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公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略(10)

公的資金の影が忍び寄る
“過小資本”メガバンクの苦悩

高田直芳
公認会計士
2011/1/13

サブプライムローンやリーマンショックの影響で、惨敗している銀行業界。メガバンク各社は、数千億円の増資により状況の改善を目指すが、過小資本状態の彼らがこの苦境から抜け出すのは簡単ではない。(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2009年6月19日)

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投資収益率に小惑星の軌道計算を当てはめる

 〔図表2〕の左上にある1次関数の係数0.852が、β値を表わしている。このβ値の求めかたは、大数学者ガウスが編み出した最小自乗法によっている。彼が18歳の頃に、小惑星の軌道を計算するために編み出したというのだから、凡人には想像が付かない。

 なお、前回までのコラムで筆者がヤリ玉に挙げていたCVP分析も、最小自乗法に基づいている。

 筆者は別に、最小自乗法そのものが悪いといっているのではない。CAPM理論において、最小自乗法はぴたりと当てはまっている。固変分解をする場合に最小自乗法を当てはめるのは「問題がある」と述べているだけである。

 さて、〔図表2〕において、大きくはみ出した点が3個ある。点Aは2008年9月最終週、点Bは翌10月第2週、点Cは同月第3週である。

 ここは「リーマン-ショック」に揺れた時期であるから、ご記憶の人も多いだろう。日経平均株価はA→B→Cへと持ち直したにもかかわらず、三井住友株はほとんど回復していないことがわかる。

 3個の点のうち、点Aと点Bが左下に放たれているが、これらの点はそれほど怖くない。横軸(日経平均株価の投資収益率)上もマイナスになっているからだ。「赤信号、みんなで渡れば〜」の世界である。

 怖いのは点Cである。横軸(日経平均株価の投資収益率)は大きなプラスとなっているのに、縦軸(三井住友の投資収益率)はマイナスだからだ。

 この点がなければ、三井住友のβ値(0.852)や決定係数(0.2746)はもっと高くなっていただろう。それゆえ点Cは、銀行の屋台骨を揺るがすほどの激震があったことを表わしているのだ。

 当時の震源をたどると、アメリカ下院で金融安定化法案が事前の予想に反して否決されるという「地滑り」が起き、ニューヨーク株式市場(ダウ30種平均)が史上最大の「崩落」を起こした時期である。

メガバンクは公的資金の呪縛を振り切れるか

 2009年3月期は各銀行とも惨敗だと述べたが、みずほについては2008年12月期も惨敗である。したがって、以下では、三井住友と三菱UFJの分析結果を示す。

〔図表3〕三井住友の最適資本構成と実際資本構成

 まず、〔図表3〕が三井住友の分析結果である。内円盤にある最適エクイティ比率6.4%は、三井住友にとって「最も適した自己資本比率」である。それに対して、実際エクイティ比率が2.7%しかない点に注目していただきたい。

 外円盤は、実際デット比率97.3%と、実際エクイティ比率2.7%に分かれている。実際エクイティ比率は、CAPM理論から導き出した自己資本比率である。“Tier1”という指標とは異なるものであるから注意して欲しい。

 もう一度、最適エクイティ比率6.4%と実際エクイティ比率2.7%を見比べると、三井住友は明らかに過少資本であることがわかる。第6回コラムの、東芝型・シャープ型・ソニー型の分類に従うならば、これは東芝型である。

 〔図表4〕は、三菱UFJの分析結果である。

〔図表4〕三菱UFJの最適資本構成と実際資本構成

 内円盤は、最適デット比率86.9%と、最適エクイティ比率13.1%に分かれている。三井住友とは五十歩百歩であり、これも東芝型である。

 ただし、三菱UFJの立場からすれば「最低でも五十歩の差があるのだ。三井住友と一緒にしないでくれ」といったところだろう。

 メガバンクはいずれも2009年夏に、数千億円の増資を行なって“Tier1”の上昇を目指すという。しかし、その程度の増資で過少資本から脱却するのは「焼け石に水滴をたらす」程度であることが、以上の分析結果から判明する。

 日本のメガバンクはどうあがいても過少資本の状態から抜け出すのは難しく、公的資金が草葉の陰から「おいで、おいで」と手招きしているといえるのだ。

筆者プロフィール

高田 直芳(たかだ なおよし)
公認会計士、公認会計士試験委員/原価計算&管理会計論担当

1959年生まれ。栃木県在住。都市銀行勤務を経て92年に公認会計士2次試験合格。09年12月より公認会計士試験委員(原価計算&管理会計論担当)。「高田直芳の実践会計講座」シリーズをはじめ、経営分析や管理会計に関する著書多数。ホームページ「会計雑学講座」では原価計算ソフトの無償公開を行う。

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