スケーラブルフォント (scalable font)
文字のイメージを、ビットマップではなく、ベクトル情報として保持しておき、これを表示(印字)する時点で、出力先デバイスの解像度に応じてビットマップに展開する方式のフォント。ビットマップの生成は表示処理時点で行われるので、文字を拡大・縮小表示した場合でも、ビットマップフォントのようにジャギー(ギザギザ)が現れたり、ストロークが失われたりせずに、出力デバイスに応じた最適な表示がなされる。
ビットマップフォントでは、あらかじめ文字のイメージをビットマップとして保持しておき、必要ならこれをbitbltで拡大・縮小してデバイスに表示(印字)する。ビットマップフォントの文字表示では、ベクトルデータ→ビットマップという変換処理は不要で、かつ拡大・縮小も行わないなら、高速に文字表示が可能という長所がある。
しかしビットマップフォントは、特定の解像度を前提としたビットイメージを直接保持しているので、拡大・縮小表示を行うと、ジャギーが現れたり、ストロークが消失したりするという欠点がある。文字表示のオーバーヘッドは少々大きいが、こうしたビットマップフォントの問題を解決し、デバイスの解像度に依存しない(デバイスに最適な)表示を可能にするのがスケーラブルフォントである。コンピュータの処理性能があまり高くなかった時代には、DTPアプリケーションなど、表示品質や印字品質を重視する一部のアプリケーションだけで利用されていたが、コンピュータの性能が向上した現在では、DTPアプリケーションだけでなく、幅広くスケーラブルフォントが利用されるようになった。
スケーラブルフォントには、大きく分けて、アウトラインフォントとストロークフォントの2種類がある。
アウトラインフォントは、文字の輪郭線の情報をベクトルデータとして保持する形式であり、必要なサイズに拡大・縮小後、輪郭の内部を塗りつぶすことによって文字を描画する。現在使われているスケーラブルフォントは、ほとんどすべてがこの形式である。
ストロークフォントは、文字を構成する線のうち、中心線の情報だけをベクトルデータとして保持する形式である。書体の違いによる、文字を構成する線の太さなどの情報は含まず、細い線によってのみ描画される文字となる。ペンを使ったプロッタなどで利用されている文字フォントの形式である。
マイクロソフトは、Windows 3.1の発表と同時に、スケーラブルフォント(アウトラインフォント)であるTrueTypeを標準で実装した。その後TrueTypeはApple社のMacintoshにも標準で搭載されるようになり、広く利用されている。またPostScriptを開発したAdobe Systems社は、PSフォント(PostScript Font)と呼ばれる独自のスケーラブルフォントテクノロジを開発した。特に日本では、写植機用のフォントベンダであるモリサワのフォントがPSフォントとして提供されたため、プロフェッショナルDTP分野では、現在でもほとんどの場合PSフォントが利用されている。
ビットマップフォントとアウトラインフォント 縦横200ピクセルに拡大したビットマップフォント(左)とアウトラインフォント(右)。ビットマップフォントはもともと縦横16ピクセル程度の解像度しかないため、拡大してもきれいにならない。アウトラインフォントはフォントの輪郭をベクトル・データとして持っているため、拡大してもきれいに表示される。 |
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