技術解説

Office 2003のXMLスキーマ・サポートがもたらすインパクト
―― スマート・クライアント・ソリューション構築がより容易に ――

1.スマート・クライアント向けプラットフォームの本命

Greg DeMichillie
2003/10/03
Copyright (C) 2003, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.

 
本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌「Directions on Microsoft日本語版」 2003年9月15日号 p.35の「Office 2003標準のXML仕様を解析、スマート・クライアント普及を後押し」を、許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。

 Office 2003では、カスタム定義のXMLスキーマがサポートされるため、ユーザーにとってはスマート・クライアント・ソリューションの構築が容易になる。ただし、企業はXMLスキーマを開発、導入し、サーバ・システムを更新する必要があるだろう。

 Office 2003では、ユーザーはカスタム定義のフォーマット、つまりスキーマを使ってXMLデータを扱えるため、Microsoftが推奨する「スマート・クライアント・アーキテクチャ」に従ったソリューションの構築が容易になる。このアーキテクチャは、より優れたユーザー・インターフェースの可能性、ローカルな処理能力とストレージの活用、およびオフライン作業中にもネットワーク接続されたデータにアクセスできる点などがメリットとしてうたわれているものだ。ただし、Office 2003が提供するオフライン機能をサポートするには、企業は既存のサーバ・アプリケーションを更新する必要があるだろう。また、XMLデータをフルに活用するためには、Office 2003向けのカスタム・スキーマの開発と導入にも時間を割く必要がある。さらに、Software Assuranceなどのプログラムを通じたアップグレードの権利を有していない企業にとっては、ライセンス・コストが大きな障害になるかもしれない。

スマート・クライアント向けプラットフォームの本命

 Microsoftは何年か前から、企業に対して、Webベース・クライアントの代替としてスマート・クライアント・アーキテクチャを採用するよう奨励している。現在、多くの企業はカスタマイズしたOfficeソリューションを構築しているが、そうしたソリューションにスマート・クライアント・アーキテクチャを使っている企業はほとんどない。その最大の理由は、Office自体のXMLサポートが、そうしたアーキテクチャの実装に必要となるXMLサポートのレベルに達していない点にある。

スマート・クライアントの要素

 スマート・クライアント・アーキテクチャは一般に、ローカルな処理能力とストレージを備えるクライアント・コンポーネントで構成され(例えば、PCのほか、Pocket PCなどのインテリジェント・デバイス)、そのクライアント・コンポーネントがサーバ・ベースのバックエンド・システムとデータをやり取りする際には、データ交換フォーマットとしてXMLを利用する。

●ローカルな処理能力
 ローカルな処理能力により、ユーザーはソーティング、統計処理、図表の作成など、データに関する特別な解析を実行できる。ローカルな処理能力がなければ、データの解析は、サーバが提供する定義済みのクエリにアクセスするなど、あらかじめ定義された操作に制限される。

●ローカルなストレージ
 ローカルでデータにアクセスできるユーザーは、ネットワークから切断されている間にも、インポートしたデータを使って作業を続けられる。会議や出張などが多いビジネスマンにとっては、オフライン機能が役立つ。

●XMLデータ
 スマート・クライアント・アーキテクチャは別のデータ表現を使って構築することもできるが、Microsoftなどのベンダー各社がサーバ製品にXML機能を追加する動きを進めている現状や、Webサービスも含めた各種の業界標準でXMLが主要な役割を果たしていることからすれば、XMLを選択することを推奨する。

 企業はOfficeとXMLを合わせて用いることで、BizTalkなどのWebサービス・ベースの新しいアプリケーションだけでなく、SQL Serverなどの従来型のサーバ・アプリケーションも含め、各種のデータ・ソースに接続するスマート・クライアント・アプリケーションを構築できる。そして、ユーザーも使い慣れたツールを使ってデータを操作できる。

カスタム・スキーマでOfficeをスマート・クライアントに

 スマート・クライアント・アプリケーションにとってOffice 2003の最も重要な新機能は、カスタム定義のXMLデータ・フォーマット、つまりスキーマをサポートすることだ(XMLスキーマの概略とその重要性については、コラム「スキーマの役割とは」を参照)。

 Office XPでも、Microsoftが定義したスキーマ(それぞれWord MLとXML Spreadsheet)を使って、Word文書とExcelスプレッドシートをXMLとして保存できるが、Office XPはカスタム・スキーマはサポートしていない。そのため、Microsoft以外のスキーマに従ったデータをインポートしたりエクスポートしたりすることは、たとえ高度なパワー・ユーザーであっても無理な話だった。

 今後はWord、Excel、およびInfoPath(Microsoft Office Systemに含まれる新しいアプリケーション)でカスタム定義のXMLスキーマがサポートされるため、ユーザーは使用されているスキーマにかかわらず、XMLデータと直接やり取りできる。開発者がトランスフォームを作成しなくても、データはOfficeアプリケーションにインポートでき、Office文書はカスタム定義のスキーマを使ってXMLとして保存できるため、Officeの文書フォーマットのスキーマが分からなくても、必要なデータをほかのアプリケーションで読み込める。

 Excel、InfoPath、およびWordはそれぞれカスタム・スキーマをサポートし、主に以下の3つのシナリオを可能にする。データ分析、電子フォームの作成と利用、ユーザーの文書に保存されたデータを各種のアプリケーションで利用できるようにすることの3つだ。

 

 INDEX
  [技術解説]Office 2003のXMLスキーマ・サポートがもたらすインパクト
  1.スマート・クライアント向けプラットフォームの本命
         コラム:スキーマの役割とは
    2.Excel/InfoPathとXML
         コラム:オフラインのアプリケーション・サポートはなぜ難しいか
    3.Wordデータをビジネス・プロセスに認識させる
         コラム:Office向けの開発ツール
 
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