JavaScriptではYahoo!のAPIも自動で補完

JavaScript、PHP、Rubyのサポートを進めるNetBeans

2008/05/13

 Java向け統合開発環境として知られてきた「NetBeans」が各種スクリプト言語への対応を進めている。NetBeansはCDDLまたはGPLv2で配布されるオープンソースソフトウェア。サン・マイクロシステムズの社員がリードするが、コミュニティベースで開発を行っている。

 2007年12月にリリースされたメジャーバージョンアップ版「NetBeans IDE 6.0」ではRuby、JRuby、Ruby on Railsをサポート。続いて2008年4月末にリリースされた「NetBeans 6.1」では、JavaScriptをサポートしたほか、5月5日には同バージョンでのPHPの早期サポートを発表するなど矢継ぎ早にサポートするスクリプト言語を増やしつつある。NetBeans 6.1ではRuby on Railsの最新版であるバージョン2.0もサポートする。

 先週、米国サンフランシスコで開催された2008 JavaOneでサン・マイクロシステムズは、最新版のNetBeans IDE 6.1のJavaScriptサポートのデモを行った。

nb01.jpg 2008 JavaOneではNetBeans 6.1から新たにサポートされたJavaScript編集機能のデモンストレーションが行われた

 Javaのコードを書くのと同様に、クラス、メソッド、変数などのコード補完が行える。JavaScriptは動的言語だが、変数や関数の戻り値については、型を推定して、その型に合ったメソッドを補完する。例えば「x="foo"」「y=x」「y.」としてCtrl+スペースを叩けば、yが文字列であることを自動的に判別して文字列に対するメソッドだけが補完候補に挙がる。また、DOMなどWebブラウザによってサポートするメソッドが異なる場合には、対応するWebブラウザのバージョンを表示する。

 読み込んだ自作ライブラリの関数名も補完できる。また、現在のところDojo、Yahoo UI Library、jQuery、Prototype.jsなどメジャーなライブラリを標準でサポートしており、これらについてはコード補完時に、その場でドキュメントも表示される。標準サポートのライブラリはNetBeans 6.1に付属しており、ドラッグ&ドロップ操作だけで自分のプロジェクトに加えることができる。デモンストレーションでは、シンプルなフォームだけ備えるWebページに、Yahoo!がAPIで提供するリッチなテキストエディタを埋め込むコードを付加するという機能追加が、ほんの数ステップでできることを示して見せた。

 このほかNetBeans 6.1によるJavaScriptサポートではリファクタリングや“クイックフィックス”、デバッガの機能が利用できる。変数名を変更する際には関係する個所をコード全体に渡って一気に変更できる。また、クイックフィックスはコード中に含まれる問題を常にリストアップしており、ユーザーに対して修正案を提示する。例えば、「if (x=1)」のように比較(==)の代わりに誤って代入(=)の演算子を書いていた場合や、条件分岐によって戻り値のあるなしが異なる関数があった場合には、間違いの可能性を指摘してくれる。演算子の間違いのような場合、単にクリックするだけで自動的に修正してくれる。また、NetBeans上のWebサイトにジャンプして、何が問題であるかの詳細な解説を読むことができる。

nb02.png JavaScriptでコード補完機能を使った例。ドキュメントも一緒に表示される
nb03.png 対象となるメソッドが、どのWebブラウザでサポートされているかのチェックもできる
nb04.png クイックフィックスの機能例。「if(x=1)」は「if(x==1)」の間違いではないかとユーザーに確認している。「ApplyFix」ボタンを押すと、その場で修正が反映される。この関数の例では戻り値の一貫性のなさについても問題を指摘している

開発に必要なすべてをNetBenasで

 Javaの統合開発環境としては現在、Eclipseが最も人気がある。多くのプラグインが公開されており、さまざまな開発言語やフレーワークに対応している。これに対し、追いかける側のNetBeansは開発に必要なものをすべて統合するというアプローチを取っている。例えばPHPと合わせて利用頻度の高いMySQLは、開発者の端末上で動いていればNetBeans上のツリーにアイコンが現れる。各種データベースの操作がNetBeans上で行えるなど統合を進めているという。

 これまで開発言語のランタイムをはじめ、各種のサーバ、プラグイン、ドキュメント、ライブラリなど開発に必要なリソースは個別に導入・管理されてきたが、NetBeansではこうした面倒を取り除こうとしている。サンによるMySQLの買収やJRuby、Jython開発者の雇い入れなど、その成果の流れ込む先はNetBeansだ。

 バージョン6.1は6.0からのマイナーバージョンアップに見えるが、JavaScriptやPHPサポートなど目玉機能もある。またリリースノートによれば、前バージョンの6.0に比べて6.1では起動時間を40%速くするなどパフォーマンスも改善されているという。こうした改善で、普及率で圧倒的な差があるEclipseのユーザーやテキストエディタを使うユーザーをどれだけ取り込んでいけるか注目だ。

(@IT 西村賢)

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