ただし「人」への適用には議論が必要とも
ユビキタス基盤が餃子問題も解決?
2008/02/05
冷凍餃子による中毒事件などを背景に、食品の安全に対する不安が高まっている。ユビキタスを活用することで、これも含めた日本社会が抱えるさまざまな問題を解決できるのではないか――東京大学大学院学環教授の坂村健氏は、2月4日に行われたシンポジウムの中でこのように述べた。
東京大学21世紀COE「次世代ユビキタス情報社会基盤の形成」/東京大学大学院情報学環は2月4日、第15回シンポジウム「ユビキタスではじまるサービスイノベーション」を開催した。坂村氏はこの中で、ユビキタスという共通のプラットフォームを構築することにより、生産管理やトレーサビリティの確保、あるいは観光支援や商店街の振興など、多様なサービスを展開できると語った。
同氏が想定するのは、場所やものを認識させることにより、現実の世界とインターネットに代表される仮想空間とをリンクさせる世界だ。「その場所がどんなところなのか」「そのものはいつ、どこで生み出されたか」といった情報を識別し、関係を記述することにより、誘導や観光案内をはじめとするさまざまなサービスを生み出すことができるという。ただし、その取り組みをピンポイントで進めるのではなく、基盤として展開していかなければ効率が非常に悪い。独自の仕様が乱立する状況を避け、場所やものを一意的に区別できるようにするために「ucode」を推進しているとした。
坂村氏によると、この基盤を活用したユニバーサルサービスによって解決できる問題はいろいろあるという。
ucodeというとしばしば、美術品などの歴史的資産管理、あるいは物流管理などへの応用が挙げられるが、それ以外にも「製造してから十数年たって部品の問題が判明した場合でも、インターネットを介して問い合わせることで問題の有無が確認できる。住宅部品にucodeを付けることによって、問題があった場合、どの家で利用されているかというバックトレースを容易に行うことができ、回収コストを大きく下げられる」(同氏)
また、現在メディアを騒がせている食品問題についても「一品一品にucodeを付ければ、誰が、いつ、どこで作ったかを把握できる。サーバに問い合わせて、手元にある食品は食べても大丈夫なのかだめなのかを判断できる」と述べ、何でもかんでも避けるのではなく、該当する商品だけを識別し、避けることが可能だとした。
ただ、ユニバーサルサービスプラットフォームを人に適用することは「慎重に議論しなければいけない」とも。安易にサービスを設計すれば、その人がどこにいて何をしたのかといった情報がすべて読み込まれてしまい、プライバシーを侵害する事態も考えられる。「どのようにプライバシーやセキュリティを守っていくか、十分に考えてやっていかなければならない」(坂村氏)
また、沖電気工業の代表取締役社長兼CEOの篠塚勝正氏は、続く講演の中で「自分自身がいま与えられた環境、状況の中で、本当に欲しいものが与えられることがユニバーサルサービスである」と述べ、パーソナル化が鍵であると指摘。これを実現するためには、ものや情報そのものが上手にコミュニケートできるユビキタスネットワークが核になると述べている。
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