「強制はない」
API公開は「自主的な決定」とマイクロソフト
2008/02/27
米マイクロソフトが人気製品のオープン性を高めるための相互運用性方針を決めたのは、欧州委員会などからの圧力に対応するためではなかった。
マイクロソフトの知財・ライセンス担当副社長ホレーショ・グティエレス氏は、2月21日の電話会見後にeWEEKの取材に応えてこのように語った。
マイクロソフトは、多くの人がこの決定に懐疑的であることを認識しているが、人々は同社の言葉だけでなく行動も目にすることになると自信を持っていると同氏は言う。
「強制されたからやっているわけではない。自発的な決定だ。たくさんの方針を並べ立てているだけではなく、それを実施するためにすぐに行動している」(同氏)
しかしNPD Groupのソフト業界アナリスト、クリス・スウェンソン氏には、明らかにマイクロソフトの既存のまたは潜在的な法的問題に対処するためのものに見える。
「マイクロソフトによる重要な戦略的決定だと思う。これにより、独禁法訴訟のダメージを軽減し、新たな訴訟を未然に防げるかもしれない。だが、マイクロソフトがこのような措置を取ったことは賞賛するべきだと思う」とスウェンソン氏は言う。「今後、この(相互運用性)プログラムは、 マイクロソフトが他社製品を適切に機能しないようにしているという競合他社からの苦情をなくすはずだ」
Microsoft Watch編集者のジョー・ウィルコックスは、マイクロソフトが得られるかもしれないPR上のメリットを考えると、この方針を発表したタイミングは「怪しい」としている。発表は、国際標準化機構(ISO)がマイクロソフトのOfficeフォーマットを標準として承認するかどうかを決定する重要な投票のおよそ1週間前に行われた。
「この相互運用性方針は新しいものではない。EU(欧州連合)の欧州委員会は、2004年3月のマイクロソフトに対する独禁法裁定に関して、この方針の枠組みに従うよう義務付けた」とMicrosoft Watchには書かれている。
だが、マイクロソフトのグティエレス氏は、人々が懐疑的になるのはいつものことだとしつつも、今回の決定は同社の意思によるものだと語った。何年にもわたってパートナー、顧客、規制当局から学んできたことから、「いまやるべき責任ある行為」だと考えたからだという。
Linuxベンダ、レッドハットの法務顧問マイケル・カニンガム氏は、以前に聞いたことがあることばかりだとし、マイクロソフトの今回の動きをかなり疑いを持って見ていると話している。
グティエレス氏は、作業の多くは進行中で、マイクロソフトが仕様の面で適切にことを運ぶには時間が必要だと認めた。
「これら仕様の一部は基本的にベータ版で、われわれはこれから学んでいく。最初は最終版ほどよいものではないかもしれないが、以前は存在していなかった仕様を最初から作る場合は当然のことだ」(同氏)
マイクロソフトのWindows Serverマーケティング・プラットフォーム戦略担当ジェネラルマネジャー、ビル・ヒフ氏はeWEEKに、オープン性と相互運用性を支持する方針は、単なるPR戦術でもマーケティングキャンペーンでもなく、ソフト設計からリーダーシップまで全社でやってきたことを大きく変えるものだと語った。
「このようなことをやっているほかの商用ソフトベンダを探してみたらいい。すべてのプロトコルとAPI情報を幅広いコミュニティに完全に提供している企業がほかにあるだろうか? 当社の――そしてわたしが思うには業界の――開放への考え方の大きな変化だ」(ヒフ氏)
これだけの水準の透明性を提供している企業も、これだけの量の情報をWebサイトで公開している企業もほかにないと同氏は語り、「オープンソース開発者が、特許付きのプロトコルを使うのを避けるために、それがどこにあるのか探したい場合、今はそれができる」と付け加えた。
同氏は、マイクロソフトは今回の決定で、同社が公開している情報を活用して、市場に出回っている同社製品ともっと効果的に連係する製品を開発する人が増えると期待していると語る。
「これはエコシステム全体を強化し、マイクロソフトと株主に恩恵をもたらす」とマイクロソフトの相互運用性・標準担当ジェネラルマネジャー、トム・ロバートソン氏はeWEEKに語った。
(eWEEK Peter Galli)
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