米EnterpriseDBとパートナーシップ締結
NTT、PostgreSQLの機能改善や普及に本格取り組み
2008/10/07
NTTは10月7日、米EnterpriseDBと包括的パートナーシップを締結し、オープンソースのデータベース「PostgreSQL」の高可用性を実現する機能開発や普及促進で協業していくと発表した。NTTは、100%子会社であるNTTインベストメント・パートナーズを通して出資も行う。出資額は非公開。
EnterpriseDBは2004年3月設立のデータベース関連ベンチャー企業。PostgreSQL用の大規模分散データベース「GridSQL」を開発、オープンソースで公開しているほか、PostgreSQLのサポートや技術者トレーニング、技術者派遣のサービスを提供する。従業員数は約100人と小規模だが、同社はPostgreSQLの開発コミュニティで中心メンバーの30%が在籍し、ソニー、NTT、IBM、Hi5など約250の顧客企業を抱えるという。
NTTではまず業務提携によりノウハウを蓄積し、これまで商用データベースを利用していたNTTグループ事業会社の業務システムでPostgreSQLの適用率を高める。現在、OSSの採用率は10%程度だが、「バージョン8.3になり、商用データベース製品と遜色のない高性能・高信頼性を実現している」(NTTオープンソースソフトウェアセンタ所長 木ノ原誠司氏)ことから、今後5年間でこの比率を25%程度に上げられると見ている。OSS導入によるコスト削減効果はグループ内で20〜30億円と試算している。
当初はグループ企業内での適用を主眼とするが、同社が構築予定の9月2日に発表した「SaaS事業者向けサービス基盤」(プレスリリース)での採用や、一般企業ユーザーへの導入サポートなども行っていく予定という。
99.999%の可用性実現で適用範囲拡大を視野
今回のNTTのPostgreSQLへのコミットメントの背景には、PostgreSQLの性能向上がある。同社によれば、これまでオープンソース製品の適用は総務人事系のシステムを主としてきたが、「最新版のバージョン8.3ではデータベース規模1TBクラス、可用性99.99%までのシステムに適用可能」(木ノ原氏)と同社では判断し、より高い信頼性や可用性が求められるシステムへ適用範囲を広げていけるとしている。
NTTはPostgreSQLの開発コミュニティにも参加しており、バージョン8.2から8.3への変更では、データ配置の自動最適化機能の改良、ディスクへのデータ書き込み負荷の平準化など安定性の向上で貢献したという。また、2008年5月には高可用性を実現するシステムに欠かせない同期レプリケーション機能を提案。次バージョンの8.4に取り込まれる見込みであるなど運用性に関する機能改善を続けている。
99.999%の高可用性を実現する上でPostgreSQL 8.4に実装予定の同期レプリケーション機能は特に大きな機能追加で、同機能により故障時のダウンタイムを20〜30秒程度に抑えられるようになるという。99.999%の可用性は年間ダウンタイム合計が5分程度。データベースで高い信頼性が確保できれば、システム全体で99.999%の可用性を実現し、設備管理系システムや顧客料金系システムなどにも適用可能となってくる見込みだという。NTTが開発した同期レプリケーション技術と、EnterpriseDBが公開しているGridSQL技術を使うことで大規模分散データベースの構築を目指す。
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