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IFRS最前線(2)

背伸びせずに「まず始めること」が急務!
IFRS導入支援サービスの“松竹梅”

小尾拓也
ダイヤモンド・オンライン
2010/4/15

企業にとって、IFRSの導入準備は「待ったなし」の状況だ。だが焦りは禁物。自社だけで対応が難しい場合は、お手頃な導入支援サービスも利用できる。賢い導入策の「松竹梅」をお伝えしよう(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2009年12月10日)

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 企業関係者がまず面食らうのは、作成すべき財務諸表のルールが大きく変わってしまうことだろう。これまで日本人が慣れ親しんできた貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)という概念は事実上なくなり、それぞれ「財政状態計算書」「包括利益計算書」という財務諸表に変わる。

 フタを開けてみれば、これらの財務諸表は「事業(営業と投資に分けて表示)」「財務」「廃止事業(売却・廃止した事業)」「法人所得税」などの見慣れない項目で溢れている。

 特に、当期純利益の表示は残るものの、経常利益や特別損失、特別利益などが表示されなくなる包括利益計算書に、違和感を覚える人は多いだろう。

 何故このような形になるかと言えば、原則主義に基づくIFRSでは、資産から負債を引いた純資産が期首から期末までの間にどれだけ増えたかを見る「包括利益」が重視されるためだ。

 この包括利益には、為替換算調整勘定、年金債務調整額、未実現有価証券損益、未実現デリバティブ損益なども加味される。つまり、企業の「総合的な実力」が問われるようになるため、これまでのように「本業周りが好調ならそれでよい」とは言っていられなくなるのだ。各事業におけるセグメント情報のつぶさな開示も、一層厳格化される見通しだ。

従来の“儲け”の価値観が吹っ飛ぶ!
現場レベルで混乱が生じる可能性も

 当然ながら、日常的な会計処理の考え方にも変化が生じる。

 たとえば仕入れ・営業・販売部門などは、“儲け”の認識を変えなくてはならない。商社や流通業者においては、在庫・信用リスクをとらない「代理人」と見なされ、取り引きから生じる手数料しか売り上げに計上できない事業が発生する可能性がある。

 メーカーなどにおいても、製品を出荷した時点で売り上げが計上される「出荷主義」ではなく、買い手が製品を受け取ったときに初めて売り上げが計上される「着荷基準」が主流になるかもしれない。

 企画・開発・財務・総務部門などにとっても、影響は小さくない。議論が分かれているものもあるが、M&Aの「のれん代」を買収先の業績に伴って減損する、新たに資産計上するリースの種類が増える、将来の資産売却を見込んで「資産除去債務」を計上する、投資不動産の時価変動を損益に反映するなど、会計処理の細かい変更は枚挙に暇がない。
 
  こうした状況を考えれば、IFRS対応が一朝一夕ではいかないことがおわかりだろう。冒頭の会計の専門家は、「現場の状況を見ると、DB(データベース)の作成レベルから混乱が生じる不安もある」と警鐘を鳴らす。

 たとえば、社内各部門の収支計算に使っていたDBをIFRS対応に作り直す作業に関しては、担当者がこれまでのノウハウをブラックボックス化しているケースが多いため、部員全員が認識を共有することも一苦労だ。

 「作業が思うように進まず、部員がやる気をなくしてミスを連発するようになると、『システムが悪い』『○○さんのやり方が悪い』などと責任転嫁が起き、業務に支障が生じるのでは……」(専門家)

 そうならないためには、どうしたらよいのか? 

 そもそも、IFRS対応を完璧にやろうとすれば、各部門における資金管理、販売管理、固定資産管理などのシステムを全てIFRS対応にリニューアルした上で、それらをまとめる自社の個別会計システムを構築し、さらにグループの連結会計システムを整備しなくてはならない。

 「注記」を含む膨大な決算情報を適宜公開できる開示システムも不可欠だ。場合によっては、地道な社内研修や専門知識を持つ人材の採用も必要になる。

 これらを完璧にやろうとすれば、かかるコストや時間はそれこそバカにならないだろう。「最初から本格的にやろうとすると、企業の規模や体制によっては何億〜何十億円もの予算が必要になるし、準備に4〜5年はかかってしまう」(野村パートナー)という声もある。

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