Linux Conferenceでライセンスをテーマに議論
「OSS、組み込んでしまえば分からない」なんて言う人いませんか?
2008/09/16
9月11日、12日の2日にわたって日本Linux協会の主催で行われた「Japan Linux Conference 2008」において、「オープンソースライセンス」をテーマとしたBOF(Birds of Feather)が行われた。この中ではNECの姉崎章博氏(OSSプラットフォーム開発本部エキスパート)が、オープンソースソフトウェア(OSS)ライセンスに反しない形でソフトウェアを開発、提供する際のポイントについて語った。
「『納期を守るために、費用を削減するためにこっそりオープンソースソフトウェア(OSS)を利用している』『コスト削減のためにはライセンスに構ってはいられない』『ハードウェアに組み込まれてしまえば分からないでしょう?』なんて言う人、周りにいませんか?」(姉崎氏)
いまではソフトウェア製品はもちろん、ルータや家電製品といった組み込み機器のファームウェアにもOSSが搭載され、活用されている。
ところがベンダや開発者のIP(知的財産)に対するリテラシーの低さゆえにさまざまな問題が発生しており、訴訟にまで発展した例もある。事実、米ソフトウェア・フリーダム・ロー・センター(SFLC)では、米モンスーン・マルチメディアにはじまり、エクストリーム・ネットワークスなどいくつかの企業を、ソースコードを開示せず、GPLに違反しているとして提訴している。
こうした事例の多くは、「どちらかといえばソフトウェアよりもハードウェア。組み込み系で注意が必要」(姉崎氏)。また、モンスーン・マルチメディアにおけるBusyBoxの例のように、たとえ利用したOSSに改変を加えていなくても、ソースコードの開示が必要という。
姉崎氏はまず大前提として「プログラムは著作権で保護される著作物である」ということを改めて指摘。さらに「OSSというものは、(著作権を放棄した)パブリックドメインソフトウェア(PDS)とは異なり、『ただ単に自由に使えるもの』ではない。きちんとライセンスがある。それを自分の開発物として納品してはいけない」と述べた。
ライセンスごとのプログラム管理を
OSSのライセンスには、GPLをはじめ、LGPLやBSD License、Apache Licenseなどいくつかの種類があるが、守るべきライセンス条件としては3つの事項が挙げられるという。「ソースの開示」「LGPLを静的リンクしたプログラムのリバースエンジニアリングの許可」「必要な事項をドキュメントに記載すること(BSDタイプでバイナリのみ配布する場合)」だ。
姉崎氏によると、ライセンス違反を巡ってトラブルになりがちなのは「自社では一から開発したつもりだけれど、実は下請け側でGPLを使っていたケース」だという。「背景にはIPコンプライアンスの欠如がある。理由はどうあれ、他人の著作物、すなわちプログラムを私する行為は許されない」(姉崎氏)。
その上で同氏は、「コードを検査しているか? すべて自社開発のつもりでも他人の著作物が含まれていないかチェックしているか?」「単なる同梱でもOSSの利用に当たる。その場合もライセンスを順守しているか?」「ライセンスごとにプログラム構造や物件管理をしているか?」といった、ライセンス違反に関する訴訟および風評被害を防ぐための11のポイントを挙げた。
中でも「特に『ライセンスごとのプログラム構造、物件管理』はぜひこれからやってほしい。出荷前のコード検査だけでは手遅れになることもあるので、最初から商用のものとMPL(Mozilla Public License)、GPLのものとを分けて管理をしてしまうのがいいだろう。理想論かもしれないが、そもそもの製品企画段階でどこでお金を取るかを検討して、ライセンスが混在しないよう開発を進めていってほしい」(同氏)という。
姉崎氏はまた、最後のポイントとして、自社の成果を利用するOSSに還元しているかどうかを挙げた。ただライセンス違反を犯さないだけでなく、OSSのエコシステムに参加し、コミュニティに寄与することによって、コミュニティが大きくなり発展につながる。「商用製品でOSSを正しく使うものが増え、OSSへの還元が増えれば、OSSの発展につながる」(同氏)
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