AIRエバンジェリストがお勧め
開発者タイプ別「Adobe AIR」の始め方
2008/02/27
JavaScriptやFlash、PDFなどWebと親和性が高い技術を使ってローカルで稼働するデスクトップアプリケーションが開発できる「Adobe AIR 1.0」が米国で2月25日に公開された。来日した米アドビのシニア プラットフォーム エバンジェリスト エンリケ・デュボス(Enrique Duvos)氏は「WebサービスやAPIをデスクトップに拡張できる。AIRはWebをプラットフォームとして利用できる技術だ」と説明した。
AIRはベータ版当時から国内外のコミュニティによってアプリケーションが開発されている。1.0の発表で企業がAIRを使って社内アプリケーションを開発する例が増えそうだ。シャープはSAPの基幹システムのデータを統合的に表示する経営陣向けのダッシュボードツール「エグゼクティブ・コックピット」をAIRで開発。すでに稼働している。
SAPジャパンと共同開発したサイトフォーディーの代表取締役 隈元章次氏は、2月27日の説明会でツールをデモンストレーションした。SAPの情報だけでなくWeb上の天気予報ををAPIで読み込んだり、ローカルからアップロードしたPDFの日報を表示することが可能で、さまざまなアプリケーション、サービスの統合ツールとなっている。
複数の技術に対応するAIRは単なるWebアプリケーションのデスクトップ版というだけでなく、アプリケーションとサービスのマッシュアップ基盤としても利用され始めている。デュボス氏は「Google Analytics」のデータを読み込んで、見やすく表示するAIRアプリケーションの「Google Analytics AIR」や、アドビ社内で使っている社員情報検索ツール「Adobe Directory」を紹介した。Adobe DirectoryはLDAPやMicrosoft Exchange Serverの情報を読み込み、社員情報を検索できるツール。Exchange Serverから取り込んだスケジュール情報も分かるようになっている。
デュボス氏は「WebアプリケーションすべてがAIRにリプレースされることはない。WebベースのアプリケーションのデリバリにはやはりWebブラウザが最適。AIR はJavaScriptやFlashなどWebのアプリケーションを統合するモデル」と話した。
米アドビのAdobe Flexグループ プロダクト マーケティング マネージャー デイブ・グルーバー(Dave Gruber)氏はAIR 1.0の公開で、「これまでデスクトップでなければできなかったアプリケーションがWeb技術ベースに移行する環境が整ってきた」と話す。具体的にはクライアント/サーバ型のアプリケーションや専門的なビジネスアプリケーション。特にビジネスプロセスモデリングのアプリケーションでそのニーズが高いといい、SAPなども取り組んでいるという。コンテンツマネジメントシステムのAIR化に興味を持っている日本企業もあるという。
AIR 1.0はWindowsとMac用のランタイムを用意しているが、今後Linux用やモバイルデバイス用のランタイムも開発する予定。グルーバー氏は「AIRのモバイル対応はすでにチームが動き始めている」と話した。
開発者タイプ別AIRの始め方
AIRアプリケーションを開発するにはいくつかの方法がある。エンリケ氏の説明を基にまとめてみよう。現在、AIR開発者の間で最も多いのが、Flex Builderを使うケースだろう。オープンソースのWebアプリケーションフレームワークであるFlexのアプリケーションが開発できるツールで、最新版の3は標準でAIRアプリケーションの開発をサポートし、簡単な操作でデスクトップアプリケーションを開発できるようにした。無償のFlex SDKもAIRをサポートする(Flex各エディションの機能比較サイト)。アドビは教育機関向けにFlex Builder 3の無償版を提供する予定。
JavaScriptでAjaxアプリケーションを開発している開発者であれば、お金をかけずにAIRアプリケーションを開発できる。利用するのはランタイムと同時に発表されたAIR SDK。AIR SDKはコマンドラインベースのツールで、既存のWebアプリケーションを基にAIRアプリケーションを開発できる。また、アドビの Dreamweaver CS3とAIR Extensionを組み合わせればHTMLベース、JavaScriptベースのAIRアプリケーションが構築できる。さらにEclipseベースのフリーのWebオーサリングツール「Aptana」もAIRをサポートする。
Flash開発者であればFlash CS3が使える。アップデータを組み合わせればAIRアプリケーションを書き出し可能だ。アドビが勧めるのはインターフェイスなどのコンポーネントをFlash CS3で開発し、SWCファイルを出力。Flex Builder 3でSWCファイルを読み込んでアプリケーションのロジックを開発するスタイルだ。Flashを使った高度なインターフェイスとアプリケーションとしての機能性の2つを盛り込むことができる。開発者別のAIRの開発方法はアドビのWebサイトが詳しい。
ただ、発表されたAIR 1.0は英語版。ベータ版の状況を見ると日本語の表示はおおむね問題ないと思えるが、日本語入力などは開発側のテストが必要なようだ。そのためアドビは「日本語を扱うことに関しては保証はできない」としている。AIRの日本語版は今年中ごろに公開予定だ。
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