利用増加で自社他製品へシナジー効果
オンライン付箋紙共有「lino」がバージョンアップ
2008/07/31
2008年4月にサービスインしたオンライン付箋共有サービス「lino」(関連記事)が、公開4カ月で早くも新バージョンを公開した。linoを開発・運用するインフォテリア・オンラインは7月31日、社内的に「'08natsu」と呼ぶメジャーバージョンアップ版を一般公開した。大きく変わったのは、グループ機能の追加と新着付箋の自動表示機能の追加だ。
linoはAjaxを多用したWebアプリケーション。“キャンパス”と呼ぶ仮想的なコルクボード上に付箋紙を貼り、テキストや画像、URLをメモしたり、ほかのユーザーと共有することができるサービスだ。これまでFirefoxとSafari、Internet Explorer 7に対応していたが、新バージョンではInternet Explorer 6にも対応した。
作成した付箋をほかのユーザーのキャンパスに送って簡易メールのような使い方ができるほか、linoユーザー全員でキャンパスを共有したり、指定したキャンパスを友だちと共有する機能がある。
グループウェアよりも手軽な情報共有ツールとしてオフィスで利用する例も増えているという。例えばマザーズオークションを運営するIDUのシステム本部では、職場の全員が見える場所に大きなディスプレイを設置。イントラネットに載せるほどではない予定や備忘録を共有キャンパスに常時表示させている。こうした利用で問題となるのは、キャンパスの公開範囲だ。情報共有ツールとして利用するには全ユーザーに公開するか、友だち全員に公開するかしか選択肢がなかった。このため職場の人だけと共有したい、ある特定の友だちだけと共有したいというニーズを満たせなかった。「一般公開と友だちへの公開の2つだけでは破綻気味だった」(サービスデザイン マネージャ 甲斐淳仁氏)
新バージョンでは指定(招待)したユーザーとだけ共有するグループ機能を追加した。招待ユーザーを指定してグループを新規作成すると、ユニークなURLを持つグループページができる。このページに貼った付箋は、グループに参加する誰でも編集や削除ができる。
もう1つ大きな機能追加は、キャンパスの情報をほぼリアルタイムで自動更新する機能だ。誰かが付箋を作成すると、その新規付箋が、Webブラウザのリロードなしに表示されるようになった。公開キャンパスで1分おき、グループページで15秒おきにポーリングしていて、チャットのような、ほぼリアルタイムのコミュニケーションができる。甲斐氏は自社内での利用例を挙げて、デザイナとサービス開発者のコラボレーションの様子を説明。Webページデザインの画像を付箋としてデザイナが貼ると、開発者がそれに対してコメントを付け、さらにそれに対する反応をデザイナが付箋紙で返信するという一連のやり取りがスムーズに行われる様子を紹介した。
このほか、4月の公開以来追加してきた機能としては、zoomeやYouTubeに対応した動画貼り付け機能、ライブドアのRSSリーダー「livedoor Reader」との連携して閲覧中のRSSエントリを直接linoの付箋として貼り付ける機能、ポラロイドカメラのような枠を付けた画像を作成する機能、シフトキーを押しながらドラッグすることで重なりのある付箋紙をまとめて移動する機能などがある。ブックマークレットを使うことで、視聴中の動画を簡単に付箋にできる。また、同じく新たに用意したブックマークレットを使うことで、linoではないほかのWebページを閲覧中にlinoのキャンパスをオーバーレイ表示することができるようになった。
海外ユーザーの比率は約25%と高く、中でも中国語圏からの利用が多かったことから、英語版に加えて中国語メニューの表示にも対応した。
1日1万枚の付箋紙が増加
インフォテリア・オンラインの代表取締役社長、藤縄智春氏によれば、現在、linoの利用者は1日に100〜300人ペースで増えている。ユーザー数は非公開だが、サービス運用日数と増加ペースから計算すると推定で2万人前後のユーザーがいる。
ユーザーの利用動向としては、「約半数が非公開の付箋でプライベート利用。25%は友だちと共有、残りの25%が一般公開している」(藤縄氏)。1日1万枚の付箋が作られ、アクセスのピークは朝9時にある。藤縄氏は「ツールとして行動パターンに組み込まれているのでは」と話す。
広告モデルを採用して事業化するにはユーザー数が少ないが、コンシューマ向けとして開始したlinoの収益化は短期的には必ずしも考えていないという。「使っていただいてワクワクする、というようなところを大事にしたい」(藤縄氏)という。linoでは、何かを貼りつけて、それらを視覚的に自由に配置するというシンプルさと汎用性の高さから、ユーザーたちがさまざまな利用法を考え出している。例えば付箋紙でしりとりをするユーザー、語学の基礎一覧表を作成して公開しているユーザー、1枚の地図に多くのユーザーが旅行記を重ねていくようなキャンパス、ブレインストーミングツールとしてアイデア整理に使うようなユーザーと、利用法は多様だ。
同社は法人向けにSaaS型の表計算アプリケーション「OnSheet」やバグ追跡ツール「Topika」を提供しているが、藤縄氏は、こうした製品への「シナジー効果が大きい」と指摘する。「企業として認知してもらう点でlinoのようなサービスは効果がある」といい、4月以来、OnSheetの登録数は増えているという。
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