Q.5

クラウドサービスの進展でIT業界はどう変わる?


(1) 数多くのHaaS/PaaS事業者が現われ、多種多様なプラットフォームが提供される

不正解

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 クラウド化とは、コンピュータ・ハードウェアとソフトウェの“サービス化”にほかなりません。いままでパソコンショップの店頭に買いに行ったり、トラックで運んでもらっていたりしたものが、ボタン1つで使えるようになるわけです。従って上流から下流に至るまで流通経路が変わってきます。

 クラウドコンピューティングを説明する際、よく用いられるのは昔の電力供給です。19世紀の終わりから20世紀の初め、工業化が進んでいた米国では産業界で電気の使用も始まっていました。しかし、このころは送電線なども整備されておらず、工場は川沿いに建てられ、それぞれに水力発電の装置が用意されていたといいます。つまり、各会社が発電設備を独自に保有していたのです。やがて、電力は大規模事業者が集中的に発電して、利用者に供給するやり方へと移行しました。こうなると発電機を作っていた事業者も売り先や装置のタイプを変えなければなりません。

 HaaSで提供されるハードウェア資源やPaaSで提供される基盤ソフトウェアは汎用性の高い(みんなが同じものが使える)ものなので、規模の経済が働きます。すなわち大電力会社と同様に、データセンターを大規模化することで安価なサービスを提供できるようになるのです。従ってこのレイヤを狙う事業者はいち早く顧客を囲い込み、自身の規模をより大きくすることを指向するため、結果としてHaaS/PaaSの事業者はグローバルな大企業数社に集約されると考えられています。特にPaaSの部分はコンピュータOSと同様に一定の縛り(移行にコストが掛かる)があるので、標準的な地位についた事業者がIT業界をリードする存在になると予測されています。そのため、PaaSの覇権争い――現在の本命と対抗は米グーグルと米マイクロソフト――が注目を集めています。

 他方、SaaSサービスはPaaS/HaaSをプラットフォームとして、さまざまな種類のものが登場すると予想され、多数の事業者が共存するでしょう。従来、多くの会社で利用されることを前提にしたパッケージアプリケーションと特定の会社のために作られる受託開発型ソフトウェアは比較的明確に分かれていましたが、ソフトウェアの配布・流通が簡単になるSaaS時代には、その境界はあいまいになるかもしれません。すなわち、自社用に開発したシステムを他社に提供しやすくなるということです。従って、受託開発やシステムインテグレーションを行っていた会社と、汎用のパッケージアプリケーションを開発していた会社が競合関係になるという図式がみられるようになるかもしれません。

 PaaSベースのSaaSは個人や小規模事業者にとってもビジネスの幅を広げます。PaaSで先行する米セールスフォース・ドットコムでは開発者が作った各種アプリケーションを月額1ドル程度から販売するオンラインアプリケーション販売サービス「AppExchange」を提供しています。あるいはiPhoneではアプリケーションを登録すると課金・販売ができるため、短期間に膨大な数のソフトウェアが提供されるようになった事例を挙げてもいいでしょう(このビジネスモデルは、NTTドコモのiモードが先行事例です)。

 もう1つ変化があるとすれば、クライアント端末でしょう。クラウドが完全にソフトウェアとデータをインターネット上に吸収してしまうモデルが主流となるのか、クライアント側に処理やデータを残すのかによって、市場に出回るこれからの端末の基本形が変わってきます。また、従来のノートPCのようなキーボードを持つもの、閲覧を主とするスレート型/電子ブック型、もっと小型のスマートフォン型とサイズや用途も別れていくかもしれません。

 IT業界はいま、ゲームのルールが変わる端境期にあるのです。

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