システム開発の発注先を簡便に決定するには?
2007/12/17
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ビジネスでは、部材購入や取引先選定など、いくつかの選択肢(代替案)の中から、特定の1つないしはいくつかを選ばなければならないシーンがよくありますね。こうしたとき、価格・機能・品質・アフターサービスなどいくつかの項目での評価を総合して、選択したりします。
このとき、評価項目の中で重要なものとそれほどでもないものが混在していることがあります。その場合、すべて平等に扱うのではなく、それぞれの個別評価が全体評価に対してどの程度重要かをあらかじめ決めておき、評価を「重み付け」する方法があります。今回はこの手順を見ていきましょう。重要度は5段階評価で与えていきます。
説明のための例として、企業がITシステムを開発するに際して、配布したRFPに応じて提出された開発提案書などに基づいて、発注先となるシステム開発会社を1つ選定する場合などを取り上げます。すでに手元には、5社からの開発提案書がそろっており、各社の会社規模や過去の開発実績なども、把握できる状況です。
評価基準を設定する
[ステップ1] 評価の視点を決定する
さて、「当社システム開発を発注するにふさわしい会社」という総合評価に対し、これを個別評価に分けるとしたらどんな視点が考えられるでしょうか。
例えば、
- 開発実績
- 人材の質
- 提案(内容)の妥当性
- 見積もり(提案価格)
などが考えられますね。ほかにもさまざまな評価の視点があるでしょうが、今回は説明のためこの4つの視点で評価を進めていきましょう。
[ステップ2] 評価項目の重み付けを行う
この4項目を使って、Excelで以下のような評価テーブルを作成します。
![]() |
図1 5社を4項目で評価する表 |
ここで各評価項目の重要度を判断します。この重要度に応じて重み(ウェイト)を表す数値を付与していくのです。今回は開発実績、人材の質、提案の妥当性、見積もりのそれぞれに
- 5=重要
- 4=やや重要
- 3=普通
- 2=あまり重要でない
- 1=重要でない
の5段階で重要度を示し、それぞれ1〜5の値を与えることにします。この数値は、「重要」が「重要でない」に対して、5倍の重要度(ウェイト)を持つことを意味します。
もちろん、そもそも重要だからこそ評価の対象としているわけですから、2=あまり重要でない、1=重要でない、の2項目になることはほとんどないと思います。今回のシステム開発の場合、次のように決めることにします。
- 開発実績=5:重要
- 人材の質=4:やや重要
- 提案の妥当性=5:重要
- 見積もり=3:普通
つまり、開発実績や提案内容がとても重要であり、人材の質はやや重要と見なし、見積もりについては、ある程度予算に余裕があるので選択基準としては最重要とは考えない、ということです(もし、予算が厳しければ、見積もりの安さがとても重要になってくることでしょう)。
ウェイトの値は、表の該当行に入力します。以下にウェイトの数字を入力した表を示します。
![]() |
図2 評価項目の重要度を数値化する |
候補を評価する
[ステップ3] 評価項目ごとに各社に評点を与える
次に、開発提案書を提出してきた発注候補企業5社の提案内容や会社概要を見ながら、各評価視点ごとに評点を与えていきます。つまり「開発実績」ではC社は優れている、D社は劣っている、というように判断していき、それを得点として表すのです。今回は、10点満点としています。
![]() |
図3 各社の評点を入力する。合計得点は、重み付け後の得点で算出するので、ここで得点を合計する必要はない |
こうして各社に与えた点を表に入力しました。この表を見ると、開発実績は高いのに、提案の妥当性が低いA社やC社があったり、開発実績の得点は低いけれど、提案の妥当性が高いD社・B社があったりと、個別項目ごとに評価がさまざまにばらついていることが分かりますよね。
総合得点を算出する
[ステップ4] 各社の得点に、項目のウェイトを反映する
最後に各社の得点にウェイトの値を掛けて、合計得点を算出します。計算手順は、下記のようになります。
開発実績の得点×開発実績のウェイト |
= | 開発実績の重み付け後の得点 | ||
人材の質の得点×人材の質のウェイト | = | 人材の質の重み付け後の得点 | ||
提案の妥当性の得点×提案の妥当性のウェイト | = | 提案の妥当性の重み付け後の得点 | ||
+ | 見積もりの得点×見積もりのウェイト | = | 見積もりのの重み付け後の得点 | |
![]() |
||||
|
A社の場合であれば、合計得点は
(5×8)+(4×5)+(5×4)+(3×6)=40+20+20+18=98
となりますね。下表はこの計算をExcelに組み込んだもので、重み付け後の得点と合計得点を自動的に算出しています。なおSUMPRODUCT関数を使えば、中間の重み付け後得点を出すことなしに直接、合計得点が得られます。
![]() |
画面4 計算式を使い、重み付け後得点から合計得点を計算した。重み付け合計得点を直接算出するには、例えばセルG5の値を得るのであれば「=SUMPRODUCT(C3:F3,C4:F4)」と記述する |
総合評価
さて、重み付け得点の合計を見ると、最高得点はE社の122点、次いでB社107点となっています。E社の場合、個別評価すべてが比較的高めでばらつきがなかったことが1位になった要因でしょう。また、B社の場合、開発実績は5点とあまり高くなく、また見積もりは3点で最低評価(金額が高かったから)ですが、提案の妥当性が9点と最高得点を得ていたことが2位につけた要因となっているようです。
このように複数の評価項目に基づいて代替案を選定する場合、個別評価(評価の視点)にそれぞれ重要度(=重み付け)を設定し、代替案(選択の対象)の評点に積算して合計する方法(加重合計)を用いることで、目的に合った選定を行えます。
1964年福岡県生まれ。早稲田大学商学部出身。市場調査会社、IT系シンクタンク、広告会社、ネットサービスベンチャー、ネット関連ソフト開発・販売会社を経て、2001年より有限会社シャープマインド代表。マーケティングリサーチ、広告プロモーション企画&プロデュース、Webサイト開発企画&プロデュースを多数手掛ける。
顧客心理の理解向上を目指す「マインドリーディング・ブログ」主宰。「シナプスマーケティングカレッジ」講師。
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