特集 インターネット「常時」接続計画 第4回 正引きと逆引きゾーンの定義 2.ドメインのゾーン情報デジタルアドバンテージ |
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d-advantage.jpゾーンの正引きの定義
今回用意するドメインのDNSサーバでは、以下の2つに対するゾーンを定義する(localhostに対するゾーン定義はとりあえず無視しておく)。
- d-advantage.jpの正引き
- d-advantage.jpの逆引き
このうちd-advantage.jpゾーンの正引きの定義では、8つのIPアドレスに対するそれぞれのホスト名を次のように定義しておく。実際に使うホストだけでなく、空きの部分にも適当な名前を付けている。
FQDN名 | IPアドレス | 名前/用途 |
― | 61.206.134.192 | ネットワーク・アドレス |
gw.d-advantage.jp | 61.206.134.193 | SDSLルータ(ゲートウェイ・アドレス) |
ns.d-advantage.jp | 61.206.134.194 | DNSサーバ |
mail.d-advantage.jp | 61.206.134.195 | メール・サーバ |
www.d-advantage.jp | 61.206.134.196 | Webサーバ |
yellow.d-advantage.jp | 61.206.134.197 | ― |
blue.d-advantage.jp | 61.206.134.198 | ― |
― | 61.206.134.199 | (ブロードキャスト・アドレス) |
d-advantage.jpドメインの正引きゾーンにおけるホスト名(FQDN名)とIPアドレスの対応 | ||
8つ(実質は6つ)のIPアドレスに対してこのような名前を付けることにする。名前からIPアドレスを求めるという操作に合わせて、FQDN名、IPアドレスという順番に並べている。実際にホストに使えるIPアドレスは全部で5つ分しかないので、1台のサーバ(1つのIPアドレス)で複数のサーバ機能を兼用してもよい。 |
8つのIPアドレスのうち、一番下と一番上はそれぞれネットワーク・アドレスとブロードキャスト・アドレスに使用されるため、ユーザーが使うことはできない。またSDSLルータ自身がアドレスを1つ消費するので(「ゲートウェイ・アドレス」となる)、実際にユーザーが利用できるIPアドレスは5つだけとなる(さらにそのうちの1つはDNSサーバで使用)。多数のサービスを提供するならば、1台のマシンで複数のサービスを稼動させる必要がある。
d-advantage.jpゾーンの逆引きの定義
逆引きとは、IPアドレスからFQDN名を求める操作のことであるが、DNSの設定では、正引きと逆引きは異なるゾーンとして扱うことになっている。正引きを定義したからといって、自動的に逆引きが行えるようになるわけではなく、正引きと同様にして、逆引きのゾーンを別に定義しなければならない。定義するゾーンとその内部レコードは以下のようになる。
IPアドレス | FQDN名 |
61.206.134.193 | gw.d-advantage.jp |
61.206.134.194 | ns.d-advantage.jp |
61.206.134.195 | mail.d-advantage.jp |
61.206.134.196 | www.d-advantage.jp |
61.206.134.197 | yellow.d-advantage.jp |
61.206.134.198 | blue.d-advantage.jp |
d-advantage.jpドメインの逆引きゾーンの定義(1) | |
逆引きゾーンで定義するIPアドレスと、そのFQDN名。ただしこれを実際にDNSサーバにセットするためのゾーン定義の形にするには、IPアドレスの順番を逆順に並べ替えるなどの処理が必要にある。 |
DNSサーバで逆引きを定義する方法は、正引きの場合とほぼ同様である。逆引き用に設定されたゾーンに、新たにレコードを追加するという形で行う。実はDNSサーバの視点から見ると、正引きでも逆引きでも扱いはほぼ同じである。ユーザーの視点から見ると、IPアドレスは「(4つの)数値をピリオドで区切って並べたもの」で、FQDN名は「文字列をピリオドで区切って並べたもの」と考えられるが、DNSサーバの視点ではいずれも単に「文字列をピリオドで区切って並べたもの」と同等といえる。そしてFQDNの一番左にある文字列がホスト名で、残りの部分がドメイン名であり、右へ行くほどルート・ドメインに近づく。
