業務システム見直しは必須
国際会計基準、「財務報告のお化粧では済まない」
2008/12/19
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国際会計基準(IFRS)に注目が集まっている。欧州中心に発展して来たIFRSを、米国でも採用する動きが加速していることが背景だ。日本もこれまでの会計基準を徐々にIFRSと同等にする「コンバージェンス」を進めているし、日本の会計基準をIFRSに置き換える「アドプション」についての議論も始まっている(参考記事)。会計基準の問題は財務諸表に大きく関係してくるが、日本オラクルは「IFRSを受け入れる場合、決算の修正だけでは間に合わない。業務、業務システムの見直しが必須」と訴えている。
IFRS(用語解説)導入は企業にとってまさしく会計処理の方法が変わることを意味する。日本はこれまでの会計基準を少しずつ変更するコンバージェンスを行っていて、2011年には日本の会計基準とIFRSが同等になる見込みだ。すでに四半期報告や棚卸資産の評価基準、リース会計など、コンバージェンスの一環として企業会計基準が変更された。しかし、このような会計基準の変更は直接の利益を生むことはなく、企業にとっては面倒でしかないようにも思える。
だが、日本オラクルのアプリケーション事業統括本部 ビジネス推進本部 ディレクターの桜本利幸氏は「IFRS対応は会計のためだけではない、というのがオラクルの立場」と話す。IFRSに対応することで世界各地で活動するグループ企業の効率性が高まり、財務状態の透明性が向上して資金調達も容易になる。さまざまな会計基準で財務報告を行う必要がなくなり、コスト削減も期待できる。さらにグループ連結経営の管理も向上も期待できる。桜本氏はこのようなメリットを説明した。
一方、外部に説明可能な状態で、内部統制を堅持しながらIFRS対応を行うのは、日本企業にとってかなりの困難が伴うと予想される。45日以内に財務報告する東証のルールもあり、企業はIFRS対応で「二重苦、三重苦を抱えている」(桜本氏)のが実際だ。そのため、効率的なIFRS対応、運用には「ITの支援が必須だ」と桜本氏はいう。
ITによるIFRS対応には2つの考えがある。1つは日本基準や米国基準で会計処理を行うこれまでの会計システムを維持しながら、最後の連結決算の作成時にのみ、IFRSに対応する考えだ。オラクルのHyperion製品を始め、グループ連結決算を実現するアプリケーションは多くあり、その中には複数の会計基準に対応する製品もある。ただ、もう1つの考えとしてはこのようなグループ連結のアプリケーションを導入すると同時に、その基盤の会計システムにも手を入れて、より効率的な経営管理を実現する考えである。
日本オラクルのアプリケーション事業統括本部 ビジネス推進本部 シニアマネージャー 安池俊博氏は、IFRS対応で収益認識やセグメント情報などについての会計処理が大きく変わり、財務報告だけでなく、社内の業務処理にも大きな変更が必要になると説明する。安池氏は「IFRSは会計の問題だけではない。業務、業務システムを見直して企業をどう効率的に回していくか考えないと、コストがふくらむだけ」と指摘する。桜本氏も「(財務報告だけをIFRS対応する)お化粧だけしてもダメ。企業の体作りそのものがしっかりしないといけない」と話した。
また、実際にIFRSをアドプションするとなった場合、最も問題になるのは「IFRSが分かる人材がいない」ということだ。IFRSに対応した業務アプリケーションは「Oracle E-Business Suite」など複数あるが、IFRSの専門家は監査法人の公認会計士や、金融庁、東京証券取引所などの規制当局でも手薄。IFRSは原理・原則についての記述が中心といい、本当に分かる人材を社内で育てないと財務報告の品質が向上せず、経営効率が下がったり、市場の不信を生みかねない。オラクルは少数の専門家の知識をグループ企業全体で共有できるようシェアードサービスによる運営を提案している。