検証 1.営業支援システムを作る野畠英明ヒューレット・パッカード・ソリューションデリバリ(株) 2003/06/04 |
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前編では、Office XP Web Service Toolkitを組み合わせることで、Microsoft Office XP(以下Office)をWebサービス・クライアントとしてどのように活用できるか、技術的な側面から紹介し、簡単なサンプル・プログラムを作成した。今回の後編では、営業支援システムを題材にして、より具体的な場面を想定して、Webサービス・クライアントとしてのOfficeをどのように活用できるのかを見てみよう。
具体的には、架空のプリンタ・メーカーの営業部で使われる、法人向けの案件受注支援システムを想定する。最初にこの業務システムの背景と概要を説明し、続いてシステムがどのように使われるか、仮想的なシナリオに沿ってシステムの利用例を見ていく。その後、このシナリオを試せるよう実装したサンプルの設計、およびセットアップの方法を解説し、最後に全体を総括する。
細かい技術解説抜きで概略を把握されたい読者は、途中のサンプルの解説を飛ばして、営業支援のシナリオと最後のまとめを読んでいただきたい。
営業支援システムの概要
今回想定する営業支援システムについて、その概要をまとめておこう。
このプリンタ・メーカーには、顧客情報管理、案件管理といった基幹システムがあり、受注した案件の経理処理を行ってきた。しかし、このシステムには組織営業で必要な情報共有の仕組みがなく、経理処理上で必要な基幹システムへの入力とともに、部署ごとのローカル・ルールで顧客・案件の管理を強いられていた。だが厳しい経営環境の中、経営陣はこのままでは販売力の向上は図れないと判断し、営業支援システムの構築を決断した。
この営業支援システムは、営業部門の組織力強化によって販売力を向上させること、また顧客情報を営業部門だけでなく全社的に活用することによって、顧客満足度を向上させることを目的としている。その一方で、開発コストを低く抑えることも必須であった。その課題に取り組むべく、Webサービスの考え方を取り入れ、従来からある顧客情報管理と案件管理の基幹システムを過去の業務システム構築で実績のあるWebLogic ServerによりWebサービス化し、使い慣れたOfficeをWebサービス・クライアントとして利用することにした。Webアプリケーションとして構築することも検討したが、既存の部署での業務との親和性(ローカルでの管理にExcelを使っている部署が多かった)や拡張性、エンド・ユーザーによるカスタマイズの容易さを考慮した結果、今回の構成となった。
さらに、営業支援という観点で次のような機能強化を図った。
- 情報共有のためのヒアリング項目の記録・参照機能
- 案件ステータス管理機能
「ヒアリング項目」というのは、問題の背景や顧客の課題、想定解決策といったもので、顧客から案件の受注を獲得する過程で聞き出す必要のある項目である。また「案件ステータス」は、ヒアリング中か、提案中か、それとも受注済なのかといった案件の現在の状態を示す。
このシステムの構成図を次に示す(点線内が営業支援システム用に新規構築した部分を表している)。
今回作成する営業支援システムの構成 |
今回の営業支援システムでは、すでに稼働している各種基幹システムとWebLogic Serverを連携させ、WebLogic ServerのWebサービス対応機能を利用して、クライアント側となるExcelからWebサービス経由でデータをやり取りできるようにする。図の点線部分が、サーバ側として今回構築したシステムの部分を表している。 |
説明を簡単にするために単純化して図示したが、WebLogic ServerによってWebサービスを提供するPCサーバは、実際には複数台のサーバを用いてクラスタリング構成とすることも可能だ。これにより高い可用性や拡張性を持ったシステムを構築することができる。また図に示したとおり、クライアントとなるWindows PCには、SOAP Toolkitを追加インストールしてある。図中の各システムは、下記のような機能を担当している。
システム | コンポーネント/Webサービス | 機能/目的 |
基幹システム | 顧客情報管理 | 会社名、担当者名、電話番号など顧客の基本的な属性を管理する |
案件管理 | 顧客、案件名、案件番号、受注金額を管理し、経理処理を行う | |
人事管理 | 組織と人に関する情報を保持し、部署の長とその部下の関係や権限を管理する | |
Webサービス | 顧客情報管理Webサービス | 顧客情報管理システムの参照・更新 |
案件管理Webサービス | 案件管理システムの参照・更新、ヒアリング項目(背景、課題、イシュー、上司のコメントなど)の管理、案件ステータス管理 | |
人事管理Webサービス | 人事管理システムの参照、認証・権限管理 | |
Excel |
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Webサービスの呼び出し(顧客情報管理、案件管理、人事管理)、ユーザー・インターフェイス(表示・入力画面、グラフ)、部署目標値の管理 |
このシステムの開発は、Webサービス部分をIT部門が担当し、クライアントであるExcel側の開発はエンド・ユーザーである営業部門が担当した。営業部門では、営業部門全体で共通するクライアントのひな型(Webサービスを利用するためのひな型)と業務プロセスに沿って解説したドキュメントを作成し、部門のWebサーバ上に配置している。そして、各部署では必要なカスタマイズを施して利用することとした(より効果的にデータを分析するためにグラフの表示方法を工夫する、Webサービス経由で得られた情報とローカルに管理する情報を統合するなど)。そして営業部門では、部署ごとにカスタマイズされたものから定期的にベストプラクティスを抽出し、ひな型に反映することで、販売力の強化を促進している。
INDEX | ||
新世代リッチ・クライアントの可能性を探る(前編) | ||
1.本稿の目的と想定する技術・環境 | ||
2.簡単なサンプルの作成と実行 | ||
新世代リッチ・クライアントの可能性を探る(後編) | ||
1.営業支援システムを作る | ||
2.営業支援システムの利用シナリオ(1) | ||
3.営業支援システムの利用シナリオ(2) | ||
4.サンプル実装の設計 | ||
検証 |
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