第11回 読者調査結果
― 2003 Editionsの登場でOfficeの利用はどう変わる?―

@IT マーケティングサービス担当
小柴豊
2004/01/21

 2003年10月、マイクロソフトは“Microsoft Office 2003 Editions”(パッケージ版)の発売を開始した。オフィス・アプリケーション統合製品として誕生してから10年、新しいOfficeをITエキスパートはどのように評価しているのだろうか。@IT Windows Server Insiderフォーラムが実施した第11回読者調査から、その状況をレポートしよう。

Microsoft Office の利用状況は

 はじめに、Microsoft Office(以下Office)の利用状況から確認しておこう。読者がかかわるネットワークにおける現在のOfficeの利用形態を尋ねたところ、回答者の約8割が「スタンドアロンの事務処理/文書作成ソフト」として利用していることが分かった(図1)。最近のOffice製品では「チームの情報共有/共同作業支援」や「XML/Webサービス対応」といった多機能化が進んでいるが、「個人の生産性向上ツール」を超えてOfficeを活用しているユーザーは、現在のところまだ少数であるようだ。

図1 Microsoft Office の利用状況(N=545 複数回答)

利用しているOffice製品のバージョンは

 ところでOfficeは登場以来多くの版を重ねてきたが、ユーザーはどの程度そのアップグレードを受け入れてきたのだろうか。Officeユーザーに利用している主なバージョンを尋ねたところ、現在は「Office 2000」のシェアが、約7割を占めていることが明らかになった(図2)。Office 2000が店頭発売されたのは、1999年7月。この間、後継のOffice XPが2001年6月に登場したものの、企業内のアップグレードはあまり積極的には進められなかったもようだ。

図2 現在利用しているMicroSoftOfficeの主なバージョン(MicroSoft Office利用者 N=494)

Office 2003 Editions:ユーザーに有効な新機能とは

 ここからは、最新のOffice 2003 Editions(以下 Office 2003)に注目し、読者の関心をチェックしていこう。まずOffice 2003の新機能/改善機能をリストアップしたうえで、読者のネットワークに有効と思われる項目を聞いた結果が次のだ。ご覧のとおり「共有ワークスペースの作成によるチーム・メンバー間の共同作業支援」を筆頭に、「Word/Excel/AccessによるXMLサポート強化」「電子文書を不正なコピー/印刷や転送から保護するInformation Rights Management(IRM)」といった機能の有効性が上位に挙げられている。

図3 Office 2003 Editionsで有効な新機能(N=545 複数回答)

 その有効性が最も期待される「共有ワークスペース」は、Windows Server 2003の無償アドオンソフトである“Windows SharePoint Services(WSS)”とOffice 2003との連携によって実現する機能だ。詳細な解説は関連記事に譲るとして、Office 2003の中でも比較的地味なこの機能(マイクロソフトの「Office Professional Edition 2003 をお勧めする理由トップ10」でも第7位だ)への注目度が、XML対応やIRMといった「看板機能」を上回った点に、ユーザー・ニーズの方向性を解くヒントがありそうだ。

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Office 2003の導入意向は

 次に、読者がかかわるネットワークにおけるOffice 2003の導入意向を尋ねたところ、何らかの用途で同製品を「導入したい」と答えたのは、回答者の半数であった(図4)。もちろんこうした導入意向者が実際に導入するとは限らないが、成熟した市場/発売直後の製品への反応としては、悪くない数字といえそうだ。ではOffice 2003の導入意向者は、今後どのように同製品を利用したいと思っているのだろうか。

図4 Office 2003 Editions の導入意向(N=545)

2003でOfficeの使い方はどう変わる

 前述した現在のOfficeの用途と、Office 2003導入意向者が今後同製品に期待する用途を併記したグラフが次のだ。現在の用途(青棒)と今後の利用意向(黄棒)を比べると、「スタンドアロンの事務処理/文書作成」のポイントが低下する半面、「チーム内コミュニケーション/コラボレーション」ツールとしての利用意向が大きく向上している。これは図3で見た「共有ワークスペース機能」への注目度とも合致する結果であり、情報共有/協働支援によるチーム生産性の向上が、現在の企業ネットワークに強く求められていることが分かる。

図5 MicroSoft Office の用途:現在と今後の意向(複数回答)

 一方、業務アプリケーション面では、「XML Webサービスのクライアント」としてのOfficeの利用意向が33%に上っている。Webサービス・クライアントの形態は、昨今Javaや各種リッチ・クライアントなど多様化が進んでいるが、ユーザーが使い慣れたOfficeプログラムをフロントエンドに採用することで、教育コスト削減/業務生産性向上といった効果を期待できそうだ。

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Office 2003導入の障壁とは

 ではOffice 2003の導入は、今後順調に進むのだろうか。この問いに、現段階では素直に“Yes”といいにくい。なぜなら図4で見たように、回答者全体における4人に1人が「Office 2003を導入したいと思わない」と答えているからだ。では彼らがOffice 2003導入にネガティブなのは、なぜだろうか。その理由を聞いたところ、該当者の7割が「現在使用しているバージョンの機能に満足しているから」と答えている(図6)。

図6 Office 2003 Editionsを導入したくない理由(非導入意向者 N=135 複数回答)

 現在最も使われているOffice 2000の段階で、「個人の生産性向上ツール」としての機能は完成の域に達している(と認識されている)のが、Office 2003導入の最大の障壁であるようだ。これは前バージョンのOffice XPもぶち当たった壁であり、結果的にXPはそれを突き崩すことができなかった。Office 2003がXPと同じ轍を踏まないためには、前述したコラボレーション/Webサービスのような、「チーム/システム全体の生産性を向上させるソリューション」としての存在感を示す必要があるだろう。“The Microsoft Office System”というネーミングは、まさにその決意表明と受け取れるが、まだ抽象的な感は否めない。そのコンセプトを具現化するような製品やサービスがどのように提供されるのか、今後のマイクロソフトの動向に注目していきたい。End of Article

調査概要
調査方法
Windows Server InsiderフォーラムからリンクしたWebアンケート
調査期間
2003年11月17日〜12月12日
有効回答数
545件
 
 読者調査結果


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