自社に利益をもたらしているのは、どの得意先かを知るには?
2006/8/22
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得意先別に利益を把握しようとする場合、売上はもちろんですが、販売費・一般管理費や製造間接費を得意先ごとに配賦する必要があります。しかし、これらの経費は予測や見積もりによるところが多く、精度を高めるためには相当のコスト負担が必要です。
また、経費の固変分解をする場合においても、固定費と変動費を厳密に区分することは難しく、さらにこれを得意先別に行うとなると管理指標として使用できるかといえば疑問が生じることも多いものです。
そこで時系列データを使い、得意先別売上高と経常利益で回帰分析を行うことにより、相関関係を検討材料として利用することが有効です。Excelの「分析ツール」を使った方法を見ていきましょう。
分析手順
今回はサンプルとして、以下のようなデータを用意しました。
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[ステップ1]
このデータをExcelに取り込み、以下の画面1のようなセル配置になっているとします。
画面1 Excelにサンプルデータを取り込む |
[ツール]―[分析ツール]から[回帰分析]を選択します。表示された回帰分析ダイアログボックスで、「入力Y範囲」に経常損益の部分(セルG2〜G8)、「入力X範囲」にA〜D社の各月の売上(セルB2〜E8)を範囲指定します(画面2)。
※ | [ツール]メニューに分析ツールがない場合は、[ツール]―[アドイン]から[分析ツール]をチェックして、CD‐ROMなどから追加セットアップを行ってください |
画面2 回帰分析ダイアログボックス |
「入力Y範囲」は目的変数、「入力X範囲」は説明変数です。「ラベル」にチェックすると指定範囲の先頭行をラベルとして認識します。また、このほかの設定は分析結果の精度を検証するためのチェックです。
これらを確認してから[OK]ボタンをクリックすると、分析結果が新しいシートに表示されます。
画面3 ステップ1の結果、出力されたシート(クリック >> 画像拡大) |
[ステップ2]
回帰統計の補正R2(決定係数、回帰分析の精度を示す)を確認します(ここでは0.981803)。また、分散分析表内のP-値(危険度を表す数値で、大きいほど説明変数として不適切)を見て数値の高いものを見つけます(ここではD社)。
重回帰分析の場合、説明変数が適切だと補正R2が高くなります。ただし、Excelにはどの説明変数を採用すればよいかを自動的に判別する機能がないため、P-値を頼りに適切な説明変数を割り出し、補正R2が最も高くなる説明変数を割り出すことになります。ここで元のデータに戻り、D社を入力X範囲から外して再度、回帰分析を行います。結果は以下のようになります。
画面4 ステップ2の結果、出力されたシート(クリック >> 画像拡大) |
[ステップ3]
補正R2が0.9880471と高くなっていることを確認して、さらにP-値の大きなA社のデータを入力X範囲から外して再度、回帰分析を行います。結果は以下のとおりです。
画面5 ステップ3の結果、出力されたシート(クリック >> 画像拡大) |
補正R2が0.78776と先ほどよりも低くなっています。これは、A社データを除くと説明変数が少な過ぎることを意味しています。ステップ2の結果が最も補正R2が高くなっていますので、説明変数はA・B・C社とすることが適当だといえます。
[ステップ4]
A・B・C社の係数をグラフ化して、目的変数への影響度を見てみます。
画面6 係数をグラフ化する |
グラフから、A社・B社の売上が高いときには経常利益が低くなり、C社の売上が高いときには利益が高くなっていることが分かります。
◇
この分析はあくまで相関関係を表すものなので、利益が多いときにC社への売上が多いのか、C社への売上が利益に貢献しているのかは分かりません。この回帰分析の結果を検討材料として、現場の状況・財務データとの検証を行うことにより、管理データとしての有用性を高めていくことになります。
税理士(関東信越税理士会所属)
神奈川大学経済学部卒。大手OA機器商社・会計事務所勤務を経て、現在 浦和税理士法人 代表社員(埼玉県さいたま市)。本業の決算、税務申告・相談を行う傍ら、会計データの統計解析法を研究する。帰納的アプローチにより企業の経営課題を分析し、成果をクライアントである中小企業にフィードバックしている。「多くの中小企業がデータもツールもそろっているのに、それを分析して経営に生かす方法を知らないのは残念。中小企業はもっと生産効率を高めていける」と考えている。「お役立ち会計事務所全国100選 2004年度版(三和書籍、実務経営サービス編)」に選出される。
ブログ:http://www.maznami.biz/
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