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公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略(10)

公的資金の影が忍び寄る
“過小資本”メガバンクの苦悩

高田直芳
公認会計士
2011/1/13

サブプライムローンやリーマンショックの影響で、惨敗している銀行業界。メガバンク各社は、数千億円の増資により状況の改善を目指すが、過小資本状態の彼らがこの苦境から抜け出すのは簡単ではない。(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2009年6月19日)

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サブプライムローン問題の復習

 サブプライムローン問題についてはマスメディアなどで盛んに取り上げられており、読者のほとんどもご存じのこととは思うが、ここで私見を交えて若干の復習をしておこう。

 そもそも、プライムローンというのは「最優遇貸し付け」のこと。それにサブ(下の〜)が付くのだから「格下の貸し付け」といったところだ。

 もとはといえば、アメリカの低所得者向け住宅ローンが事の始まり。最初は低い利率で貸し付けて、数年後には利率をぐっと引き上げる「段階利率」を適用するのがその特徴だ。

 先憂後楽ではなく「先楽後憂」だから、「先楽」の部分で住宅バブルが引き起こされ、「後憂」の部分が時限爆弾として組み込まれた。

 低所得者が、「後憂の利率」に対応できるわけがない。やがて返済が滞るのは目に見えている。その矛盾を一気に吐き出したのが「サブプライムローン問題」である。

  これが住宅ローンの焦げ付きにとどまっていれば、銀行が傷ついただけでゲームは終わっていた。ところが厄介なことに、銀行は「ローン債権の証券化」を図り、自ら胴元となって、サブプライムローンという名のジョーカーを世界中にばらまいていた。

 かくして、第2ラウンドは「自動車ローン」に舞台の場を移し、世界を股にかけた「ババ抜き合戦」が開始されたのである。

自動車業界から電機業界へ被害が拡大した理由

 自動車を購入する際、現金で支払う裕福な人には想像できないかもしれないが、世の中にはローンを組んで車を買う人のほうが圧倒的に多い。例えば、トヨタ自動車の2009年3月期の損益計算書を見ると、売上高20兆5296億円のうち、販売金融子会社などが扱う金融事業は1兆3559億円を占める。車を売るだけの粗利益率は8.9%にすぎないが、自動車ローンなどの粗利益率は27.2%もの荒稼ぎだ。

 サブプライムローン問題がこの自動車ローンに波及して、第1回コラムでも述べた通り、自動車業界が大不況の嵐に飲み込まれてしまった。「需要が蒸発して」車が売れなくなった、という大雑把な問題ではない。第4回コラムで紹介した電機業界は、ハイテク装備された自動車業界からの玉突き事故にあったようなものだ。

 この住宅ローンや自動車ローンなどが小口証券化されたものが、デリバティブ(derivatives)と呼ばれるものだ。株式や公社債ばかりに注目されているが、おおもとを辿れば不動産(住宅)や動産(自動車)などの実物資産に由来(=derive)するものなのである。

 問題をさらに深刻化させたのは、実物資産に組み込まれたジョーカーが、デリバティブによって小口化・細分化され、世界中に広く分散してしまった点にある。これにより、自分の手札の中にジョーカーがあることを、投資家自身が気づかなくなってしまった。

 こうしてハイリスク・ハイリターンの「ババ抜き合戦」が演じられた結果、ジョーカーの多さに耐えきれなくなった者たちによって、2008年9月の「リーマン-ショック」が引き起こされたのである。

銀行の自己資本比率と最適資本構成に迫る

 銀行に対する経営分析の話に戻ろう。〔図表1〕が示すように、タカダバンドは2009年3月期に急降下しており、通常の経営分析を当てはめるのには無理がある。

 せめて、先程述べた自己資本比率につき、第6回コラムで紹介した「最適資本構成タカダ理論」を当てはめて、ビジュアル的に俯瞰(ふかん)してみることにする。

 最適資本構成の問題を解くには、CAPM理論に基づく「シャープのβ値」の算出が必要である。以下では、β値と呼ぶ。本年(2009年)2月、中小企業庁が公表した『経営承継法における非上場株式等評価ガイドライン』に「レバードβ」として登場しているものと同じなので、馴染みの読者もいることだろう。

〔図表2〕三井住友のβ値と回帰直線

  〔図表2〕は、三井住友について、そのβ値を調べたものである。横軸は「日経平均株価の投資収益率」であり、縦軸は「三井住友の投資収益率」としている。2008年1月から2008年12月期までの週次ベースで散布図を作成した。

 なぜ、2009年3月までのものを作図しなかったかというと、2009年3月期決算のROEが各銀行ともマイナスとなって、自己資本コスト率を算定できなかったからである。したがって、以下で検証する最適資本構成の問題も、2008年12月期を基準とする。

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