデフラグメントについて考える | ||
ツールを活用したファイル・サーバの自動デフラグ | ||
1.デフラグの基礎知識 | ||
2.サーバ向けデフラグメンタの選択ポイントとは | ||
3.PerfectDiskによるデフラグの実践(1) | ||
4.PerfectDiskによるデフラグの実践(2) | ||
運用 |
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