ドメインの逆引きは、DNSのこのような仕組みを使って次のように実現されている。まずIPアドレスを構成する4つの数値(10進数表記)を逆順に並べ、最後に「.in-addr.arpa」という特別なドメイン名を付加するのである。このドメイン名は、逆引き用に定義された特別なトップレベル・ドメインとセカンドレベル・ドメインであり、ほかの用途には使われないことになっている。例えば「61.206.134.193」ならば、まず「193.134.206.61」というふうに逆順に並べ替え、次に逆引き用の特別なトップレベル・ドメインとセカンドレベルを付加して、「193.134.206.61.in-addr.arpa」というFQDN名にする。これは、「134.206.61.in-addr.arpa」ドメインにある、「193」という名前のホストという意味を持つ。
このような事情を考慮して、先ほどの表のデータをDNSのレコードの形に書き換えてみよう。
逆引き用の定義 | 定義するFQDN名 |
193.134.206.61.in-addr.arpa | gw.d-advantage.jp |
194.134.206.61.in-addr.arpa | ns.d-advantage.jp |
195.134.206.61.in-addr.arpa | mail.d-advantage.jp |
196.134.206.61.in-addr.arpa | www.d-advantage.jp |
197.134.206.61.in-addr.arpa | yellow.d-advantage.jp |
198.134.206.61.in-addr.arpa | blue.d-advantage.jp |
d-advantage.jpドメインの逆引きゾーンの定義(2) | |
DNSのゾーン定義に形に書き直した逆引き用のDNSレコードの定義。「134.206.61.in-addr.arpa」というドメインに、それぞれ「193」とか「194」などという名称をもつレコードを定義する。だが実際にはCIDRを考慮していないので、これでは使えない。 |
これでd-advantage.jpに対する逆引きができるようになるかというと、実はまだ不完全である。今回の例に限らず、現在ではCIDR(Classless Inter-Domain Routing、「サイダー」と読む)というIPアドレスの割り当て方法が一般的に行われている。これはプロバイダから割り当てるIPアドレスを8bit単位とか16bit単位ではなく、任意のbit幅で分割して割り当てる方法である。今回のように8つのIPアドレスを割り当てる場合は「61.206.134.192/29」というふうに表記して、上位29bitが「61.206.134.192」で固定、下位3bitはユーザーが自由に設定可能、ということを表す。
CIDRを利用することにより、より効率的なアドレス割り当てができるとともに、ルーティングに必要な経路情報を集約して(連続するネットワーク・アドレスをまとめて、より大きなネットワーク・アドレスとして扱うこと)、ルーティングの負担を減らすことができるというメリットがある。
CIDRによる割り当てが行われている状況では、先の逆引きの定義は正しく動作しないことが分かるだろう。「134.206.61.in-addr.arpa」というドメインには、全部で256個のIPアドレスがあるはずだが、先の表ではそのうちの8つ分しか定義していないからだ。ほかのIPアドレス、例えば「61.206.134.1」に対する逆引きレコードは「1.134.206.61.in-addr.arpa」となるが、このレコードを定義するのはいったい誰であろうか? 多分このIPアドレスを持つホストは、ほかのユーザーの所に割り当てられているはずだが、そのようなホストの分まで、DNSレコードを定義しなければならないのだろうか? 結論からいうと、そのような必要はなく、各ユーザーは自分のドメインの分だけの逆引きを定義すればよい。
CIDRのための逆引き設定
CIDR環境における逆引き問題を解決するにはいくつかの方法がある。どの方法を使っているかはプロバイダにもよるので、常にこのようにすればよいとはいえない。詳細は契約しているプロバイダに問い合わせていただきたい。以下では東京めたりっくにおける逆引きの設定方法を示しておく。
東京めたりっくの場合は、先の逆引き用ドメインの下に、さらに「Annn」というサブドメインを定義して、そのサブドメインの管理をユーザー側に持たせることによって解決している。ここで「nnn」は、各ユーザーに割り当てられたネットワーク・アドレス(IPアドレスの最下位3bitもしくは4bitが0のアドレス)を表す3桁の数字である(詳細は「よくあるご質問――DNSの逆引きの設定方法について(Biz・SOHO)」参照)。例えば「61.206.134.192/29」というIPアドレスならば、「A192.134.206.61.in-addr.arpa」というサブドメインを定義し、ユーザー側ではこのサブドメイン内だけを管理すればよい。「134.206.61.in-addr.arpa」はプロバイダ側にあり、その中に「A000.134.206.61.in-addr.arpa」や「A008.134.206.61.in-addr.arpa」、……というサブドメインが定義されていて、ユーザーごとに割り当てられているのである。そして、例えば「193.134.206.61.in-addr.arpa」というレコードは、「193.A192.134.206.61.in-addr.arpa」を指すように別名(CNAME、canonical nameの略)が定義されている。これにより、最終的に「61.206.134.193」が「193.A192.134.206.61.in-addr.arpa」というレコードへの参照に変換され、そこで定義されている値(gw.d-advantage.jp)が返されることになる。
