全部入り、高品質で差別化

レノボ、「IdeaPad S10e」で国内UMPC市場に参入

2008/12/03

 レノボ・ジャパンは12月3日に「IdeaPad S10e」を発表した。同日東京・六本木で開いた記者会見には70人を超える報道関係者が集まり、同社執行役員でマーケティング&広報本部長の原田洋次氏は、「レノボが今年開催した会見の中で、もっとも記者の数が多い。それだけ市場の期待が大きいと感じている」と話し、新製品投入の狙いやスペックを説明した。

lenovo01.jpg IdeaPad S10e
lenovo02.jpg 色は白、ピンク、青の3色
harada.jpg レノボ・ジャパン マーケティング&広報本部長で執行役員の原田洋次氏

 IdeaPad S10eは1024×567ドットの10.1インチ液晶搭載で重量1.38キロ、プロセッサには「ATOM N270」を搭載する。搭載メモリはオンボード512MB、メモリスロット512MBの計1GBで、スロットのメモリを交換することで1.5GBに増設できる(デフォルトで空きスロットなし)。ハードディスクは2.5 インチ、5400rpmのSATAで容量は160GB。これはThinkPadで使っているものと同等で、こうした基本スペックにこだわったことがIdeaPadをUMPC市場の中で差別化していく特徴だという。「UMPC市場の中では一番高いスペックを実現しているし、ニーズの高いもの、積めるものはすべて積んだ。それで他社に負けない価格を実現した」(原田氏)。UMPCとしては最大クラスの液晶ディスプレイや5.3時間と比較的長時間のバッテリ駆動時間を実現する6セルバッテリの搭載のほか、130万画素のWebカメラ、801.11b/g、Bluetooth、Ethernet、4in1カードリーダー、USB×2、ExpressCard/34、VGA出力ポートなどを搭載した。「他社製のUMPCより冷却性能も優れている。ThinkPadブランドを踏襲し、傷つけない品質で、自信を持ってお勧めできる製品だ」(原田氏)。IdeaPadは、すでに海外ではS10として発売済み。これは上海で開発したものだが、日本の大和研究所のThinkPadチームが人材を派遣し、品質管理や機能強化などの面で協力したという。

 ユニークな機能として、タッチパッドで指で「の」字を書くことでWebブラウザなどのスクロールを行う“カイラル・モーション”、マルチタップでWebブラウザの表示を拡大・縮小するピンチ操作などを取り込んだ。また、Windows XPではなくLinuxベースのOSを起動してWebブラウジングなどができるクイック・スタートの機能も用意した。実機の画面でロゴを確認した限り、このクイック・スタートの機能は、圧縮ファイルシステムからシステムイメージをロードすることで高速起動を実現する米DeviceVMのSplashTopを利用しているようだ。FirefoxベースのWebブラウザ、音楽プレーヤー、写真管理ソフト、Skypeなどが利用できる。クイック・スタートはデフォルトでオンになっているが、スキップして直接Windows XPを起動するようにも設定できる。

st01.jpg クイック・スタートの起動画面。電源投入から10秒程度で画面が出る。ちなみに、DeviceVMでは現在、Xenベースの仮想化機能の統合に取り組んでおり、ハイパーバイザ上で各OSを起動することで、Windowsが起動しているのを待つ間にFirefoxでWebブラウジングするという実験的な取り組みも行っている
st02.jpg FirefoxベースのWebブラウザ
st03.jpg 音楽プレーヤーではWindowsパーティションのデータにもアクセスできるようだ

レノボが読むUMPCの“スイートスポット”

 異なるスペックで多数のモデルを出す代わりに、スペックを決め打ちにしてモデルを1台に絞った。「パートナー、販売店、お客様、あるいは他のメーカーの人などに話を聞いているが、(UMPCというジャンルの製品を)誰がどう使っているか分からない。安いのがいいのか、スペックなのか、ユーザー層が見えない。そこで一番売れているスペックと価格に絞って出した」。UMPCのユーザー層が見えず、各社とも手探りの状態だが、今後この市場が伸びるという点では意見は一致しているという。現状でUMPCに飛び付きブームを牽引しているのはハイエンドユーザーの2台目需要などと思われるが、今後より広くミッドレンジ層など市場で1台目としてのニーズが高まれば、限定的用途だけで使えるスペックよりも、必要十分なスペックを備えたものが“スイートスポット”に当たるというのが同社の読みだ。

 レノボは2004年にThinkPadブランドで知られたIBMのPC事業部門を買収。その後設立されたレノボ・ジャパンは今年で3年目となるが、これまでは法人向けのデスクトップ、ノートPC、サーバを製品ラインアップにそろえてきた。今回コンシューマ市場に参入するに当たっては、電話サポートなど体制も整えたという。

(@IT 西村賢)

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