チャージトラップ技術中心に製品ポートフォリオ拡充

NOR型メモリで急成長のSpansionがNANDでも攻勢に

2008/09/26

 年率7.5%の高い成長率(iSuppli調べ)でNOR型フラッシュメモリ市場で約40%のトップシェアを獲得したSpansionが、NAND型でも攻勢をかける。Spansionは1セル当たりの記憶容量を2ビット、4ビットと多値化する“MirrorBit”テクノロジーで、NOR型フラッシュメモリ市場でのシェアを伸ばしてきた。9月3日に新たに発表した「MirrorBit ORNAND2」では、多値技術を使わないが、同社が持つ独自技術の“チャージトラッピング技術”を使い、高密度化と高速化を実現するという。

spansion01.jpg Spansion エグゼクティブバイスプレジデント セキュリティ&先端技術事業部門 カーラ・ゴラ氏

 NAND型フラッシュメモリとしては、フローティングゲート型と呼ばれる方式が業界の主流。しかし、プロセスの微細化に限界が見え始めている。MirrorBit ORNAND2は「43nmが開発段階、32nmが研究開発の段階、22nmは研究に着手している」(Spansion エグゼクティブバイスプレジデント セキュリティ&先端技術事業部門 カーラ・ゴラ氏)と、フローティングゲートNANDが抱える微細化の課題をクリアしており、今後他社との差別化が図れるという。また、従来方式ではセル間の干渉が大きく、信頼性に課題があったという。

 NAND型フラッシュメモリには、1セルで多値を扱うMLC(Multi-Level Cell)と、1ビットだけ扱うSLC(Single-Level Cell)に分類できるが、SpansionではSLCにフォーカスしていくという。実現できるメモリ容量やビット単価ではMLCに分があるが、信頼性や耐久性、動作温度、速度などではSLCが優れる。「ざっくりいえば、組み込み市場をターゲットとしていく」(Spansion Japan代表取締役社長 田口眞男氏)。MLCは取り替えが簡単なメモリカードなどには向くが、1度組み込むと取り替えが難しい製品の市場ではSLCの信頼性が求められるだろうという。「リード・ライト・サイクルが1万回程度では不十分で10万回が必要なアプリケーションもある」(同氏)。

 SLCはMLCに比べて高速という特徴もある。プログラムのロードで比較すると、SLCでは25MB/秒程度、MLCでは10MB/秒の差が出るという。また、SpansionのORNAND2は他社製品に比べて読み出しで200%、書き込みで25%ほど高速という。同社では今後もローエンドやミッドレンジはNOR型、ハイエンドはNAND型で併存していくとみているという。

 Spansionは米AMDと富士通が共同で設立したベンチャー企業。調査会社のiSuppliによれば、2006年に同社はNOR型フラッシュメモリ市場でトップシェアを獲得。以降、11四半期連続でトップシェアを維持している。

関連リンク

(@IT 西村賢)

情報をお寄せください:

System Insider フォーラム 新着記事
  • Intelと互換プロセッサとの戦いの歴史を振り返る (2017/6/28)
     Intelのx86が誕生して約40年たつという。x86プロセッサは、互換プロセッサとの戦いでもあった。その歴史を簡単に振り返ってみよう
  • 第204回 人工知能がFPGAに恋する理由 (2017/5/25)
     最近、人工知能(AI)のアクセラレータとしてFPGAを活用する動きがある。なぜCPUやGPUに加えて、FPGAが人工知能に活用されるのだろうか。その理由は?
  • IoT実用化への号砲は鳴った (2017/4/27)
     スタートの号砲が鳴ったようだ。多くのベンダーからIoTを使った実証実験の発表が相次いでいる。あと半年もすれば、実用化へのゴールも見えてくるのだろうか?
  • スパコンの新しい潮流は人工知能にあり? (2017/3/29)
     スパコン関連の発表が続いている。多くが「人工知能」をターゲットにしているようだ。人工知能向けのスパコンとはどのようなものなのか、最近の発表から見ていこう

キャリアアップ

- PR -

注目のテーマ

- PR -
ソリューションFLASH

「ITmedia マーケティング」新着記事

サッカー欧州CLを早朝に観戦するアジアのファンのためにハイネケンが仕掛けた意外過ぎるキャンペーンの中身
時差のためUEFAチャンピオンズリーグを早朝に視聴せざるを得ない韓国のサッカーファンの...

楽天グループが「楽天市場」出店店舗向けに「楽天AI大学」を公開
2024年3月より提供している店舗運営支援ツール「RMS AIアシスタント β版」に加え、AIツ...

中国発AIソーシャル工作のゾッとする実態をMicrosoftがレポート
Microsoftが中国を拠点とする影響力工作の増加についてのレポートを発表した。これは米国...