Webにマークをつけ「気づき」を共有
日本発のソーシャルアノテーション「コモンズ・マーカー」公開
2008/07/03
「自分にぴったりのツールがなかったので、自分が欲しいツールを作りました。Webページにマークを大量に付けて情報を収集・整理するためのツールです。また、付けたマークを共有することで“気づき”を共有できます」。7月4日に新サービス「コモンズ・マーカー」(Commons Marker)の一般公開を開始したコモンズ・メディア代表取締役の星暁雄氏は、同社が初めてリリースするサービスについて、そう語る。
大量のマークで軽快にメモを
コモンズ・マーカーは、日本語圏ではまだ数少ないソーシャルアノテーションと呼ばれるジャンルのサービスだ。ソーシャルブックマークとも似ている。
コモンズ・マーカーを使うには、あらかじめWebブラウザにブックマークレットを登録しておく必要がある。何らかのWebページ閲覧中に、このブックマークレットを呼び出すことで利用する。
ブックマークレットを起動すると、ブラウザ画面の右上に小さなコントロールボックスが表示される。この状態で、Webページの任意のテキスト部分をマウスドラッグで選択すると、小さなコメント入力用ウィンドウがポップアップする。メモやコメント、タグを入力すると、コモンズ・マーカーのサーバ上に、WebページのURL、コメントを付けた位置、コメント・タグ内容とともに保存される。ソーシャルブックマークがURLを記録対象とするのに対して、コモンズ・マーカーはWebページの特定の段落やセンテンスを対象にできるのが大きな違いだ。
Webページに対してコメントリストが被さるようなインターフェイスもユニークだ。特定のWebページに付けられたコメントは、コモンズ・マーカーを起動中であればコントロールボックスの下に短冊状に一覧表示される。それぞれの短冊をクリックすると、本文側が自動スクロールし、対象となるテキスト部分をハイライト表示してくれる。自分や他人が付けたコメントと、そのコメントが対象とするセンテンスを素早く読むことができるわけだ。同一ページ中に100〜200個のコメントを付けることも可能で、「大量のマークの一覧性を重視した。アノテーションサービスは英語圏にはいろいろとあるが、たくさんのコメントの一覧性を重視したサービスは、これまでなかったのではないか」(星氏)という。
コメントリストはデフォルトではWebページの先頭から文末に向かって並んでいるため、例えば重要な箇所を3つだけマークしておけば、上から順に短冊をクリックすることで、拾い読みができる。コメントリストはユーザー別、時系列などでも並べ替えられる。
「既存のWebをソーシャル、創造的なものにしていきたい」
まずターゲットとして想定しているのは、「知的にアクティブなユーザー」(星氏)。企画やマーケティング部門、研究部門の人、ジャーナリストなど「毎日新しいサイトを調べているような人々」(同)だ。2年前にベンチャーを創業するまで技術系の雑誌記者として活動していた星氏だが、素早く大量のメモが取れるツールとして、すでに自分自身がコモンズ・マーカーのヘビーユーザーとなっているという。
現時点で付けられたマークは、すべて公開され、自分のためだけに非公開マークを付けるという機能はない。全利用者のマークを時系列に表示する「新着マーク」の機能や、直近にマークが多く付けられている「ホット・マークス」の機能を使うことで、ソーシャルブックマーク同様に、話題となっている情報を追うこともできる。
サービススタート時点では、例えば特定ユーザーを“フォロー”する機能がないなど、比較的シンプルだ。ユーザー名を含んだURLをブックマークすることで同様のことができるが、もしフォローの機能があれば、感度の高い数人をフォローするだけで情報収集ツールとしての使い方が広がる。しかし、コモンズ・マーカーではシンプルさにこだわったという。「いろいろと機能追加のアイデアはあるが、いたずらに複雑にして特定少数の人だけが使いこなせるツールにはしたくない。はじめは少数のコアなユーザーが使うだけかもしれないが、大勢の人に使ってもらいたい」という。
星氏は「メディアに身を置いていた人間として、メディアの入れ物を作ってみたかった」とも話す。日経BP社でいくつかの雑誌の創刊に立ち会い、編集長職も経験した経歴から、オンラインでの知的共同作業を行う新しいメディアのあり方を模索していきたいともいう。「使っていただければ分かりますが、非常に軽快にメモが取れる。1人の人間が1日に20個や30個のマイクロコンテンツを量産するのも苦じゃない」。もし良質のマイクロコンテンツが多く集まれば、それを人的ネットワークやタグの処理に基づいて“メディア化”していく方向性も将来的には考えられる。
コモンズ・マーカーは、自分のメモを集めた情報源という性格と、同ジャンルで関心を共有する人々が集まって、新しい別の価値を生むというソーシャルな面を持っている。「すでに存在しているWebをソーシャルなもの、創造的なものにしていきたい」(星氏)。非公開で続けていたベータテスト期間中にも、特定のブログエントリに対してコメントが70以上も続き、チャット状態になった「想定外の使い方」(同)もあったという。「はてなは偉大な先輩」(同)としながらも、従来と位相の異なる新サービスによって、新しいオンラインコミュニケーションが生まれるのではと期待する。
イントラ向け利用で事業化も検討
サービスは無償で公開するが、今後はイントラネット利用などでの事業化を検討しているという。例えば、情報サイトを提供する企業に対して、イントラネット向け校正支援ツールとしてコモンズ・マーカーを使うというアイデアだ。「最初から赤入れのための校正支援ツールというのは意識していたし、校正支援に使えるかどうかをツールの使い勝手の評価基準としていた」(星氏)。
まずはコンシューマー向けサービスとして完成度を高め、認知を得ていきたい考えだ。
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