啓蒙や技術の普及を目標に各種WGが始動

開発者コミュニティ「日本Androidの会」が発足

2008/09/13

 グーグルが提供するオープンソースのモバイル端末向けソフトウェアプラットフォーム「Android」に早い時期から注目し、勉強会を続けてきた日本のコミュニティが「日本Androidの会」を9月12日に設立。開発者をはじめ、Androidに興味をもつ法人、個人に門戸を開く。同日、東京・秋葉原で設立記者会見を開いた。

android01.jpg 日本Androidの会設立会見で挨拶する関係者ら

 組み込み系、コンテンツ系、Web系と、すでに多くの業界関係者が個人的に参加しており、Androidの普及や発展を目的としてワーキンググループを設置する。設立時点でのワーキンググループは「コンテンツWG」「Web・マッシュアップWG」「DalvikVM WG」「Android SDK探訪WG」「組み込みWG」「勉強会WG」「ビジネスWG」「Market Place WG(仮称)」「PF(プラットフォーム・プロファイル)WG」の9つ。

 勉強会として個人を中心にスタートしたコミュニティであるため、具体的な目標を掲げていないが、「コミュニティの中から会社を立ち上げる動きもいずれ出てくるだろう。啓蒙や技術の普及を中心としたニュートラルな組織だが、ビジネスの世界との交流を意識している。オープンソースコミュニティではあっても、ビジネスの世界で成果が上がるようにしたい」」(日本Androidの会会長で早稲田大学大学院客員教授の丸山不二夫氏)という。iPhoneのApp Storeのようにアプリケーションやコンテンツをオンラインで売買する場を構築、提供する構想もあるという。直近の活動としては、10月か11月と見られるAndoid端末の米国市場での登場のタイミングで、Android 1.0のソースコードの解析を行うという。活動はグーグルやOHA(Open Handset Alliance)とは直接関係を持たずに行っていく。

android02.jpg 日本Androidの会の主催者で早稲田大学大学院客員教授の丸山不二夫氏

 丸山氏をはじめ、同会の参加者はAndroidはクラウド・コンピューティング時代に主流となるアクセス端末の有望なプラットフォームと見ているという。「PCの役割がモバイルデバイスに取って代わられる。その変化の担い手はiPhoneやAndroidだ」。バックにグーグルがいることから、より可能性が大きいのはAndroidだという。アップルは今のところクラウドサービスといえば、iTunes StoreとApp Storeしか持っていないが、グーグルはカレンダーや地図サービス、オフィススイートといった各種サービスを多くそろえ、マッシュアップのためのAPIを公開しているからだ。iPhoneがハードウェアからサービスまで、すべて1社のコントロール下に提供する垂直統合モデルである点も、Androidと異なる点だという。「iPhoneもAndroidも技術的には大きく違わない。しかし、いろいろな産業や会社が参入しやすいのはオープンソースモデルのAndroid」(丸山氏)。

 ケータイ端末だけにとどまらず、Androidはこれまで独自技術が使われることの多かった組み込み分野でも期待されているという。「自動車、事務機器、家電、医療機器など、今はいたたるところにコンピュータが入っている。しかし技術交流がなく、会社ごとに違う技術を用いているため、同じ機能を別々に作るなど無駄が多い。Androidのようなプラットフォームが共通になることで『車輪の再発明』を避けられる」(丸山氏)。Javaコミュニティでの活動でも知られる丸山氏は、こうも指摘する。「オープンソースのムーブメントはエンタープライズから始まっている。組み込みではオープンソースでビジネスができるという認識が広がっていない。まだチャンスがある」。

 日本は元来物作りが強く、分厚いコンテンツ産業もある。また、高い技術力を持つエンジニアが埋もれていることから、「Androidは、それらが交わる舞台になる。グローバルに飛び出す非常に大事なチャンス」(丸山氏)だという。例えば、すでにケータイコンテンツ系からドワンゴ、サイバード、バンダイなどから参加者があり、「グローバルビジネスへの感心が強く、むしろSI事業者よりもAndroidをビジネスチャンスととらえている」という。モバイルデバイスからクラウド上にあるサービスをマッシュアップする、という捉え方をしているという点では「日本のコミュニティの意識は進んでいる」(丸山氏)。

 Android端末は日本では来年の春ごろ登場する見込みだが、丸山氏は「出だしは苦労するのではないか」と見る。ただ、1億台程度の市場規模で数社がひしめく日本市場と、Androidの登場によって開かれるグローバルな市場の規模は桁違いだ。「世界市場の4割を握るノキアは年間4億台を売っているが、日本でもっとも売れているシャープでも1000万台程度。今後世界のマーケットは40億、50億台に拡大する。Androidは、そういう市場をターゲットにしている。日本市場でどれだけ売れるかという視点だけでAndroidを見るのは間違いだ。世界の携帯市場でも、いずれ日本のように1人1台の時代が来る。そのとき日本に何ができるのか。日本は変わっていかないといけない」」(丸山氏)。

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(@IT 西村賢)

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