青山学院 会計サミットレポート(後編)
会計監査は不要ですか? 再考されるその役割
垣内郁栄
IFRS 国際会計基準フォーラム
2012/7/20
オリンパス、大王製紙の事件を受けて日本企業のコーポレートガバナンスを再考する議論が本格化している。社外取締役、内部通報制度、会計監査はガバナンスの向上に有効か。識者による議論を紹介する。
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会計監査無用論を超えて
会計監査における公認会計士の役割については社会一般との間で「期待ギャップ」がある。会計監査の役割は、企業が作成する財務諸表が適正に表示されているかについて意見を表明することだが、社会では会計不正の発見についても期待されている。八田氏は「今般のオリンパス事件は経営者による不正なので、外部監査には何ら関係がないのか。仮にそのようなことがまかり通ると一般の人は『だったら外部監査はいらない。困ったときに株主が損失を負担したらいい』という諦めにも似た意見が出てしまう」と懸念を示す。
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コーディネーターの八田進二氏 |
八田氏は雑誌『経営財務』の会計不正についてのアンケート結果も紹介し、「現職の会計士の多くも監査での不正発見は難しいと回答している」と指摘。「つまり企業も会計士に期待しておらず、会計士が不正を発見できないのであれば、会計士監査の無用論が出てくる」と話した。
山崎氏は「なかなか難しい答えだが」としたうえで、「経営者不正を発見するために会計監査があるのではない。経営者不正も含まれるが会計基準に対する(財務諸表の)適合性を監査するのがわれわれの目的で、かなり限られたことを期待されている」と答えた。
太田氏は「会計監査が無用という声は聞いたことがない」として、「監査役は外部監査人の監査の動向や判断の妥当性について株主に説明をしている。その中で外部監査についての期待は非常に大きい。ただ、現実の期待ギャップがあるのは事実」と話した。
國廣氏は外部監査、監査役、内部監査人の三様監査について「行為規範と評価規範を分けて考えるべき」と説明した。この文脈では「行為規範はある状況においてどうすべきかを行為するときに考える規範。評価規範は後から考えて、あれは大丈夫だったのか駄目だったのかを考える規範」として、「例えば会計監査を考えると、財務諸表について合理的な保証をするのが会計監査の役割であって、不正発見が目的ではない。従って何らかの不正があった場合に、その不正が発見できなかったことを善管注意義務違反に問うことから入るべきではない」と話し、評価規範で会計士を批判することの危うさを指摘した。
一方で「監査で不正を見つけても公認不正検査士に任せておけばいいというのも、会計監査人にとってはまずい。すなわち健全な懐疑心を持つのであれば不正の兆候がある場合に不正を調べることが監査人として求められる」と行為規範的な見方を説明した。「問題を調べて何も発見できなかった場合に監査役の義務を果たさなかったとして後ろ向きに評価規範で考えてはいけない。何か問題があれば、調べるという行為規範が大事だ」。

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