国内でも大手採用で動き
Firefoxでも動く、IE8のWebスライスは普及するか?
2009/02/05
ヤフー、楽天、goo、BIGLOBEなど国内大手サイトを運営する21社がマイクロソフトの次期Webブラウザ「Internet Explorer 8」(IE8)の新機能に対応した。マイクロソフトは2月5日に東京・六本木で記者会見を開き、今回新機能対応で協力したパートナーらとともにIE8の新機能を活用した新サービスを紹介した。
2009年1月26日にリリース候補版が登場し、IE8は正式版リリースへの秒読みを開始した。マイクロソフトは正式リリースの時期について明言を避けているが、機能的にはもう完全にフィックスだ。
処理の高速化やWeb標準準拠強化など基本性能以外でのIE8の注目は、「Webスライス」と「アクセラレータ」の2つだ。それぞれmicroformatsの「WebSlice」、XMLベースの「OpenService」という比較的オープンな技術仕様の下に開発されている。これら2つは、IE8だけが対応可能な技術というわけではない。すでにそれぞれに対応するFirefoxのプラグインが登場しており、@IT編集部で試したところ、かなり互換性の高い形で動作することを確認できた。
米国や日本でIE8ローンチに先駆けて大手サイトが対応、または対応を表明しつつあることで、Webスライスとアクセラレータの双方とも普及する可能性が高まってきたと言えそうだ。
RSSよりもシンプルで分かりやすいWebスライス
Webスライスとアクセラレータは使い方は異なるものの、閲覧中のWebページから、ほかのページへ移動することなく、ちょっとした調べ物や確認ができるという点で似ている便利な機能だ。
Webスライスに対応したWebページを開くと、IE8では緑のアイコンが表示される。ちょうどRSSを提供するWebページを開くと、RSSのアイコンが光るのと似ている。このアイコンをクリックすると、ちょうどブックマークを登録するように、Webスライスを登録できる。登録したWebスライスのボタンを押すことで、どんなページを閲覧中であっても、元のWebサイトに戻ることなく最新の情報が表示される。
コンテンツ提供者が、例えばニュースサイトでトップニュースの部分をWebスライスとして提供すれば、それを登録したユーザーはワンクリックでいつでも写真付きのトップニュースを閲覧できるようになる。オークションサイトでは、気になる出品があった場合には、それをWebスライスとして登録しておける。価格情報サイトのkakaku.comでは、すでに特定の商品をWebスライスとして登録できるようにしている。
Webスライスで提供できるコンテンツは、HTMLと同じだ。マイクロソフトのMSNでは、Silverlight 2を使ったインタラクティブで動きのあるコンテンツを、Webスライスとして提供しているという。
WebスライスはRSSと比べると、放っておくとフィードが蓄積しすぎてしまうわけではないし、文字通りWebページを切り出したようなメタファーでユーザーにも分かりやすい。各種ガジェットと比較すると、専用のインストールボタンが不要でWebページに自然に埋め込めることがメリットだろう。なかなか一般ユーザーにまで利用が広がらないRSSに比べると、こうした点で、Webスライスは広く普及する可能性があるように思われる。
Webスライスはmicroformatsベース
Webスライスは、microformatsと呼ばれるHTMLの延長上にあるテクニック(あるいは一連の仕様)を使ったマイクロソフトの独自規格および、それを実装した機能の名称だ。ほかのmicroformats同様に、HTMLのタグにclass属性としてさまざまなメタ情報を埋め込むことで、任意のWebページの任意の領域をWebスライス対応にすることができる。class属性は直接HTMLの表示に影響しないため、既存のHTMLコンテンツに対して機械可読のメタ情報を簡単に埋め込むことができる。これは、ほかのmicroformats同様だ。
Webスライスで埋め込めるメタ情報は、タイトルやコンテンツのURL、TTL(Time to Live)などだ。TTLはクライアントがコンテンツをキャッシュする時間を分単位で指定するものでRSSと同じだ。マイクロソフトが公開しているWebスライスのサンプルは以下の通り。
右クリックだけで、その場に検索結果を表示
「アクセラレータ」は単語選択後に右クリックして、その場で辞書や地図を表示するための機能だ。この機能は、サービス定義のためのXMLベースの「OpenService」というマークアップ言語で記述する。マイクロソフトが公開しているサンプルは以下の通りだ。
OpenServiceに対応したWebブラウザでこのXMLドキュメントを読み込むと、マウスによる単語選択時の右クリックメニューに、登録したサービスメニューが現れる。アクセラレータ(OpenService)が興味深いのは、プレビューアクションを定義できる点だ。この仕様により、単語を選択して右クリックで表示されるメニューを上から下にマウスでなぞるだけで、小さなウィンドウが次々にスライドして対応するコンテンツを表示するというインターフェイスを実現できる。もちろん、「execute action」で当該Webサービスへユーザーを誘導することもできる。
検索窓や個別サービスのWebページへ、単語や住所、製品名をカット&ペーストしていたのに比べると、はるかに手軽だ。
Webサービスであれば何でもOpenServiceで提供できるため、マイクロソフトでは、機械翻訳サービス、通貨換算サービス、Webメール、ブログホスティング、ビデオ検索など多くのサービスに対応するアクセラレータを公開している。
FirefoxでもWebスライスやアクセラレータを利用可能
WebスライスもOpenServiceも、今のところマイクロソフト独自仕様、およびそれを実装した機能の名称でしかない。しかし、仕様はクリエイティブ・コモンズライセンスの下に公開されているほか(リンク)、両仕様をサードパーティーが実装することについても、マイクロソフトは何ら権利を主張しないと明言している(リンク)など、オープンな仕様と呼んでよさそうだ。
仕様がシンプルでほかのWeb標準技術と相性が良いことや、Webスライス、OpenServiceがもたらす利便性を考えると、今後IE以外のWebブラウザでの対応が進む可能性が高そうだ。さまざまなRSSリーダーが登場したように、モバイル端末向けにWebスライスのネイティブクライアントアプリケーションを作ることも考えられるだろう。
すでにFirefoxには、Webスライスを実装した「WebChunks」や、OpenServiceを実装した「IE8 Activities for Firefox」のプラグインがある(アクセラレータは以前Activitiesという名称だった)。両者をFirefox 3で試してみたところ、Webスライスの表示領域の問題で、価格.comの商品では肝心の価格がスクロールしないと見えないなど細かな問題があったものの、eBay、ヤフーオークション、価格.com、米国版msnなどで、Webスライスが利用できた。
アクセラレータに関しても、プレビューアクションによる単語の検索や、Live Search Mapを使った住所からの地図表示の動作を確認できた(各種アクセラレータはここでインストールできる)。
懸念されるのはWebブラウザ間の互換性だ。Webスライスもアクセラレータ(OpenService)も、仕様がオープンでシンプルなため、Webサイトやユーザー間で人気が高まれば、Firefoxだけでなく、ほかのWebブラウザも実装してくる可能性がある。ただ、Webスライスという機能名やアイコン類のライセンスが不透明で、RSSのようにクロスブラウザで互換性やユーザー体験に一貫性が保たれるのかということはまだ分からない。異なるWebブラウザやアプリケーションでも同じアイコンが表示され、その後の動作にも一貫性があるかどうか、ということだ。こうした点がクリアになっていくかどうかを判断するのは、まだ時期尚早かもしれない。
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