3rdRail日本語版を6月上旬に発売
Ruby普及でNaClなど3社が提携、CodeGearのIDEを推奨
2008/05/22
ボーランドの開発ツール部門、CodeGearとオープンソース・ジャパン(OSJ)、ネットワーク応用通信研究所(NaCl)の3社は5月22日、RubyおよびRuby on Railsの普及にむけて業務提携すると発表した。CodeGearは、これに合わせてRuby on Rails(Rails)向けIDEの「3rdRail」で初めての日本語版となる「3rdRail 1.1日本語版」を発表し、トライアルバージョンのダウンロードサービスを開始した。
対応プラットフォームはMac OS X、Windows、Linuxで価格は4万8000円(税別)。販売はOSJが行い、2008年6月上旬の発売予定。価格にはソフトウェアのライセンス料のほか初年度のメンテナンス費用が含まれる。OSJはインストールや製品操作でメールサポートを行うほか、オプションでトレーニング、チーム開発環境構築支援、RailsによるSI開発など付加価値サービスを提供していく。
今回の提携についてボーランド CodeGear事業本部長の八重樫行男氏は「生産性の高さからRubyやRailsへの期待が高まっているが、開発者のスキルのばらつき、導入障壁の不透明さ、技術そのものへの不安といったことから、多くの企業では踏ん切りがつかない状態。そうしたハードルを下げる支援を3社で行っていきたい」と話す。
NaClは技術面で、CodeGearは製品で、OSJはソリューションでと、それぞれが持つ経験を生かしたい考えだ。
NaClはRubyを生んだまつもとゆきひろ氏が在籍し、これまでにRails開発で技術支援やトレーニングプログラムを提供。Railsによる自治体基幹業務システムや@niftyのプロフィール・サービス「アバウトミーβ」などの開発実績がある。CodeGearはボーランドの事業部門として長年開発ツールを手がけている。OSJはオープンソースを活用したSI案件で実績がある。
日本語チュートリアルビデオも用意
3rdRailの特徴はRailsに特化した専用IDEであること。Eclipseをベースとしながらも、Railsに不要なコードをそぎ落とし動作を軽快にしている。また、Rubyのような動的言語では文脈に応じてコード補完をする必要があるが、Rails専用としたことで、Railsの規約などからより的確な推測に基づくコード補完が可能になるという特徴があるという。
ドキュメント類を日本語で提供するほか、RubyやRailsに不慣れな開発者に配慮し、Railsプロジェクトの作成方法や実際のコーディング、リファクタリング、実行、デバッグなどに関する日本語チュートリアルビデオも製品に添付した(ビデオはCodeGearのコミュニティサイトでも見られる)。また、IDEにコマンドラインツール操作用のウィンドウを統合していることも特徴で、GUIベースでの操作と、コマンドラインでの操作を自由に使い分けることができ、上級者にとっても使いやすいという(3rdRailの新機能)。
「今のRubyは10年前のJavaに似ている」
趣味的に使われていたRubyが、Railsという開発フレームワークを得て商用IDEが登場するに至った。記者会見で挨拶をしたNaClフェローのまつもとゆきひろ氏は、これまでの経緯と現状について、以下のように紹介した。
「Rubyは新しいように思えるかもしれないが、実際にはJavaと同じぐらい古い。ただ、過去10年ぐらいは多くのRubyユーザーは趣味で使う人だった。Ruby普及の起爆剤となったRailsが広く知れ渡ったのは2005年ごろに起こった英語圏のブログ界での大論争だ」
「RailsはJavaの10倍の生産性、という主張が議論を巻き起こした。生産性の測定は難しく結論は出なかった。ただ、例えば同じWebアプリケーション開発フレームワークのStrutsと比べてみると管理しなければならないコードや設定ファイルの行数が10分の1程度になる。また、ブログシステムのプロトタイプをデータベース設計からコメント欄の実装にいたるまで15分で作るというデモンストレーション映像が話題になるなどして、“Railsは生産性が高い”というコンセンサスが形成されてきた」
「特にアメリカの西海岸でWeb 2.0系と呼ばれるところは、その過半数がRailsを使っているという話も聞いている。そうした評判がアメリカから日本に逆輸入される形で入り、最近は日本でも企業で使う例が増えている」
「業務命令でプログラミングをする人でもRubyを使う例が出てきた。これまでIDEでJavaを使ってきた人が、viやEmacsなどの単なるエディタでは悲しいものがあるだろう。それでEclipseやNetBeansといったIDEがRubyに対応し、最近は商用IDEが登場してきている」
「今のRubyは10年前のJavaに似ている。Javaも登場した頃はバイトコードは遅いなどといわれて使われなかったが、エンタープライズ用途で不動の地位を築いた。それと同じ道をRubyは歩んでいる。認知度、投資、コミットメントと、必要な要素がそろいつつある。」
「例えば銀行のシステムでRubyを使うというのは、2008年のいまは現実的ではない。しかし、Webアプリケーションは小さいものが多い。小さなチームで、省コスト、短納期、少数精鋭で開発するときにはRubyは大きな武器となる」
Railsの適用事例には「Twitter」や「食べログ.com」のような大規模なWebサービスもあり、スケーラビリティの点で実績を積みつつあるが、もっと小さな開発案件でのニーズもある。OSJ代表取締役の角田好志氏は、こう語る。
「従来は顧客のほとんどは技術部門だったが、いまは企業のユーザー部門が直接お客様になるケースが増えている。企業内ではAccessやVBを使った小さなアプリケーションが多く残っている。こうしたアプリケーションは開発担当者がいなくなるなど環境変化に弱い。こうしたものをWebアプリケーション化して提供するケースが増えている。Javaは開発フレームワークや稼働環境が大がかりになりがちだが、Rubyならシンプルだ」
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