顧客リストから簡単に優良顧客だけを絞り込むには?
2006/12/12
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今年のネット関連の流行語(最近は、「バズワード」ともいいますね)の1つに、「ロングテール」があります。これは、売上の大きい商品から、あまり売れない商品へと順番に並べたグラフを描くと、右肩下がりの線が途中からは横ばいとなり、長いしっぽのように延々と続く形を表現したものです。この横ばい部分は、マイナー商品がポツポツと売れている状態を示しています。
「ロングテール」は、主にネットの検索性が向上したことで、いままで見つけることのできなかったマイナー商品もそれなりに売れるようになったこと。そして、マイナー商品1つ1つの売上は大したことはないものの、マイナー商品全体を足し上げた総売上は、売上の大きいヒット商品に匹敵するような規模になることから、ネットがもたらした特有の現象として注目されたわけです。
そもそも「ロングテール」が脚光を浴びた理由は、この現象が、従来いわれてきた「2:8の法則」の常識をある意味、覆すものだったからです。「2:8の法則」は、2割の商品や顧客が、売上全体の8割を生み出しているという現象を示したものです。端的にいえば、少数の商品や顧客が売上に大きく貢献しているということです。これは、業種・業態にかかわらずほとんどの企業にほぼ通用する法則です(2割の商品の売上貢献度が6割という2:6の企業、2:7の企業など、多少の数字の違いはあります)。
さて、限られたヒット商品、優良顧客が売上に与える影響が極めて大きいということは、そうしたヒット商品、優良顧客を明確に把握し、重点的に管理する必要性が高いということがいえますよね。顧客についていえば、この2:8の法則の考え方が、優良顧客の獲得、維持にフォーカスする「CRM」(Customer Relationship Management)の原点にあるといっても過言ではありません。
そこで、今回は売上貢献度に基づいて顧客をセグメントし、優良顧客を取り出す方法の1つである「デシル分析」をご紹介します。
デシル分析の手順
「デシル分析」の典型的な応用例としては、通信販売企業がカタログの送付先を優良顧客だけに絞り込んで送付件数を減らし、ある程度売上を維持しつつも、経費を削減することで「費用対効果」、つまり「ROI」(Return on Investment)を改善するというものがあります。
さてデシル分析の「デシル」(decile)とは、統計用語では「十分位数」のことですが、マーケティング分野でデシル分析というときは「10等分」のことをいいます。「デシ〜」はラテン語由来の接頭詞で、10分の1を意味します。学校の理科の授業を思い出せますか。1リットルの10分の1は「1デシリットル」でしたよね。あの「デシ」と同じです。
デシル分析では、顧客を売上に応じて10等分します。つまり、売上の高いグループから低いグループまで、顧客を「10グループ」にセグメントするだけのシンプルな分析方法です。デシル分析は、販売管理ソフトなどには標準機能として実装されていることが多いのですが、Excelでも簡単な関数式を組むだけですぐに実行できます。
必要なデータは、顧客別の売上金額(販売金額)が含まれた顧客リスト。「売上金額」は、年間合計、半期合計など、優良顧客の見極めに必要な期間を任意に設定してください。
デシル分析をExcelで行う場合の基本的なステップは次のとおりです。
[ステップ1] 顧客リストを「売上金額」をキーに「降順」でソートする
Excelでソートする対象のセルを選択状態にして、[データ]−[並べ替え]を選択。「並べ替え」ダイアログボックスで売上金額をキーにして「降順」を選び、[OK]ボタンをクリックします。これで、金額の大きい順番に顧客が並び替わりました。
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画面1 [データ]−[並べ替え]を選ぶ |
[ステップ2] 顧客を先頭から10等分して、グループ別売上金額を計算する
全体を10等分して10のグループを作り、それぞれの合計金額を導きます。例えば、顧客数が100社ならば「10社」ごとに分けて、それぞれ10社分の合計金額を算出します。なお10等分で割り切れなかった余ったお客さんは、10番目のグループに入れてあげましょう。大勢には影響ありませんので。
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画面2 顧客が全体で100社ならば、10社ずつに分け、合計を算出する |
[ステップ3] 各グループの全体に占める売上構成比を算出する
「全顧客売上金額」に占める10のグループ別の売上構成比を計算します。1番目のグループの構成比が最も大きく、2番目、3番目とだんだんと構成比が小さくなっていくはずです。
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画面3 合計(ここではB12)に占めるグループ売上高の比率を計算する |
[ステップ4] 累積構成比を、構成比の大きいグループから順番に算出する
ステップ3で算出した売上構成比の累積構成比を、構成比の大きい1グループから順番に算出します。
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画面4 累積合計なので、上のセルの結果に順次加算してしていく |
以上でデシル分析の実作業は終わりです。
分析の方法
では、具体例を見てみましょう。
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画面5 10分割・集計済みのExcelシート |
10グループの総売上高は2億円超。そして、トップのグループ1の売上高は7000万円弱で、売上構成比で32.1%を占めていることが分かります。累積売上構成比を見ると、グループ1〜3で80.6%と、売上の8割を上位3グループが生み出しています。この企業の場合、「3:8の法則」ということになりますね。
さて、こうしたデシル分析結果を見ながら、この場合なら、高額のお歳暮を贈るのは上位3グループに該当する顧客だけにしておこうといった判断をするわけです。
10万人の顧客を抱える通販企業がデシル分析を行う場合も、10等分したグループ(1グループ当たり1万人)で同様の計算を行うだけです。そして、例えば上位の3グループ(3万人)までをダイレクトメール送付対象とし、4グループ以下は送付対象外にする、といった意思決定に役立てることができますね。
1964年福岡県生まれ。早稲田大学商学部出身。市場調査会社、IT系シンクタンク、広告会社、ネットサービスベンチャー、ネット関連ソフト開発・販売会社を経て、2001年より有限会社シャープマインド代表。マーケティングリサーチ、広告プロモーション企画&プロデュース、Webサイト開発企画&プロデュースを多数手掛ける。
顧客心理の理解向上を目指す「マインドリーディング・ブログ」主宰。「シナプスマーケティングカレッジ」講師。
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