Q.5

クラウドサービスの進展でIT業界はどう変わる?


(4) 取り立てて大きな変化はない

不正解

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 クラウド化とは、コンピュータ・ハードウェアとソフトウェの“サービス化”にほかなりません。いままでパソコンショップの店頭に買いに行ったり、トラックで運んでもらっていたりしたものが、ボタン1つで使えるようになるわけです。従って上流から下流に至るまで流通経路が変わってきます。

 クラウドコンピューティングを説明する際、よく用いられるのは昔の電力供給です。19世紀の終わりから20世紀の初め、工業化が進んでいた米国では産業界で電気の使用も始まっていました。しかし、このころは送電線なども整備されておらず、工場は川沿いに建てられ、それぞれに水力発電の装置が用意されていたといいます。つまり、各会社が発電設備を独自に保有していたのです。やがて、電力は大規模事業者が集中的に発電して、利用者に供給するやり方へと移行しました。こうなると発電機を作っていた事業者も売り先や装置のタイプを変えなければなりません。

 コンピュータがハードウェアとソフトウェアからなるシステムであるという原理は変わりませんが、コンピューティングサービスをエンドユーザーまで届けるプロセスが変わる以上、そこに登場するプレーヤー(事業者)の立ち位置はさまざまに影響を受けるでしょう。

 HaaSやPaaSなどのプラットフォームビジネスは汎用性の高い(みんなが同じものが使える)ものなので、規模の経済が働きます。すなわち大電力会社と同様に、データセンターを大規模化することで安価なサービスを提供できるようになるため、そこで活躍するプレーヤーはグローバルな大企業数社に集約されると考えられています。他方、SaaSサービスはPaaS/HaaSをプラットフォームとして、さまざまな種類のものが登場すると予想され、多数の事業者が共存するでしょう。PaaSベースのSaaSは個人や小規模事業者にとってもビジネスの幅を広げます。

 ハードウェア製造ビジネスは、主な顧客がエンドユーザーからクラウド事業者に変わることになります。末端のコンピュータ利用者にはさまざまな個人と企業がいるため、これまでは多様な種類・レンジのコンピュータ製品が販売されてきました。しかし、クラウドにおいてはそれらの多様性はソフトウェア的に実現されるので、ハードウェア自体は大規模運用に適した画一的なものが主流になるでしょう。その場合、コンピュータメーカー(部品メーカー)はこれまでの「完成品」とは違う形で製品を納入することになるかもしれません。

 IT業界はいま、ゲームのルールが変わる端境期にあるのです。

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