アンケートから、顧客満足度に影響する要因を読み取るには?
2006/8/22
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顧客満足向上を図るうえで、顧客満足度の高低に影響を与えている要因が分かれば、そこから優先的に対策を講じることができます。
数多くの要因があるとしても、顧客満足度に対する「影響度の大きさ」を数値で示せれば、最も影響の大きい要因から優先順位を付けることが可能となり、効果的・効率的に改善施策を実施できるでしょう。
今回は、「影響度の大きさ」を「相関係数」で数値化してみましょう。
必要なデータ
顧客満足度調査は実施していますか? 実施しているなら、その結果データが手元にありますね。では、満足度調査データの中に次の項目がありますか?
- 総合満足度
- 「全体的な満足度をお聞かせください」といった表現
- 個別満足度
- 製品の性能、機能、価格、営業マンの態度、サービスなど個別の要因についての満足度を聞く項目
選択肢は、次のような5段階(または4段階)スケールが一般的でしょう。
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||||||||||||
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上記に準じたデータがあれば、今回のテーマに即したデータ分析が可能です。
分析の前提となる考え方
「顧客満足度調査」は、そもそも何のために行うのでしょうか。
調査対象はいうまでもなく、自社製品・サービスの顧客(ユーザー)ですね。従って、顧客満足度調査の最大の目的は、既存顧客の満足度を高めることによって、リピート購入や口コミを促進することにあります。一言でいえば「優良顧客化を図る」ためです。
この目的において最も重要なのは「総合満足度」になります。あらゆる点で100点満点の満足度を取れる会社はまず存在しません。それぞれの会社の製品やサービスには良い点も悪い点もありますが、要するに全体として「満足しているのか・していないのか」が最も重要です。なぜなら、この評価が、リピート購入や口コミを促進することに直結しているからです。これを把握するために、しばしば「総合満足度」調査では、次のような設問が設定されることがあります。
- 当社の製品をまたご購入・ご利用されたいと思いますか(再購入意向)
- 当社の製品を友人・知人に勧めたいと思いますか(推奨意向)
また、この総合満足度に影響を与える個別の要因(製品の品質、価格、営業マンの態度など)についての満足度のことを「個別満足度」と呼びます。
そして、今回の分析に当たっては「総合満足度は、個別満足度によって決まる」と考えます。個別満足度が「原因」、総合満足度がその「結果」であると見なすわけです。データ分析では、この「原因」と「結果」の関係をきっちり数値で把握しようというわけです。
分析手順
今回は説明のために、個別満足度は、「製品の品質」「価格」、そして「アフターサービス」の3つについて聞き、総合満足度を「再購入意向」の設問で聞いた顧客満足度調査の結果で考えていきます。選択肢は前述した5段階スケールです。
下記に示したExcelデータ(架空サンプル)では、回答者は10人です。回答者が1000人だろうが1万人だろうが、分析の手順は同じです。
回答者ID | 001 | 002 | 003 | 004 | 005 | 006 | 007 | 008 | 009 | 010 | 相関関数 | |
総合満足度 | 4 | 5 | 2 | 4 | 4 | 5 | 2 | 2 | 3 | 3 | - | |
個別 満足度 |
製品品質 | 4 | 3 | 4 | 3 | 4 | 5 | 3 | 2 | 3 | 3 | |
製品価格 | 3 | 4 | 4 | 4 | 3 | 3 | 2 | 4 | 3 | 2 | ||
アフターサービス | 5 | 4 | 3 | 5 | 3 | 5 | 2 | 2 | 3 | 4 |
このデータをExcelに読み込みます。
画面1 Excelにサンプルデータを取り込む |
分析にはExcelの関数[CORREL]を使い、相関係数を導き出します。「総合満足度」と「製品品質」の相関係数を計算するには、セルM3を選択状態にしておき、[挿入]−[関数]クリックして[関数の挿入]ダイアログボックス(Excel 2000以前の場合は[関数の貼り付け])を表示し、関数名「CORREL」を選択します。
画面2 関数の挿入ダイアログボックス |
次に、配列1のところに総合満足度のC2からL2までのセルを指定、配列2には、製品品質のC3からL3までのセルを指定します。
画面3 CORREL関数のパラメータ指定 |
最後に[OK]ボタンを押すと、セルM3に相関係数の数値が表示されます。製品価格との相関係数(M4)の場合は配列2に製品価格のC4からL4までのセルを、アフターサービスとの相関係数(M5)の場合は配列2にアフターサービスのC5からL5までのセルを指定します。
画面4 相関係数が算出される |
相関係数の読み方
相関係数は、総合満足度と個別満足度の3つの要因それぞれとの関係の強さを計算したものです。総合満足度との相関係数は、製品品質=0.49、製品価格=0.14、アフターサービス=0.77となっています。
相関係数は正の相関の場合、0から1までの値を取ります。数字が大きいほど関係性が強いと見ますので、今回の数字からは、総合満足度に最も影響力(関係性)のある要因は、まず「アフターサービス」(0.77)、ついで「製品品質」(0.49)、最後に「製品価格」(0.14)となります。従って、今後顧客満足度を向上させるためには、「アフターサービス」の改善から手を付けるべきという判断になるわけです。
なお、相関係数の数値に基づく関係性の強さについては、おおむね次のような判断をします。
0.0 ‐ 0.3 | 関係性は極めて低い |
0.3 ‐ 0.6 | 中程度の関係性がある |
0.6 ‐ 1.0 | 高い関係性がある |
上記数値と照らし合わせると、アフターサービスは「0.77」と、総合満足度とは非常に高い関係性がありますが、製品品質は「0.49」で中程度の関係性、製品価格は、「0.14」と低い関係性しかないことが分かるというわけです。
今回の例では顧客にとって「価格」はあまり重要でなく、価格を下げたりしてみても、総合満足度にはほとんど影響がないことをこの数値から読むことができます
◇
今回は、総合満足度と個別満足度の各要因それぞれの相関係数を見ましたが、要因間の相互影響が考慮されていません。例えば製品品質と価格との間には何らかの関係があるはずで、その関係が総合満足度に影響を与えている可能性があります。こうした、要因間の関係も考慮した形で総合満足度との因果関係を見たい場合には「重回帰分析」という分析方法を使います。
1964年福岡県生まれ。早稲田大学商学部出身。市場調査会社、IT系シンクタンク、広告会社、ネットサービスベンチャー、ネット関連ソフト開発・販売会社を経て、2001年より有限会社シャープマインド代表。マーケティングリサーチ、広告プロモーション企画&プロデュース、Webサイト開発企画&プロデュースを多数手掛ける。
顧客心理の理解向上を目指す「マインドリーディング・ブログ」主宰。「シナプスマーケティングカレッジ」講師。
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