「61.206.134.193」の逆引きアドレスを求める
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IPアドレスを逆順に並べる → 193.134.206.61
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↓
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「in-addr.arpa」を付加してFQDN名にする → 193.134.206.61.in-addr.arpa
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↓
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「134.206.61.in-addr.arpa」ドメインを定義しているDNSサーバ(これはプロバイダが管理しているDNSサーバ)を使って「193」のレコードを検索する → 「193.A192.134.206.61.in-addr.arpa」の別名(CNAME)であると記録されている
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↓
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「A192.134.206.61.in-addr.arpa」ドメインを定義しているDNSサーバ(これはユーザーが管理しているサブドメインのDNSサーバ)を使って「193」のレコードを検索する → gw.d-advantage.jp が得られる
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↓
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最終的に「gw.d-advantage.jp」が得られる
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以上のような事情を考慮して、先の逆引き用のドメインの定義を修正してみると、DNSサーバに設定すべきレコードは次のようになる。
逆引き用の定義 | 定義するFQDN名 |
193.A192.134.206.61.in-addr.arpa | gw.d-advantage.jp |
194.A192.134.206.61.in-addr.arpa | ns.d-advantage.jp |
195.A192.134.206.61.in-addr.arpa | mail.d-advantage.jp |
196.A192.134.206.61.in-addr.arpa | www.d-advantage.jp |
197.A192.134.206.61.in-addr.arpa | yellow.d-advantage.jp |
198.A192.134.206.61.in-addr.arpa | blue.d-advantage.jp |
d-advantage.jpドメインの逆引きゾーンの定義(最終版) | |
CIDR環境向けの逆引きゾーン「A192.134.206.61.in-addr.arpa」の定義。「A192」というサブドメインが定義されているので、各ユーザーはこのサブドメインだけを管理すればよい。この逆引きの設定方法は東京めたりっくの場合である(詳細は「よくあるご質問――DNSの逆引きの設定方法について(Biz・SOHO)」参照)。プロバイダごとに異なる方法を使っているので、実際の定義方法はそれぞれのプロバイダの指示に従う必要がある。 |
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次回はDNSサーバの準備(セキュリティ設定)について解説する。
関連リンク | |
「Biz1600サービス」に関するページ | |
「meta+ DNSサービス」に関するページ | |
「よくあるご質問――DNSの逆引きの設定方法について(Biz・SOHO)」に関するページ | |
JPNIC Whois Gateway |
INDEX | ||
[特集]インターネット「常時」接続計画 | ||
第4回 正引きと逆引きゾーンの定義 | ||
1.ドメインの管理情報 | ||
2.ドメインのゾーン情報 | ||
インターネット「常時」接続計画 |
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