IFRS最前線(5)
IFRS先行企業・丸紅「IFRSは経営効率化のチャンスだ」
林恭子
ダイヤモンド・オンライン
2010/6/24
総合商社大手の丸紅がIFRS強制適用を前に、「IFRSタスクフォース」を経理部内に設置し、2013年度のIFRS適用を目指している。早期適用を進める理由とメリットについて、丸紅・榎執行役員に話を聞いた(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2010年01月21日)。
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2015年または2016年から始まると言われるIFRS(国際会計基準)の強制適用を前に、総合商社大手の丸紅は、一足先に2013年度からの適用を目指している。昨年6月に「IFRSタスクフォース」を経理部内に設置し、2010年度はさらに組織を拡大してく予定だという。そんな丸紅のIFRSへの取り組みと早期適用の理由について、丸紅 経理部・営業経理部担当役員補佐 榎正博執行役員に話を聞いた(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)。
来年以降タスクフォースは拡大
早ければ2012年度からの適用も
――丸紅は昨年6月に「IFRSタスクフォース」を設置したが、いち早くIFRS適用に踏み出したきっかけは何だったのか。
2008年、当社が連結財務諸表に採用している米国会計基準が、IFRSへ移行する見通しとなった。さらに日本でも、2015年または2016年にIFRSを強制適用する方向性が打ち出された。それが取り組みをスタートするきっかけとなり、旗振り役として「IFRSタスクフォース」を設置した。
すでにIFRSへ移行した経験があるヨーロッパのコンサルティングファームなどからヒアリングや助言を受け、2、3年は準備期間にかかると判断し、移行のターゲットを2013年度に定めて作業しているところだ。
――「IFRSタスクフォース」の概要は?
現在、「経理部」と3つの「営業経理部」から人材が集まり、日常業務と兼務しながら、8名体制で運営している。それに加えて、アドバイザーも起用している。コアメンバーは8名だが、実際には他のメンバーも加わるかたちで活動をしているので、1年目としては十分な規模の組織だと考えている。
今年度は、主に当社が採用している米国会計基準とIFRSとの差異を分析している。この作業を今年早々に終えるのが、このタスクフォースの「第1フェーズ」だ。
―― 来年度以降は、どのような体制で活動を予定しているのか?
2010年度は、経理部から専任で3、4名、営業経理部からも兼務で3名ほどを起用して、経理部のなかにIFRSの専任組織をつくる予定だ。また、全社に関係するコーポレートスタッフ部門からも、兼務という体制で全社のタスクフォースを立ち上げたい。
来年度は、現在の会計基準の差異の分析を事業会社のレベルまで落とし込み、より詳細な作業をしていく。
具体的には、グループアカウンティングポリシーの策定作業、システム対応の必要性の検討などだ。IFRSでは注記のボリュームが2倍になると言われているので、各連結対象会社から入手するレポーティングパッケージ(決算集計や注記情報の元となる)の改修作業も必要となる。J-SOXとの関係でどのような修正が必要か、予算や中期経営計画などの社内管理との整合性をどのようにとっていくかも考えていく。
なかでも、「関係会社との決算期統一」についての検討は重要課題だ。米国会計基準では、3ヵ月の決算期のズレが認められてきたが、IFRSの場合、原則として決算期の統一が求められる。我々の海外事業会社は、12月決算が多いため、決算期の統一作業と共にIFRSへの移行作業を行なうことが必要だ。
来年度からは、2011年度または2012年度までに完成させるアカウンティングポリシー策定と並行して、事業会社を含めた包括的なIFRS教育を行なっていく。
そして2012年度から、実際にIFRSによる財務諸表を並行して策定する。今のところ、2013年度(2014年3月)からの移行を考えているが、米国会計基準が2011年に2014年度からの強制適用の時期を決定するので、その状況を見ながら、場合によっては2012年度からの移行も可能となるように、対応していきたい。