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IFRS最前線(1)

単なる会計基準の変更では済まされない!
IFRSの衝撃

林恭子
ダイヤモンド・オンライン
2010/4/9

企業会計審議会が2015年にIFRS(国際会計基準)の上場企業への強制適用も辞さない方向性を示した。「単なる会計基準の変更だけでは済まない」との見方が強く、経営方針そのものにまで影響を及ぼす可能性も高い(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2009年11月26日)

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“規則主義”から“原則主義”へ
「経営方針の明確化」が必須

 では、導入するに当たって「経営問題」にまで波及しかねない『IFRSと日本基準との違い』は何か。

 最大の違いは、日本基準が“規則主義”であるのに対し、IFRSは“原則主義”である点だ。
  日本は“細則主義”と言われるほど、事細かに会計のルールや指針が決められている。裏を返せば、規則に書かれていることは遵守されるが、それを逸脱するものに関しては「規則にない」と見なされるのだ。そのため、心ない企業が“法の抜け穴”を突いて会計処理を悪用するケースも頻発している。

 一方、原則主義のIFRSでは、概念や解釈指針などが重視されるため、細かな指針は定められていない。個々の企業が自らの実態に即した会計指針を決めて処理を行うことになる。

 各企業に与えられる会計の「自由度」が高いため、自社にとって都合のよい解釈を行なう企業が増えそうだが、実際はそうではない。会社の実態に即した会計処理を、「監査人や外部の関係者に納得してもらえるように」行なわなければならないため、企業側の責任と負担は、より重くなる。

 さらに、「会社の実態に即した会計処理」を行うことは、単に経理部だけの問題に留まらず、経営の根幹にも触れることになる。なぜなら、企業が会計の原則を自社で決めるためには、経営方針をきちんと考えなければ、会計処理の方向性さえ定められないからだ。

 デロイト トーマツコンサルティングの篠田昌典パートナーは、「日本基準のように、会計ルールを分析して会計処理を考えるやり方では、IFRSに対応できない。現場における1つ1つの取り引きに至るまで、『財務諸表にどう“表現”したらよいか』を細かく考えなくてはならないため、膨大な作業が必要になる」と語る。

 したがって、各企業の経営方針を財務諸表に表現するためには、会計処理の考え方を取り引き先や市場関係者に詳しく説明するための『注記』が激増することになる。

 これでは、経理部などの関係部署の社員は、社内調整や会計システムの再構築などに忙殺され、日常業務が手につかなくなってしまう恐れもある。

単に“コスト”と捉えるか
“投資”と考えるか

 上記のことからもお解りの通り、企業にとってIFRS適用は「単なる会計基準の変更」で済む話ではない。企業側の負担は想像以上に大きく、問題も山積しているのだ。

 しかし、IFRSに対応できるシステムを導入するにせよ、専門知識を持つ社員を増員するにせよ、かかるコストはバカにならない。「企業が特に悩むのは、『IFRSの適用時期と基準がまだはっきり決まっていないうちから、むやみに大きなコストをかけてよいものだろうか』ということ」(篠田氏)だ。ただでさえ大不況が続くなか、「あまりコストをかけたくない」というのが企業側の本音だろう。

 篠田氏は、「EU諸国がIFRSを強制適用する際には、収益規模が50億ユーロ(約6650億円)の企業で、平均して343万ユーロ(約4億6000万円)のコストがかかった。日本はEUと状況が異なるが、それくらいの出費を見込んでおいた方がいい」と語る。

 IFRSが日本で強制適用される時期については、目下「2015年3月期から」が有力視されているが、基本的に12年3月時期までは未定の状態だ。しかもそれまでに、基準の見直しが幾度となく行なわれる可能性もある。

 そのため、「現在は年商5000億円を超えるような超大手しか導入への動きが進んでいない」(篠田氏)という。つまり、多くの企業が具体的な対策をとらずに、「業界の最大手企業がどういった行動や会計処理を行うのか」を様子見しているだけの状況だ。

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