技術解説 SQL Server 2005のエンタープライズ機能―― エンタープライズDB市場での競争力強化を狙う新機能の実際 ―― 1.一新された管理ツール Chris Alliegro2006/04/07 Copyright (C) 2005, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc. |
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本記事は、月刊誌『Directions on Microsoft日本語版』2006年1月号p.14の「SQL Server 2005のエンタープライズ機能を徹底検証」を、許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。 |
SQL Server 2005に加えられた新しい管理機能と、それに伴う管理性の向上は、データベースの効率的な管理を可能にする。また、ハイエンド・エディションに組み込まれる新開発の高可用性機能とレプリケーション機能の強化によって、OracleやIBMといったエンタープライズ・データベースのライバルとのギャップはかなり狭まるだろう。データベース市場でSQL Serverは数量ベースでリードしているものの、エンタープライズ分野の収益シェアや高可用性機能などの面においては、Oracleなどの後塵を拝している。また、SQL Server 2005の最も期待される高可用性機能の1つ、データベース・ミラーリングは、2005年11月の初期リリースではサポートされない(編集部注)。
編集部注:ミラーリング機能は、まもなく公開されるSQL Server 2005 Service Pack 1からサポートされる予定だ。現時点では、開発途中のコミュニティ・プレビュー版[CTP版]として試用が可能である。 ・SQL Server 2005 SP1 CTPのダウンロード・ページ |
管理性を向上させる新ツールセット
SQL Server 2005には管理性を向上させるとともに、データベース管理の日常的なタスクやアクティビティを円滑にする拡張機能がいくつか用意されている。それらの拡張機能はSQL Serverデータベース管理者に大きなメリットをもたらす一方、中小企業向けデータベース市場でOracleやIBMなどの競合他社に対するSQL Serverのメイン・アドバンテージを際立たせるものになる。すなわち、使い勝手のよさだ。MicrosoftはSQL Serverの管理機能を強化し続ける限り、Oracleのダウンマーケットの動きを阻止することができるだろう。
Management Studioでツールを統合
SQL Server 2005にはSQL Server Management Studioと呼ばれる統合管理スイートが導入される。Management Studioは、従来のバージョンにスタンドアロンで提供されていた主要なツール類を包含する。例えば次のようなツールが含まれる。
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Enterprise Manager:SQL Server 2000の中核的管理ツール。データベース、ユーザー、パーミッションの作成および管理、データベースのバックアップやリストアなどの保守作業の設定、実行に用いられる。
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クエリ・アナライザ:SQL Serverのネイティブ・スクリプト言語であるTransact-SQL(T-SQL)で記述されたスクリプトを構築、テスト、実行するためのグラフィカル・ツール。
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そのほかの管理ツール:Analysis Services(SQL Serverのオンライン分析処理エンジン)やNotification Services(データベースのキー・イベントや条件をユーザーに通知するアプリケーションを作成するためのユーティリティ)など、補完的なSQL Serverサービスを管理する。
Management Studioによる主要な改善点には、次のようなものが含まれる。
■使い勝手と管理効率性の向上
Management Studioは、より整然と体系化されたユーザー・インターフェイスを持ち、異なるツールやインターフェイスを使い分ける不便さを解消する。例えばManagement Studioは、複数のウィンドウを体系化してナビゲートできるタブ・インターフェイスを搭載し、それぞれのウィンドウで異なるデータベース・クエリやクエリ結果を表示することが可能だ(Enterprise Managerやクエリ・アナライザも複数のウィンドウを表示できるが、それらを体系化することはできない)。Management Studioはまた、複雑なマルチ・データベース、マルチ・サーバ環境に対する管理性も向上している。例えば管理者や開発者は、1つのクエリ・ウィンドウからデータベース接続を変更して、別のデータベースあるいはデータベース・サーバへのクエリを実行することが簡単にできる。SQL Serverのこれまでのバージョンでは、こうしたオペレーションを行う場合、データベースごとに複数のクエリ・ウィンドウを開く必要があった。
■クエリ言語の完全サポート
Management Studioには、SQL Server管理者や開発者が利用する複数の言語をサポートしたクエリ・エディタが含まれる。例えば、T-SQL、MDX言語(Analysis Servicesデータソースやキューブのクエリに用いる)、そしてDMX言語(Analysis Servicesデータ・マイニング・モデルを扱うときに用いる)でスクリプトやクエリを作成できる。SQL Server 2000のクエリ・アナライザは、T-SQLしかサポートしていなかった。Management Studioはまた、オフライン開発をサポートしているため、開発者や管理者は実際にデータベース接続がなくてもスクリプトやクエリを記述することが可能だ。
■洗練された体系化
Management Studioには、データベース管理や保守タスクに関連するスクリプト(および接続などの詳細)を体系化したり、管理するためのプロジェクト構造が導入されたりする。Management Studioは、MMC技術をベースとせず、Visual Studioシェル内にホストされ、同製品のプロジェクト管理機能を継承する。例えば管理者はバックアップ処理など、データベース保守タスクに関するすべてのスクリプトと接続情報を1つのグループにまとめ、Visual Studioに組み込まれたソース・コード・コントロールの下で管理することが可能だ。管理責任の範囲がしばしば複数のデータベースやデータベース・サーバにまたがる大企業の管理者にとって、これらの機能は非常に興味深いものだろう。
■Express Edition
SQL Server 2005においてMicrosoft Desktop Engine(MSDE)をリプレイスするExpress Editionには、Management Studioの省機能版が用意される。経験の浅い開発者やデータベース管理の初心者、テストあるいはシンプルで小規模なプロダクション・データベースなどに最適だ。この新しい管理ユーティリティは、MSDEのコマンドライン管理ツールを補完するものとなる。ただし、Express用の管理ツールは当初のリリースには含まれず、2006年上半期に別個に出荷される予定だ。
INDEX | ||
[技術解説] SQL Server 2005のエンタープライズ機能 | ||
1.一新された管理ツール | ||
2.安全なバックアップと優れた制御 | ||
コラム:データベース・ミラーリングとフェイルオーバー・クラスタリングの違い | ||
技術解説 |
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