技術解説
Office 2003で変わる業務アプリケーション

4.Office 2003 業務アプリケーションの展開

一色 政彦
2003/11/27

 Officeソリューションの展開は、自動ダウンロードと自動アップデート機能により簡略化できるが、ここでは、そのソリューション展開の事前の注意事項と展開パターンについて解説しよう。

Office 2003のインストール時の注意事項

 Office 2003業務アプリケーションを展開する前に、各クライアントにExcel 2003/Word 2003がインストールされていなければならない。そのインストールの際、Excel 2003/Word 2003のインストール・オプションの設定で、「.NET プログラミング サポート」をチェックしておく必要がある(完全インストールの場合は不要)。このオプションを選択すると、.NETアセンブリからOfficeのCOMオブジェクトに接続するためのモジュール「プライマリ相互運用アセンブリ(以降、PIA:Primary Interop Assembly)」がインストールされる。

 PIAは、.NET Frameworkの.NETアセンブリを管理する仕組みであるグローバル・アセンブリ・キャッシュ(以降、GAC:Global Assembly Cache)にインストールされる。GACがないとPIAがインストールできないので、Office 2003をインストールする前に、.NET Framework 1.1をインストールしておく必要がある。.NET FrameworkのインストールはWindows Updateから行う以外にもいくつか方法がある。詳しくは、マイクロソフトの「MSDN:.NET Framework の再配布」を参照していただきたい。

ソリューションの展開モデル

 それでは、ソリューション展開のパターンについて見てみよう。Officeソリューションでは、Officeドキュメント(ExcelワークブックまたはWordドキュメント)と、.NETアセンブリの2つのファイルが存在する、というのは前述した。Officeソリューションを展開する方法としては、この2つのファイルの配置場所がネットワークかローカルかによって異なってくる。2つのファイルそれぞれにおいて、2種類の場所(ネットワークかローカルか)の可能性があるので、配置パターンの組み合わせは2ファイル×2種類の場所の計4パターンになる。ただし、フロントエンドのOfficeドキュメントがネットワーク上にあって、Officeアドインの.NETアセンブリがローカルにあるというパターンはあまり考えられないので除外した。残りの3つのパターンのメリットとデメリットを次の表にまとめた。

構成タイプ Officeドキュメント .NETアセンブリ メリット デメリット
ローカル&ネットワーク ローカル ネットワーク共有フォルダ(UNCパス)またはWebサーバ(HTTP/HTTPSアドレス) ●.NETアセンブリの自動アップデートができる
●Webサーバの場合は、1度、.NETアセンブリがダウンロードされれば、次回からはオフラインでも実行できる
●Officeドキュメントをユーザーがカスタマイズして、独自のOfficeドキュメントを作成できる
●Officeドキュメントを全ユーザーに配布しなければならない
●ネットワーク共有フォルダの場合、オフラインで実行できない
●Webサーバの場合、最低1回はネットワークに接続した状態でOfficeドキュメントを開かないと、オフラインで実行できない
ローカル&ローカル ローカル ローカル ●ネットワーク共有フォルダが不要
●常にオフラインで実行できる
●Officeドキュメントと.NETアセンブリの両方を全ユーザーに配布しなければならない
●Officeドキュメントを置くパス位置を変更すると、相対パスの位置関係でアセンブリも一緒に移動しなければならない
ネットワーク&ネットワーク ネットワーク共有フォルダ ネットワーク共有フォルダ ●.NETアセンブリの自動アップデートができる
●Officeドキュメントを共有して共同作業(コラボレーション)できる
●オフラインで実行できない
●Officeドキュメントを編集できるようにするために、ネットワーク上のフォルダに書き込み許可の設定をしなければならず、セキュリティ上の問題がある
Officeソリューションを展開する方法

 なお、表中の「ローカル&ネットワーク(Webサーバ)」で、オフライン実行するには、最低1回は、ネットワークから.NETアセンブリを(ローカルのGACへ)ダウンロードしておく必要がある。いったん、ダウンロードすれば、次からはGACにあるローカルのファイルが使われるので、オフラインで実行できるようになる。

 配置パターンの「ローカル&ローカル」は、.NETアセンブリを更新するたびにクライアントに配布する必要があり、展開が大変だが、「ローカル&ネットワーク」や「ネットワーク&ネットワーク」は、.NETアセンブリがサーバ上にあるので、展開が容易だ。しかも、「ローカル&ネットワーク」は、ローカルのOfficeドキュメントをユーザーが自由にカスタマイズできる。Officeドキュメントを共有して共同で作業を行う場合は、「ネットワーク&ネットワーク」の方がお勧めだが、Officeドキュメントを編集できるようにするために、ネットワーク上のフォルダに書き込み許可の設定をしなければならないので、セキュリティ上の問題がある。例えば、このフォルダに、すべてのファイルを削除するような悪質なコード(ウイルス)が置かれてしまうとその被害を受ける可能性がある。なお、この問題を回避するには、フォルダ全体ではなく、Officeドキュメントと.NETアセンブリの1つずつのファイルに、CASのセキュリティ設定を行う(詳細は割愛)。

 よって、展開とセキュリティの観点から考えて、一番お勧めできるのは、「ローカル&ネットワーク」タイプの構成である。この「ローカル&ネットワーク」タイプの展開の手順について具体的に見ていこう。

ソリューションの展開手順

 「ローカル&ネットワーク」タイプのOffice 2003業務アプリケーションの展開は、次の手順で行う。

  1. NET アセンブリをネットワーク上の共有フォルダに配置する。

  2. Officeドキュメント(ExcelワークブックまたはWordドキュメント)をユーザーに配布する。配布方法としては、Excelワークブックを直接メールに添付するか、またはネットワーク上に配置してダウンロードしてもらうようにするとよいだろう。

  3. ユーザーごとにCASの設定を行う。CASの設定はmsiインストール・パッケージを作ることで簡略化できる(インストーラを起動するだけで、複雑なCAS設定を実施することができる)。詳しくは、マイクロソフトの「MSDN:セキュリティ ポリシーの配置」を参照していただきたい。

 なお、ソリューションをアップデートする場合は、共有フォルダの.NETアセンブリを上書きするだけで、クライアント側の.NETアセンブリが自動的に更新される。

 以上のように、Officeアプリケーションをフロントエンドにすることで、使い慣れたOfficeアプリケーションのユーザー・インターフェイスを業務アプリケーションで利用することができる。さらに、.NET Frameworkテクノロジの自動ダウンロードと自動アップデート機能によってソリューションの展開が容易になり、セキュリティも確保できるようになる。Office 2003を業務アプリケーションのフロントエンドにすることは、ユーザー・インターフェイスに制約の多いWebアプリケーションの代替として、有力な選択肢の1つになり得るだろう。End of Article

 

 INDEX
  [技術解説]Office 2003で変わる業務アプリケーション
    1.業務アプリケーションとOffice 2003ソリューション
    2.Office 2003をフロントエンドにした業務アプリケーション
    3..NET Frameworkテクノロジの利用
  4.Office 2003 業務アプリケーションの展開
 
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