メタデータの標準化がカギに
デジタルアーカイブとユビキタスコンピューティングの相性は
2008/01/15
「デジタルアーカイブを活用するうえで、ユビキタスコンピューティングは非常に有効だ」(東京大学大学院学環教授、坂村健氏)
東京大学21世紀COE「次世代ユビキタス情報社会基盤の形成」/東京大学大学院情報学環が開催したシンポジウム「デジタルアーカイブの『標準化』に向けて」の中で、坂村氏はこのように述べ、現実の世界と仮想世界とを結び付けるユビキタスコンピューティングをデジタルアーカイブの基盤にしていくことの有効性を訴えた。
1つの例として挙げたのが、奈良や静岡をはじめ、全国数カ所で繰り広げられている「自律移動支援プロジェクト」だ。キーボードなどを介して入力を行わなくとも、携帯機器を街中に用意された端末に付けたり、特定の場所に近付くだけで情報が表示され、移動や観光をサポートする仕掛けである。しかも、デジタル化されていることのメリットを生かして、文字だけでなく音声で情報を伝えることも柔軟に行える。
ただ、それには「メタデータの標準化」という課題が残されているとも指摘した。
「(デジタル博物館に取り組んでいた)10年くらい前の試みでは、デジタル化された情報をどうやって利用するかが焦点になっていた。しかし今や、検索エンジンの進化も相まって、下位レベルの情報はどんなフォーマットであろうと何とでもなるようになった。いまはむしろ、知識をどのように整理するかという上位レベルのスキームが焦点であり、メタデータをどう標準化するかが一番重要になっている」(坂村氏)。将来的に、いつでもどこでも情報を活用できる社会を実現するうえで、メタレベルの標準化が欠かせないという。
これを受けて、東京国立博物館の田良島哲氏(情報管理室長)は、デジタルアーカイブプロジェクトの多くが、高い品質だが限定された数の文化財を蓄積するという「一点豪華主義」に陥っていると指摘。しかし博物館に求められるべきはむしろ、「そこそこの質でできるだけ大量のアーカイブを、安定した技術で、長期保存や使い回しに耐える形で作ることだ」と述べた。同時に、共有可能なメタデータの付与を考えていくべきだとした。
「ものと情報の管理だけでなく、新たな発見を促進するような、知的関心を呼び起こす仕組みを求めていきたい」(田良島氏)
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