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IFRS最前線(12)

数十年先を見越していまから多額の債務を計上?
新会計基準「資産除去債務」の実態

林恭子
ダイヤモンド・オンライン
2010/11/25

2010年4月から日本企業に適用された「資産除去債務」という会計基準。今回は、IFRSとの差異を埋めるために採用された、いまだ馴染みの薄いこの会計基準について詳しく見ていこう(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2010年5月13日)。

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さらなる手間を要する
IFRS版「資産除去債務」

 日本基準で資産除去債務が適用され、IFRSとのコンバージェンスが進んでいる現在、両会計基準の間に重要な差異はなくなりつつあるものの、資産除去債務の考え方には少なからず差異があるのも事実だ。

 「IFRSに移行すれば、さらに経理部の業務は増えることになる」と山田和延 アクセンチュア・シニアマネジャーは懸念する。山田氏によると、その業務負担とは主に以下の2点だ。

 「まず、日本基準とIFRSでは資産除去債務の範囲が違う。このたび採用された日本基準では、有害物質の除去や契約上で法律的な義務を負うものだけが対象となっている。しかしIFRSでは、法律的な義務に限らず、慣習上必要とされているものに関しても含まれることになり、適用範囲が広がる。

 もう1点は、割引率が異なるという点だ。除去費用がかかるのは将来の話なので、取得時に計上される額は現在価値に割り引かれた額となる。日本では割引率が固定されるのに対して、IFRSでは毎期見直しになる。割引率によっては資産除去債務の金額が変わり、それに伴って資産の帳簿価額自体も変わることになるため、経理担当者にとっては大変な手間となりそうだ。固定資産のシステム管理も面倒なことになるだろう」

 このように、日本基準でさえ手間がかかるにも関わらず、IFRS適用後はさらなる業務負担がのしかかる。何とかこの手間を軽減させる方法はないのだろうか。

 ITベンダーやコンサルティング会社が提供している「資産除去債務計上支援ツール」などを活用することも1つの方法だろう。ITベンダーなどには、資産除去債務算出における対象物件の抽出、除去債務の計上仕訳などを行なうシステムを提供している業者も少なくない。彼らのサービスを利用すれば、資産除去債務の業務整備やシステム化が可能となり、業務効率を向上させることができそうだ。

 新たな基準「資産除去債務」は、企業の財務に影響を与え、経理部門にも手間を与える少しやっかいなものと捉えられてしまうかもしれない。だが、企業の包括的な事業実態を詳らかにするためにも、この基準は必要なもの。効率的に会計処理を行なえば、企業にとっても事業の終了時までを見越した投資の採算性を考えるよい機会になるかもしれない。

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